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side*陽斗 5

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「オレ、お前って、その内に男にどーかされやしないかと思ってたんだよなー」
「………………は?」

 三上との事をまた考え始めていたら、部長のセリフ。
 一瞬意味が分からない。


「どーかって何ですか?」
「お前って、女にもモテるけど、絶対男にも好かれるだろ」

「……オレ、男にモテた記憶はないですけど」

 ……三上はちょっと特別として、遠くへ追いやっといて、話をすすめよう。
 じゃないと恥ずかしすぎて、すぐバレる。

 心の中で、三上の存在を遠くへ放り投げていると、部長がクスクス笑いながら、酒を煽った。

「どっちにもモテそう。上からお前を可愛いって思う奴にもだし、下から、先輩カッコいいとか、言う奴にも。まあ、男女問わずモテそうって、思うんだよなぁ、渡瀬は」
「――――……根拠がよく分かんないですけど、とにかく過大評価です」
「そおか?」
「そうですよ」

「女にガツガツ行かないなら、男に攻められるかなーってさ。まあそれでいーならいいけど」
「良くないですよ」

 ……三上の事は、考えるな、オレ。
 本気で頼むから、三上、今オレの頭から、どっか行ってて。


「こないだの京都の取引先のあいつ居たろ?」
「……木原さんですか?」
「あいつ、お前狙いだって、気づいてたか?」
「――――……あの人、結婚してますよ?」

 そう言うと、部長は苦笑い。

「結婚してるから、そうじゃないっていうのは、間違ってると思うぞ」
「――――……」

「まあ、気づかない方がいいって時もあるけどな」
「――――……」

 何だかよく分からないまま、頷くのもどうかと思い、黙っていると、部長はニヤニヤ笑った。

「……まあもう終わったし、言ってもいいか」
「何ですか?」

「三上さ」
「――――……え?」

「三上」

 急に部長の口から出た名前に、ドキドキしながら、部長を見つめ返すと。

「……何ですか?」
「三上、京都で守ってくれたろ?」
「――――……」
「その意識、無い?」
「――――……何ですか? それ?」

 部長は、はは、と笑って、オレを面白そうに見る。

「オレが頼んだの。京都の取引先の奴が渡瀬を狙ってる気がするから、守ってやってって」
「――――……は?」

 この人は一体何を言ってるんだろう。
 首を傾げてしまう。


「三上は帰ってきてから、行って良かったって言ってたから、お前、絶対迫られてたんだと思ったんだけど」
「――――……」
「その意識もないのか?」

「……ご飯、いこうとかは言われましたけど」
「それって三上も一緒にか?」
「……どうだったか……いや、一緒にって話だったと思うんですけど」

「行ったのか、夕飯」
「いえ、なんか三上が体調悪くなって――――……」

 あれ、でも仮病だったんだっけ。なんだっけ、なんか、あの時、なんかすごい文句言ってた気がしてきた。

「――――……多分それ、三上が阻止したんだと思うけどな」

「……部長は何て言って三上に頼んだんですか?」

「とりあえずそうかもしれないから、ちょっと気にしてやってって感じだったかなー。ボディガードって言ったような気も……」

「――――……」

 何頼んでるんだ、この人は。

 ――――……あれ。でも、出張前って、オレと三上って、まだ、全然話してなかった時で……。

「三上、それ頼まれた時、嫌がってませんでした?」
「いや? 割とすぐ行くって言ってたけど」

「――――……」

 ……まあ。部長命令、断れなかったのかもしれないけど。

 ――――……ああ、道理で、なんか、三上、変だったっけ。

 オレと木原さんを二人にさせないように、って感じで。
 工場を見に行く時も、ついてくって聞かなかったし。
 食事に誘われた時も――――……。

 不意に、ふっ、笑いが漏れた。そのまま、クックッ、と笑ってしまう。

 あれ、オレの事、守ってくれてたつもりだったんだ。

 ……だから、あんなに、必死で――――……。

 はは。おもしろ、三上。
 だめだ。笑いが、止まらない。

「どした?」

 クスクス笑いながら部長が聞いてくる。

「いえ、なんか――――…… あの時、三上が必死だった理由が、今スゴク納得いって……というか、何頼んでるんですか、後輩に」

 笑いを収めながらそう言うと、部長もニヤニヤ笑いながら。

「だってあいつなら動じねえし、強そうだから守れそうだし。うってつけだろ」
「……そうですね」

 まだ笑いが止まらない。クスクス笑ってると。

「それに、お前らあんまり仲良さそうじゃなかったから。出張で仲良くなればいいと思ったし。三上がどうしても嫌だって断ったら諦めようとは思ってたけどな」
「……断らなかったんですね」
「ああ」

 ……あんな関係でも、一応守ってくれようと、してたんだろうな。

 ……三上っぽいなあ。


 心の中の三上を、なんだかすごく、愛しく思ってしまう。


 


 


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