【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

悠里

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side*陽斗 6

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「ありがとうございます」

 三上が嬉しそうに笑って、オレの手からドライヤーを受け取って、片づける。


「陽斗さん、コーヒーとか、飲む?」
「んー……三上、飲みたい?」
「うん」
「じゃあ一緒に飲む」

「りょーかい。入れるね」

 言いながら、三上が先に洗面所を出て行く。
 あとを歩きながら。

 ――――……さっきまで1人だったから。なんだか、三上が居て、嬉しいと思ってしまう自分が。何だかすごく、ウキウキしてて。

 はー。なんか。
 オレ。中高生とか、みたい。

 何でこんなときめいてんの。
 あの頃、そんなにときめかずに生きてきて、こんな年取ってから、こんな年下の男に……。


 はー。
 ――――……困る。ほんと。

「先輩、夜何食べました?」

 三上がコーヒーを淹れる準備をしながら、隣に立ったオレを見下ろす。

「んーと……あ、麻婆豆腐」
「いつも行く、定食屋さん?」
「うん。そう」

「今度連れてってください」

 明るい笑顔に、いいよ、と頷く。
 ……うん。何か何も、断れる気がしない。


「オレらの話し合いはね。とりあえず何年か前の出し物をリメイクというか、ゼロからじゃなくていいよねって話になってさ」
「あぁ。いいんじゃない? 誰も覚えてないよ」

「ですよね? 多少覚えてる人が居ても、別に文句は言われないかなって話になって」
「うん。言わない」

「もうオレ、なるべく時間とられないように頑張るんで」
「ん?」

「だってオレ、陽斗さんと居たいし」
「んーでも三上、指導の準備もしなきゃいけないし。忙しいね、4月半ばまでは」
「……そーですけど。でも、何とか就業時間内でなるべく頑張るので」
「――――……ので??」

「オレと、居てね、陽斗さん」

 コーヒーを淹れる手を少し止めて、オレをまっすぐ見つめる。


「――――……っ」

 なんか。顔に熱が集まりそうで。
 ……思わず、俯いてしまう。


「……陽斗さん?」

 三上がちょっと覗こうとしてくるし。


「――――……もうさあ、三上ってさぁ……」
「ん?」

 
「……なんかそういうのさ、可愛いと思って、やってる?」

 そういうさ。オレと居てね、とか言って、ニコニコ笑いながら、見つめてくるとか。
 絶対可愛いと思って、やってるよね。
 
 そんな風に思って、もう、聞いてしまった、のだけれど。

 三上はきょとんとして。すごく驚いた顔してて。
 それから、んー……と少し黙ってから。


「……陽斗さん」

 コーヒーの道具を全部、カウンターに置いて、三上はオレの腕を引いて、真正面に向かい合う。

 顎に手が触れて、優しく上向かされた。


「――――……オレ、今、自分のこと可愛いなんて、全く思ってなかったんですけどね。ていうか、おかしいでしょ、オレがそう思ってたら」

 クスクス笑いながら、三上がまっすぐオレを見下ろす。



「でもなんか――――……陽斗さんが、オレを可愛いって思ってるのは、なんか、すごく分かりました」

「――――…………っっ」


 しばらく三上の言葉の意味を考えて。
 分かった瞬間。

 かあっと顔が熱くなった。
 オレ今、三上の事可愛いって、思いっきり、言ったようなものか。


 ……恥ず……っ。

 背けようとしたけれど、顎、捕らえられてて、無理で。



「でもねー、陽斗さん」
「――――……っ」


「可愛いも嬉しいんですけど……」
「――――……」



「できたら、オレ、カッコいいって、思われたいんですけど……」


 なんだか、急に、真顔になって。
 オレをまっすぐに見つめてくる。


「どーしたら、思ってくれる?」


 ……っカッコいいが8割9割だってば。
 たまに、可愛いだけで。


 真剣に見つめられて、囁かれてしまうと。
 ――――……すごいドキドキするけど。

 ここでカッコいいとか、なんか。
 どんだけ好きなんだって感じで。


 恥ずくて、言える訳ない。


  
  


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