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◇寝ぐせ
しおりを挟む簡単にパンと卵とコーヒーの朝ごはんを途中まで準備して、それから先輩を起こしに寝室に来た。
んー。……すげえ、ぐっすり眠ってる。
顔が綻んでしまう。
「……陽斗さん。……起きれる?」
「……ん――――……?……」
もぞもぞ動いて、開かない瞳をむりむり開けて、オレと目が合った瞬間。
がば、と起き上がって。そのまま、頭押さえて、ちょっと沈んだ。
「あれ。頭、痛い?」
「……三上……」
「大丈夫?」
「――――……ごめん」
「ん? ごめん?」
頭を押さえたまま、先輩はオレを見上げる。
「昨日先寝ちゃって……」
――――……えーと。
それは、どういう意味で言ってるのかな。
「……陽斗さん、オレが部屋来たの、知ってる?」
「……ん?」
――――……ちょっと不思議そう。
マジか。
……あれ、寝ぼけてたの?
「――――……」
でも、てことは、寝ぼけて、「すき」って言ったんだ。
――――……ふーん。
そっか。
「……三上?」
「ん?」
「……なんでご機嫌なの」
「んー? ……いや、別に。陽斗さんは、可愛いなあと思って」
「――――……??」
なんだかすごく怪訝な顔で首を傾げてるけど。
まあ、いいや。
「頭痛いの平気そう?」
「ん、平気……」
髪、乱れてるの軽く整えてから、先輩はオレを見上げた。
「――――……」
側頭部に、ぴよ、と寝ぐせが出来てる。
そこに、そっと触れながら「寝ぐせ」と笑うと。
「……ん。直してくる……」
「可愛いからそのまま会社行く?」
クスクス笑うと、プルプル首を振ってる。
「冗談。そんな可愛いの、絶対誰にも見せたくないし」
オレがそう言うと。
先輩は、何言ってんの、という顔でオレを見る。
「そんなアホなの、見られたくないし」
そんな風に言う先輩に、こっちこそ、はーー、とため息。
「試しにそれで行ったら、もう、皆、可愛くて大騒ぎですよ」
「んな訳ないし」
言いながら、先輩は完全に冗談だと思って、笑ってるけど。
オレは、全然冗談じゃないんだけど。
……絶対直して行かせよう。可愛すぎる。
「じゃ陽斗さん、とりあえず顔洗ってきて。パン、焼いとくから。あと昨日のシャツとかアイロンかけた。そこのハンガーに掛けてるから、とりあえずあれ着て、陽斗さんち行きましょ」
「……ん、ごめん」
「――――……」
先輩の頬に触れると、自然と顔が上がる。
ゆっくり、キスしたら。先輩はじいっと、オレを見つめてくる。
「――――……ごめん、て、言わなくていいよ」
「――――……」
目をパチパチさせて。
それから。ちょっと、顔が綻ぶ。
「……ありがと。 すぐ行くから」
「ん。待ってますね」
なでなで、と頭を撫でて、ベッドから立ち上がって、キッチンに戻る。
パンを焼いて、コーヒーをカップに注いで、と準備をしていたら、先輩がやって来た。
さっきまでの、もぞもぞ動いてた感はもう一切なくて。
すっきり爽やか。いつも通り。寝ぐせも無くなってる。
「頭痛いの平気ですか?」
「なんか奥の方が少し痛いけど。まあ、平気」
笑って言いながら、近づいてくる。
「三上、ありがと、いろいろ」
「良いですよ」
「……なあ、三上」
「ん?」
「……昨日さ」
言いながらオレを見上げて、ちょっと考えてるそぶりで。
「――――……オレ、夜、ベッドでお前と会った?」
「――――……」
「なんか……」
そこまで言って、なんだか恥ずかしそうに、視線を逸らす。
めちゃくちゃキスしたの。
……思い出したのかな。
多分そうなんだろうな。
なんかほんと。可愛くて。
キス位で、そんな照れるとか。
――――……朝から。
……なんか、たまんないんですけど。
先輩の腕を引いて、ぎゅー、と抱き締めてしまう。
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