【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

悠里

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side*陽斗 3

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 数秒黙ってから、オレは、話し出した。

「百歩……千歩、譲ってさ、オレが可愛いとしても」
『つか、可愛いですけど』
「……もしそうだとしても、部長とどうかなったりしないから。あの人、娘を溺愛してるの知ってるだろ?」
『知ってますけど……それとこれとは話が違うっていうか……』

「違くないって。絶対無いって」
『……あのさ、陽斗さん』

 三上の口調が少し強くなる。

『死ぬほど可愛いから、そう思っといて。浴衣とか着るなら、もー、絶対はだけさせるとかやめてね』
「な――――……」

 オレ、今までの人生で、男の前で浴衣を敢えてはだけさせたことなんか、一度もないけど!と、心の中で、咄嗟に浮かぶ。

 つか、オレ、こないだ三上と居た時、そんな事したっけ?
 耐えられずに、自分がかあっと赤くなるのが分かった。

「……っそんな事しないってば」
『お願いだから、ちゃんと意識してくださいね? 分かった?』

「……分かったって……」

 意味は分かんないけど。
 何なんだこの恥ずかしい会話。
 もー、三上、オレの事、何だと思ってるんだよ。もう……。


 そう思いながらも――――……何だか少し微笑んでしまう。


「……大丈夫だよ。――――……三上以外とは、しないから」
『――――……え』

「じゃあね、行くから」
『ちょ、待っ――――……陽斗さん!』

 慌てたような、三上の声。
 つい吹き出してしまうと、電話の向こうで、からかわないでくださいよ、と三上の声。

「からかってないよ。……ほんとに大丈夫って言ってるだけ」 

 クスクス笑いながら言うと、三上は、少し黙ってから。

『明日、めちゃくちゃ、可愛がるから』
「――――……!」

 理解した瞬間、止めようと思う間もなく、一気に赤面。

「…………っ」

 何の返答も出来ないでいると、三上が電話の向こうでクスクス笑った。

『今、絶対真っ赤でしょ、陽斗さん』
「な、こと、ない……」

『顔、戻ってから部長の所に行ってくださいね?』
「……っ」

 もはや真っ赤なことを否定しても、三上はまったく聞いてない。

『今日はもう電話無理ですか?』
「……どうだろ。遅くなったら、しないかも」
『オレが寝る時はおやすみって入れとくから、もし入ってなかったら電話してくださいね?』
「ん、わかった」
『そろそろ、戻らないとですよね?』
「うん、まあ……」

 そう返事をしながらも少し寂しく感じて、ふと窓から空を見上げた。
 東京とは違う。暗い空に浮かぶ月が、すごく綺麗。


「三上、今、まだ外に居る?」
『ん? あ、はい』
「どこに居んの?」
『会社から祥太郎の店に向かってるとこです』

「月、見える?」
『月――――……ああ、見えますよ。満月ですね』

 三上の声が、優しくなる。

「……こっち、暗いからかなぁ。すげー綺麗…… なんか先週末のこと思い出す」

 三上が答えないので、オレも、少し沈黙。


『――――……陽斗さん』
「ん?」


「明日は一緒に、月、見ましょうね」


 そんな声に、自然と顔がほころぶ。


「うん。そーしよ……」


 そう言うと、電話越しに三上が優しく笑う声。 
 ますます、笑んでしまう。
 



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