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side*陽斗 7
しおりを挟む「蒼生が来るまで15分位はかかるな……」
そう言って、志樹は、飲みかけのグラスに口をつける。
「オレが鍛えてるから、あいつは、弟気質っつーか。頼まれたり、動いたりすんの、基本的に、嫌じゃない奴に育ってるから」
志樹が面白そうに笑う。もうなんか、苦笑いしか浮かばないけど。
「鍛えたって……まあでも、弟ってそうかもね」
「だから、何頼んでも、そんな嫌がったりする奴じゃないから」
クスクス笑いながら、志樹がオレを見る。
「そんな事言っても……」
「とにかく、遠慮しない。以上」
「以上って……」
志樹の言い方が可笑しくて、クスクス笑ってると。
「たまには我儘言えよな。あいつは絶対へーき」
「……ん」
まあ確かに。
三上が、嫌そうにするの見た事ないな。
むしろ自分からあれこれ動いて、色々してくれて、それが楽しいみたいな感じ。……女の子と付き合って、あれしたら、最高の彼氏だろうなー、と思ってしまう。
「あ、そうだ。陽斗」
「ん?」
「……これ、マジメな話な?」
「うん?」
「――――……蒼生は、その内、営業じゃなくて、オレの仕事の方とか、あいつがもっと動ける所に引っ張る予定」
「うん」
それは、三上が入社するって決まって、オレに頼んできた最初の時も言ってたので、すぐに、頷いた。
志樹は、オレをまっすぐ見つめたまま。
「……お前も、引っ張って良い?」
「え?」
オレも引っ張る? オレの顔を見て、志樹は、ふ、と笑んだ。
「オレの所か、 蒼生の所か。まあ、蒼生に何させるかとか、もっと具体的に決まってからになるけど。……お前は、営業にずっと居たいかどうか、考えといて」
「……」
急な話で、志樹をまっすぐ見ながら、考えて。
「すぐじゃなくて、先、だよね?」
「そ。とりあえず今年はまだお前の下に置いとくし」
「……ん。考えとく」
「まあお前、営業向いてるし、部長が嫌がりそうだけど」
そんな志樹の言い方に、笑ってしまう。
「どうだろな……オレ、営業の仕事は好きだけど」
「ああ。そうだろうけど」
「……でも、三上家のサポートするのも、面白そう。役に立つなら」
「役に立つだろ。あーでもなー。蒼生にお前をサポートにつけるとか言ったら、舞い上がって使い物にならねーかな」
冗談めかして言って、苦笑いの志樹に、ふ、と笑ってしまう。
「……そんな事ないよ、きっと」
オレがそう言うと、志樹もオレを見つめて。少しだけ笑う。
きっと志樹も、そんな事はないと思ってるんだろうなと分かるので、オレもそれ以上は何も言わないでいると。
「……まあ。考えといて? 蒼生のサポートは、蒼生とお前の関係にもよるしな」
「うん」
「まだ先だから」
「ん。分かった」
色々考えながら、志樹を見つめて、頷く。
オレと三上の、関係、かぁ……。
どうなってくんだろうと、思うと、色々考える事はあるのだけれど。
なんか、浮かぶのは。
……三上の、笑顔だなぁ……。
オレどんだけ、三上の笑った顔、好きなんだろう。
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