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◇二年間ずっと

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 昼食を終えて、席に戻った。
 先輩に見せる資料を準備しつつ、先輩が帰って来るのを待っていると。

「ただいま」
 そう言いながら、先輩がオレの後ろを通って、隣の席に腰かけた。

「おかえりなさい」

 そう返して、先輩を見ていると。先輩はふとオレを見て、にっこり笑ってくる。

「お待たせ、作ったやつ見るよ。貸して?」
「お願いします」

「ん」

 渡した資料を静かにじっと見つめて、めくっていく。
 オレは、変にならない程度に、先輩を見つめる。

 あぁ、ほんと。資料を見て、下を見てる睫毛が長くて可愛いし。キレイだし。
 なんなら、資料をめくってる指すらキレイというか。

 触れたいというか。

 頬にキス、したいというか。いや、唇に――――……。


 おいおい。しっかりしろ。
 この盛り上がり方が、マジで中高生。恋愛覚えたてみたいだなと自分で思い、ほんと落ち着かないとと、思ってしまう。

 先輩から少し視線を外して、オレは、自分のノートパソコンに目を向けた。

 オレ、ほんとに好きすぎだな。
 やばすぎる。

「ん、大丈夫かな。……あ、三上、ここ」

 呼ばれて、先輩の方を見ると、近づいてきて、資料を指さす。

「これだけさ、データも、後ろにつけといて?」
「はい」

 頷いて、受け取る。
 近いなー。距離。資料を見せるためだとは分かっているのだけれど。
 ……分かっているのに、ドキッとする。

 少し、先輩から離れて、とりあえずデータ……と、パソコンの方に向き直ろうとしたら。先輩がクスクス笑って言う事に。

「んー、三上、ほんと良く育ってるな。仕事すごく速いし。オレのスパルタのおかげかなー」

 楽しそうに笑って、先輩がオレを見つめる。

「……ほんとスパルタでしたけど」

 苦笑いで答えると、ふ、と瞳を緩めてくる。

「でも、三上出来てたし」

 笑いながらそんな風に言って、オレを見つめてくる。


 オレはきっと今まで、こんな風に、褒めてもらいたかったんだと思う。この人に。だから、今、これってものすごく嬉しい、事であるんだけど。

「――――……」

 なんか今となっては、先輩がそんな風に、可愛い顔してニコニコされると。
 抱き締めたいとか、また別の欲求が、浮かんでしまうらしい。

 ……とりあえず、オレが、どんだけそれに惹きつけられるか分かっといてほしい。


 はー。もう。ほんとにもう。

 冷たい時もオレをかき乱し。
 ……冷たくなくなったら更に、かき乱されるとか。


 ――――……先輩と知り合って、二年。
 ほんとに、オレん中って、この人の事ばっかだったなぁ。

 
 もう、今なんて、昨日腕の中に。……ていうか、今朝も腕の中に居た先輩が、思い出されて、ほんとヤバいんだけど。


「オレ今から、午前中のことで報告があるから席外すけど。三上、何か聞きたい事ある?」
「大丈夫です」

「ん。じゃあしばらく行ってくる」
「はい。いってらっしゃい」
「うん」

 オレをまっすぐ見つめて、ふ、と笑んでから、先輩は歩き去って行った。



「――――……」


 何だか持て余して、ポリポリ頭を掻きながら。
 とりあえず、データ探そ……と、パソコンに向き直る。


 笑顔がものすごく嬉しいような。
 ――――……触れたくなって、我慢が厳しいような。

 何だかなあと、仕事しながらも、延々考えてしまった。
 

 





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