【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

悠里

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side*陽斗 4

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 お酒を飲みつつ、つまみつつ。
 三上の事以外の仕事とか、色んな話もしていたら、ふと、志樹がオレを見つめた。

「……なあ、陽斗?」
「うん?」

「蒼生さ」
「うん」

「あいつがお前を好きなのは、会った頃からじゃねえの? 言ってなかった?」

 そんな風に聞かれて、んー?と考える。けど。すぐに違うんじゃないかと思った。

「そんな事ないと思うけど。だって、オレ、志樹のせいで嫌われてただろうし」

 べ、と舌を見せると、志樹は、苦笑い。

「嫌ってないだろ。あれは」
「ん?」

「蒼生は、ばらす前も嫌ってないと思うけどな」
「何でそう思うの? 普通にきつかったと思うし。好かれては無かったと思うけど。なんか三上は、嫌えなかったとか、気を遣って言ってくれてた気はするけど」
「――――……」

 オレの言葉を聞いて、志樹は、ふ、と笑った。

「それ気を遣ってんじゃないって。絶対」
「そう?」

 何でそう思うんだろ。
 と、不思議に思いながら、志樹を見ていると。
 クスクス笑いながら、話し始める。

「オレ、お前に色々頼みはしたけど、一応様子は見てたんだよ。蒼生が入社してから。もし、陽斗に対してあまりに反発し始めたら、仕事も覚えないだろうし、さすがにそれはまずいかと思ってさ」
「……そうなんだ」

「もしそうなったらすぐばらして、仲良くさせてにするかとか。最初は色々考えてたんだよな」
「そうなの? だって、オレが何回も、もういいんじゃないって言っても、まだって、言ってたじゃん」

 オレは結構嫌だったけど、と思い出して少しムッとしながら言うと。

「だからさ。反発もしないで、お前の振る仕事、めちゃくちゃ頑張ってやってただろ。 しばらく見てたら、ああ、蒼生は「出来ない奴」って、陽斗に思われたくないんだろうなと思ってさ」
「――――……」

「文句も言わず、ちゃんと仕事こなしたろ? お前に反発した事、あった?」
「――――……無いけど。三上はほんと、頑張ってたし」

「これはベストだなと思って。ほっとくことにした」
「――――……」


 うわー。と、ちょっと引く。

 何となく、志樹がどういう奴かは分かってる。

 別に嫌な奴じゃない。優しく、思える時もあるし。気を使える奴でもあるし。でもなんか。
 こう、人を手の中でコロコロ動かす。無意識なのか、意識なのかといったら、意識的にも出来る奴。カリスマ性があるっていうのはこういう事なのかなーとも思う。まあ。次期社長。うってつけなんだろうなと。思ってる。


 ――――……でも。たまにちょっと。怖いというか。


「引くなって」

 クックッと笑われる。

「……引くよ」

 だってなんか、全部お見通しで。色んな事見ててさ。


「でも結果、蒼生はよく育ったし。陽斗も嫌われてないし。良かったろ?」
「それは結果論、だと思ってたけど――――……」

 お前は、分かってやってたのか、と思うと。
 やっぱ、ちょっと引く。


「あの頑張ってたのが、陽斗を好きだからだって思うと、まあ、ものすごく納得もいくけどな、オレは」
「――――……そういう意味で好きだったかは、分かんないじゃん」

「もちろん、認めては無かったと思うぞ。自分に冷たい奴を恋愛で好きとか、認めないだろうし。――――……でも、嫌われてなかったと思ったから、もう、抑えられなくなったってとこじゃないの? そういうの、聞いてはない?」
「……ないと思う……」

「……つかさ。そうじゃない限り、ネタ晴らししたほんの2日で、蒼生が男とそうなるなんて、ありえないだろ」

 もはや言い切って、グラスを煽ってる。

「――――……それは……分かんないけど」

「分かるって。分かれよ」

 志樹は面白そうに、クスクス笑ってオレを見つめる。


「何でそんな、陽斗、自信無い?」
「――――……無いだろ。だって……」

「だって何? 男だから?」
「――――……心読むのほんとやめて」

「読むまでもないけど、それ」

 は、と笑われて。もう、無表情で居てやろうか、と思ってしまう。





  
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