上 下
223 / 273

◇寝ぐせ

しおりを挟む


 簡単にパンと卵とコーヒーの朝ごはんを途中まで準備して、それから先輩を起こしに寝室に来た。

 んー。……すげえ、ぐっすり眠ってる。
 顔が綻んでしまう。

「……陽斗さん。……起きれる?」
「……ん――――……?……」

 もぞもぞ動いて、開かない瞳をむりむり開けて、オレと目が合った瞬間。
 がば、と起き上がって。そのまま、頭押さえて、ちょっと沈んだ。


「あれ。頭、痛い?」
「……三上……」

「大丈夫?」
「――――……ごめん」

「ん? ごめん?」

 頭を押さえたまま、先輩はオレを見上げる。


「昨日先寝ちゃって……」

 ――――……えーと。

 それは、どういう意味で言ってるのかな。


「……陽斗さん、オレが部屋来たの、知ってる?」
「……ん?」

 ――――……ちょっと不思議そう。

 マジか。
 ……あれ、寝ぼけてたの?


「――――……」


 でも、てことは、寝ぼけて、「すき」って言ったんだ。

 ――――……ふーん。

 そっか。


「……三上?」
「ん?」

「……なんでご機嫌なの」
「んー? ……いや、別に。陽斗さんは、可愛いなあと思って」


「――――……??」


 なんだかすごく怪訝な顔で首を傾げてるけど。
 まあ、いいや。

「頭痛いの平気そう?」
「ん、平気……」

 髪、乱れてるの軽く整えてから、先輩はオレを見上げた。


「――――……」

 側頭部に、ぴよ、と寝ぐせが出来てる。
 そこに、そっと触れながら「寝ぐせ」と笑うと。


「……ん。直してくる……」

「可愛いからそのまま会社行く?」

 クスクス笑うと、プルプル首を振ってる。

「冗談。そんな可愛いの、絶対誰にも見せたくないし」

 オレがそう言うと。
 先輩は、何言ってんの、という顔でオレを見る。


「そんなアホなの、見られたくないし」

 そんな風に言う先輩に、こっちこそ、はーー、とため息。


「試しにそれで行ったら、もう、皆、可愛くて大騒ぎですよ」
「んな訳ないし」

 言いながら、先輩は完全に冗談だと思って、笑ってるけど。

 オレは、全然冗談じゃないんだけど。
 ……絶対直して行かせよう。可愛すぎる。


「じゃ陽斗さん、とりあえず顔洗ってきて。パン、焼いとくから。あと昨日のシャツとかアイロンかけた。そこのハンガーに掛けてるから、とりあえずあれ着て、陽斗さんち行きましょ」
「……ん、ごめん」

「――――……」

 先輩の頬に触れると、自然と顔が上がる。
 ゆっくり、キスしたら。先輩はじいっと、オレを見つめてくる。

「――――……ごめん、て、言わなくていいよ」
「――――……」

 目をパチパチさせて。
 それから。ちょっと、顔が綻ぶ。


「……ありがと。 すぐ行くから」
「ん。待ってますね」

 なでなで、と頭を撫でて、ベッドから立ち上がって、キッチンに戻る。


 パンを焼いて、コーヒーをカップに注いで、と準備をしていたら、先輩がやって来た。 
 さっきまでの、もぞもぞ動いてた感はもう一切なくて。
 すっきり爽やか。いつも通り。寝ぐせも無くなってる。


「頭痛いの平気ですか?」
「なんか奥の方が少し痛いけど。まあ、平気」

 笑って言いながら、近づいてくる。

「三上、ありがと、いろいろ」
「良いですよ」

「……なあ、三上」
「ん?」

「……昨日さ」

 言いながらオレを見上げて、ちょっと考えてるそぶりで。

「――――……オレ、夜、ベッドでお前と会った?」
「――――……」


「なんか……」

 そこまで言って、なんだか恥ずかしそうに、視線を逸らす。


 めちゃくちゃキスしたの。
 ……思い出したのかな。


 多分そうなんだろうな。



 なんかほんと。可愛くて。
 キス位で、そんな照れるとか。



 ――――……朝から。

 ……なんか、たまんないんですけど。



 先輩の腕を引いて、ぎゅー、と抱き締めてしまう。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

赤ちゃんプレイの趣味が後輩にバレました

海野
BL
 赤ちゃんプレイが性癖であるという秋月祐樹は周りには一切明かさないまま店でその欲求を晴らしていた。しかしある日、後輩に店から出る所を見られてしまう。泊まらせてくれたら誰にも言わないと言われ、渋々部屋に案内したがそこで赤ちゃんのように話しかけられ…?

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

淫らな悪魔の契約者開発♡

白亜依炉
BL
「また感度が上がったねぇ。なに? えっちな想像した? 」 言葉責めドS淫魔 × 開発された高校生契約者 祖父が契約していたという使い魔を継承した高校生。 しかし、かの存在は長い時間の中で強い力を得た淫魔だった。 彼との契約により高校生は日々開発されるようになって……—— ♡喘ぎが書きたいという欲求から書き始めたので、性的なシーンしかありません。 深くまで考えずにお楽しみください。 〇攻め:ユダ 淫魔。遠い遠い昔、暇つぶしがてら魔界から人間界にやってきた。 長い年月を生きる中で得た知識を人間のために活用する代わりに、 現世に留まる楔になるよう翔馬の先祖に契約を求めた。 なお、性行為をする相手は誰でもいいため『契約者=魔の手に必ずかかる』という訳ではない。 〇受け:翔馬 おじいちゃんっ子だった過去があり、使い魔の正体を知るまでは再契約にも乗り気だった。 ユダの正体を知った際、挨拶がてらユダに襲われる。 その結果、『体の相性がいい』という事実を知られてしまい面白がったユダは開発を始めた。 24時間365日、使い魔であるはずのユダに振り回され快楽を注ぎ込まれている。 pixiv・アルファポリスで活動しています。 双方とも随時更新・投稿予定。 ――【注意書き】―― ※この作品は以下の要素が含まれます※ 〇全体を通して〇 ♡喘ぎ・調教・開発・焦らし・連続絶頂・中出し 〇話によっては〇 フェラ・イラマ・結腸責め 〇微量にある〇 濁点喘ぎ・淫語 ※この作品は現実での未成年者への性的搾取を容認するものではありません。

処理中です...