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side*陽斗 2

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 少し笑ってしまったのを、部長に見つかった。

「何笑ってるんだよ?」
「あ、いえ……なんかちょっと――――……」

 濁していると、部長は楽しそうにオレの顔を見つめてくる。

「何だよ、彼女か?」
「……まあ……そんなような……」

 言葉を濁すと、部長はへえ、と笑った。 

「渡瀬、そんな子、出来たんだな?」

 興味深そうな笑顔とそんな質問に、思わず首を傾げる。

「――――……何ですかそれ。オレ、今までもそれなりに相手は居ましたけど……」
「まあな。お前からも、周りからも話は聞いてたけど……モテるっつー話や、言い寄られてる話ってだけでさ。なんかあんまり乗り気な感じは無かったからさ」

「そうですか?……そんなこと、ないですけど……」

 と、誤魔化すけれど何というか……さすがだなと思ってしまう。
 乗り気な感じがしないって……オレそんなのバレたくないし、特に部長になんて、そんな素振り、出してないはずなのに。

 ……なんかいつか三上との事も、バレそうな気すら、する。

 ――――……でもなんだかこの人にバレても平気そうな気がするのは、何でだろう。まあ、バレないにこしたことはないんだけど。
 
 志樹の時も、なんか同じようなこと考えたような……。やっぱり少し似てる気がする。


「ま、いいや。とりあえず夕飯行くか」
「あ、はい」

「急で食事は頼めなかったけど、上の方に食事できる店があるらしいから」
「あ、そうなんですね」

「まあ、ゆっくり話そうな?」
「――――……」

 楽しそうな笑顔に、思わず苦笑いしながら、一応頷く。

 部屋を出て、部長と歩きながら、さっきのメッセージを思い出す。

 ――――……アルコール、禁止かぁ……。

 部長と食事なのに、飲まないって出来る気はしないけど。

 ……なんだろ、心配してるのかなぁ……。
 って、何の心配? よく分かんないなぁと思うんだけど、明日いくらでも奢るとか、何だか少し必死な感じがするし……。

「ここで良いか?」
「あ、はい、オレはどこでも……」

 言いながら、部長が入ろうとしている店を見ると、完全に居酒屋。
 無理だな、飲まないとかそんなの。

「あの、部長、少しだけ電話して良いですか?」

 そう聞いたら、部長はオレを振り返って、笑顔で頷いた。

「ああ、いーよ。先一杯飲んでるぞー」
「もちろん、一杯でも二杯でも」
「あぁ、分かった」

 笑いながら部長が中に入っていく。
 廊下を進んだ先、突き当りの窓まで歩いてから、スマホで三上を呼び出した。すぐに呼び出し音が途切れた。

『もしもし、陽斗さん? お疲れ様です』
「ん。三上、もう外?」
『はい。会社出ました』
「そっか。お疲れ。……あのさ、三上、さっきの」
『すみません、あれ、無しで』
「え?」
『……部長と居るのに飲まないとか多分出来ないですよね』
「――――……」

 少しの間、言葉が出てこない。

 ――――……何て言うか……。
 ……三上って……ほんと、可愛いなー……。

 送ってから、反省でもしてたのかなと思うと、愛しく思えてしまう。

「……何で、あれ送ったの? 何か、心配?」
『心配っていうか……』


「心配っていうか? ……なに?」

『――――……いつも可愛いんですけど、飲むと、陽斗さんて可愛くなっちゃうから……』

「――――……」


『可愛いの、誰にも見せたくないんですよね……』

「――――……」




 ……どーなってんだろう、三上の中の、オレって。



 瞬き数回。何も返事が思いつかない。




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