【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

悠里

文字の大きさ
上 下
214 / 274

side*陽斗 4

しおりを挟む


 お酒を飲みつつ、つまみつつ。
 三上の事以外の仕事とか、色んな話もしていたら、ふと、志樹がオレを見つめた。

「……なあ、陽斗?」
「うん?」

「蒼生さ」
「うん」

「あいつがお前を好きなのは、会った頃からじゃねえの? 言ってなかった?」

 そんな風に聞かれて、んー?と考える。けど。すぐに違うんじゃないかと思った。

「そんな事ないと思うけど。だって、オレ、志樹のせいで嫌われてただろうし」

 べ、と舌を見せると、志樹は、苦笑い。

「嫌ってないだろ。あれは」
「ん?」

「蒼生は、ばらす前も嫌ってないと思うけどな」
「何でそう思うの? 普通にきつかったと思うし。好かれては無かったと思うけど。なんか三上は、嫌えなかったとか、気を遣って言ってくれてた気はするけど」
「――――……」

 オレの言葉を聞いて、志樹は、ふ、と笑った。

「それ気を遣ってんじゃないって。絶対」
「そう?」

 何でそう思うんだろ。
 と、不思議に思いながら、志樹を見ていると。
 クスクス笑いながら、話し始める。

「オレ、お前に色々頼みはしたけど、一応様子は見てたんだよ。蒼生が入社してから。もし、陽斗に対してあまりに反発し始めたら、仕事も覚えないだろうし、さすがにそれはまずいかと思ってさ」
「……そうなんだ」

「もしそうなったらすぐばらして、仲良くさせてにするかとか。最初は色々考えてたんだよな」
「そうなの? だって、オレが何回も、もういいんじゃないって言っても、まだって、言ってたじゃん」

 オレは結構嫌だったけど、と思い出して少しムッとしながら言うと。

「だからさ。反発もしないで、お前の振る仕事、めちゃくちゃ頑張ってやってただろ。 しばらく見てたら、ああ、蒼生は「出来ない奴」って、陽斗に思われたくないんだろうなと思ってさ」
「――――……」

「文句も言わず、ちゃんと仕事こなしたろ? お前に反発した事、あった?」
「――――……無いけど。三上はほんと、頑張ってたし」

「これはベストだなと思って。ほっとくことにした」
「――――……」


 うわー。と、ちょっと引く。

 何となく、志樹がどういう奴かは分かってる。

 別に嫌な奴じゃない。優しく、思える時もあるし。気を使える奴でもあるし。でもなんか。
 こう、人を手の中でコロコロ動かす。無意識なのか、意識なのかといったら、意識的にも出来る奴。カリスマ性があるっていうのはこういう事なのかなーとも思う。まあ。次期社長。うってつけなんだろうなと。思ってる。


 ――――……でも。たまにちょっと。怖いというか。


「引くなって」

 クックッと笑われる。

「……引くよ」

 だってなんか、全部お見通しで。色んな事見ててさ。


「でも結果、蒼生はよく育ったし。陽斗も嫌われてないし。良かったろ?」
「それは結果論、だと思ってたけど――――……」

 お前は、分かってやってたのか、と思うと。
 やっぱ、ちょっと引く。


「あの頑張ってたのが、陽斗を好きだからだって思うと、まあ、ものすごく納得もいくけどな、オレは」
「――――……そういう意味で好きだったかは、分かんないじゃん」

「もちろん、認めては無かったと思うぞ。自分に冷たい奴を恋愛で好きとか、認めないだろうし。――――……でも、嫌われてなかったと思ったから、もう、抑えられなくなったってとこじゃないの? そういうの、聞いてはない?」
「……ないと思う……」

「……つかさ。そうじゃない限り、ネタ晴らししたほんの2日で、蒼生が男とそうなるなんて、ありえないだろ」

 もはや言い切って、グラスを煽ってる。

「――――……それは……分かんないけど」

「分かるって。分かれよ」

 志樹は面白そうに、クスクス笑ってオレを見つめる。


「何でそんな、陽斗、自信無い?」
「――――……無いだろ。だって……」

「だって何? 男だから?」
「――――……心読むのほんとやめて」

「読むまでもないけど、それ」

 は、と笑われて。もう、無表情で居てやろうか、と思ってしまう。





  
しおりを挟む
感想 119

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...