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◇可愛い。

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 先輩が部屋の鍵を開けて、オレを振り返りながらドアを開けた。

 靴を脱いで、中に入っていく先輩。
 くる、とオレを一度振り返って。

「ちょっとスーツだけかけてくる。入っててもいいよ」
「すぐならここで待ってます」

「うん。すぐ」

 言いながら先輩が奥に消えていった。

 どーしたら「可愛い」呼ばわりされなくなるかなあ……。
 と、オレが「可愛い」からの脱却方法を考えてると、本当にすぐに先輩が戻って来た。

「おまたせ」
「いえ」

 持ってきた会社用のバッグを玄関に置いて、靴を履いた先輩は。

「……三上、さっきから、変な顔してる」

 言いながら、オレを見上げて、クスクス笑った。


「可愛いって言ったから?」

 ――――……バレてるし。


「……別に」

 認めるのも悔しいし、バレバレなのに、違うと言うのもなんだかな。と思い、そう言って、視線を逸らしたら。

 不意に先輩の手がオレの頬に掛かって、ぐい、とひかれて。
 びっくりしてると、おもいきり、まっすぐ見上げられた。

 でっかい瞳。凛としてて綺麗。

 ――――……今更だけど、ものすごい、ドキドキするとか。
 ……どんだけ好きなんだ、オレ。

 なんてことを、思っていたら。

「いつもさ、三上ってカッコいいから、たまに可愛いとつい笑っちゃうって事なんだけど」
「――――……」


「……まあ、それでも、嫌なら言わないけど?」

 ふ、と細められる瞳。


「オレ、いつも、いい意味でいってるんだけど……?」
「――――……」



 ――――……ダメだ。無理。


 急にぎゅ、と抱き寄せたオレに、びっくりしてる瞳を見つめたまま。
 唇を重ねた。


「……っ……ん……?」 

 舌を挿しこんで、先輩の舌と絡めて、すると、小さく声が漏れる。


 ――――……可愛い……。
 つか、可愛いって、オレじゃないと思うんだけどな。


「――――……ん、ん……」

 先輩の手が、オレの腕にかかって、そっと、引き離される。


「……三上、会社だから、すとっ…――――……」
「も少しだけ」

 そう言って、先輩の頬に触れたら。
 困ったように眉を寄せたけど。先輩は、すぐ、ふ、と瞳を伏せた。


 ああもう可愛い――――……。
 先輩とこうなってから、心の中で何回叫んでるか。

 唇を重ねながら、また抱き寄せる。
 しばらく、キスしてから。

 ゆっくり離すと。
 先輩はゆっくり瞳を開いて、オレを見つめた。


「――――……ごめんね、陽斗さん」
「……何で、謝ってんの?」

「これから会社なのに、こんなキスして」

 ふ、と笑って、オレを見つめ返す。


「――――……まだ時間早いから」

 言って、先輩はすぽ、とオレの腕に収まってきた。


「――――……ちょっと休憩してから行こ」



 休憩。なんかそんな言葉すらも。
 ……可愛い。とか。




 あー。もう。

 すげー好き。







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