187 / 274
side*陽斗 6
しおりを挟む「ありがとうございます」
三上が嬉しそうに笑って、オレの手からドライヤーを受け取って、片づける。
「陽斗さん、コーヒーとか、飲む?」
「んー……三上、飲みたい?」
「うん」
「じゃあ一緒に飲む」
「りょーかい。入れるね」
言いながら、三上が先に洗面所を出て行く。
あとを歩きながら。
――――……さっきまで1人だったから。なんだか、三上が居て、嬉しいと思ってしまう自分が。何だかすごく、ウキウキしてて。
はー。なんか。
オレ。中高生とか、みたい。
何でこんなときめいてんの。
あの頃、そんなにときめかずに生きてきて、こんな年取ってから、こんな年下の男に……。
はー。
――――……困る。ほんと。
「先輩、夜何食べました?」
三上がコーヒーを淹れる準備をしながら、隣に立ったオレを見下ろす。
「んーと……あ、麻婆豆腐」
「いつも行く、定食屋さん?」
「うん。そう」
「今度連れてってください」
明るい笑顔に、いいよ、と頷く。
……うん。何か何も、断れる気がしない。
「オレらの話し合いはね。とりあえず何年か前の出し物をリメイクというか、ゼロからじゃなくていいよねって話になってさ」
「あぁ。いいんじゃない? 誰も覚えてないよ」
「ですよね? 多少覚えてる人が居ても、別に文句は言われないかなって話になって」
「うん。言わない」
「もうオレ、なるべく時間とられないように頑張るんで」
「ん?」
「だってオレ、陽斗さんと居たいし」
「んーでも三上、指導の準備もしなきゃいけないし。忙しいね、4月半ばまでは」
「……そーですけど。でも、何とか就業時間内でなるべく頑張るので」
「――――……ので??」
「オレと、居てね、陽斗さん」
コーヒーを淹れる手を少し止めて、オレをまっすぐ見つめる。
「――――……っ」
なんか。顔に熱が集まりそうで。
……思わず、俯いてしまう。
「……陽斗さん?」
三上がちょっと覗こうとしてくるし。
「――――……もうさあ、三上ってさぁ……」
「ん?」
「……なんかそういうのさ、可愛いと思って、やってる?」
そういうさ。オレと居てね、とか言って、ニコニコ笑いながら、見つめてくるとか。
絶対可愛いと思って、やってるよね。
そんな風に思って、もう、聞いてしまった、のだけれど。
三上はきょとんとして。すごく驚いた顔してて。
それから、んー……と少し黙ってから。
「……陽斗さん」
コーヒーの道具を全部、カウンターに置いて、三上はオレの腕を引いて、真正面に向かい合う。
顎に手が触れて、優しく上向かされた。
「――――……オレ、今、自分のこと可愛いなんて、全く思ってなかったんですけどね。ていうか、おかしいでしょ、オレがそう思ってたら」
クスクス笑いながら、三上がまっすぐオレを見下ろす。
「でもなんか――――……陽斗さんが、オレを可愛いって思ってるのは、なんか、すごく分かりました」
「――――…………っっ」
しばらく三上の言葉の意味を考えて。
分かった瞬間。
かあっと顔が熱くなった。
オレ今、三上の事可愛いって、思いっきり、言ったようなものか。
……恥ず……っ。
背けようとしたけれど、顎、捕らえられてて、無理で。
「でもねー、陽斗さん」
「――――……っ」
「可愛いも嬉しいんですけど……」
「――――……」
「できたら、オレ、カッコいいって、思われたいんですけど……」
なんだか、急に、真顔になって。
オレをまっすぐに見つめてくる。
「どーしたら、思ってくれる?」
……っカッコいいが8割9割だってば。
たまに、可愛いだけで。
真剣に見つめられて、囁かれてしまうと。
――――……すごいドキドキするけど。
ここでカッコいいとか、なんか。
どんだけ好きなんだって感じで。
恥ずくて、言える訳ない。
81
★お読みいただきありがとうございました♡★楽しんで頂けてましたら、ブクマ&感想、おまちしてます♡(好き♡とか短くても嬉しいです♡)
他にもいろいろ作品ありますのでぜひ♡
【恋なんかじゃない】
【ドS勇者vsオレ】
【Fairytale】
【Staywithme】
【やさしいケダモノ】
【溺愛ビギナー】
【水色の宝石】
【オオカミ王子は エサのうさぎが 可愛くて しょうがないらしい】
【Promise】
【ありふれた恋の音】
他にもいろいろ作品ありますのでぜひ♡
【恋なんかじゃない】
【ドS勇者vsオレ】
【Fairytale】
【Staywithme】
【やさしいケダモノ】
【溺愛ビギナー】
【水色の宝石】
【オオカミ王子は エサのうさぎが 可愛くて しょうがないらしい】
【Promise】
【ありふれた恋の音】
お気に入りに追加
1,284
あなたにおすすめの小説


別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

「短冊に秘めた願い事」
悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。
落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。
……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。
残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。
なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。
あれ? デート中じゃないの?
高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡
本編は4ページで完結。
その後、おまけの番外編があります♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる