185 / 274
side*陽斗 4
しおりを挟む数分後。
チャイムが鳴って、通話を押すと、三上が映った。
「先輩、openボタン押して下さい」
言われて、エントランスの自動ドアを開けるボタンを押す。
それから、玄関に行って、鍵を開けた。
なんとなく、外に出て迎えるとかは、ちょっと変かなと思って、すこしだけ顔を出してみた。
エレベーターが止まる音が遠くで小さく聞こえて。
そっちの方を見ていると。すごく、早足で歩いてくる三上が見えた。
「――――……」
途中で、ドアを少し開けて覗いてるオレに気付いて、笑顔になる。
「ただいま、陽斗さん」
「うん。おかえり」
ドアが大きく開いて、三上が中に入ってくる。
三上は、玄関の端に鞄を置いて、「シャワー浴びてくるね」と、ろくに話もしないで、バスルームに消えてしまった。
「――――……」
あれ。
もっと、すっごく喜ぶのかと思ってた
まあ、笑顔には、なってたけど。
……なんか、ちょっと拍子抜け?
リビングに戻って、つけていたテレビを、なんとなくぼー、と眺めながら。
とりあえず三上が出てくるのを待っていたら。
がちゃ、とバスルームが開く音がした。
と思ったらリビングにすぐ現れて。
髪の毛の雫をタオルで拭きながら、オレに近付いてきて。
何となく、ソファから立ち上がった瞬間。腕を取られて引き寄せられて。
ぎゅー、と抱き締められた。
「……三上?」
「――――……ただいま、陽斗さん」
なんか、めちゃくちゃ暖かくて、ホコホコしている。
むぎゅむぎゅと、抱き締められて。ちょっと戸惑う。
「――――……?」
少し離されて、見下ろされる。
「なんで、手、回してくんないの? 嫌?」
オレが抱き付けなくて戸惑ってた手にツッコミが入る。
「あ。いや――――……だって」
「だって、何?」
「……なんか。さっき。すぐシャワー行ったし」
「――――……」
三上が、何回か瞬きして。
それから、ふわ、と嬉しそうに笑った。
「ごめんね、なんか、禁煙席空いてなくて、喫煙席の方に座ったらすっげー煙いし、なんか、そんなんで陽斗さん、抱き締めたくなくて」
「――――……」
「だからもう、速攻シャワー浴びたんだけど」
「――――……っ」
「何? ……寂しくなっちゃいました?」
「――――……っっ!」
……っっじゃあ、そう言えよ!
っなんか、あんまり嬉しくなかったのかなと思って、ちょっと、来なきゃよかったかなとか、少し思っちゃったじゃないか!
「――――……あー。もー」
「――――……」
「可愛くて、無理」
三上の手が顎に触れて。まっすぐ見上げらせられて。
「――――……っん……」
深く、重なってきた。
ぎゅ、と抱き締められて。三上の手が、背中を支える。
「――――……ン、……っ」
舌が、唇の間から少しだけ入ってきて、オレの舌先にそっと触れる。
触れるだけ。
絡んでこない。
「――――……?」
瞳を開けると、三上がオレを見てる視線と絡んで。
ふ、と優しく笑まれる。
キスしたまま、そんな風に見つめられると。
かあっと、顔に血が集まってくる。
「……キスしていいなら、舌、ちょうだい」
少しだけ離されて、囁かれて。また、舌先が、触れてくる。
ぞく、とした感覚が体の奥で沸いて、ぴく、と手が、震えた。
その手で、三上の服、握り締めて。
「――――……」
舌を、三上の舌に、そっと触れさせたら。
ふ、と三上が、笑うような吐息。
すぐに、深く、絡められて。
ぎゅ、と瞳を閉じた。
69
★お読みいただきありがとうございました♡★楽しんで頂けてましたら、ブクマ&感想、おまちしてます♡(好き♡とか短くても嬉しいです♡)
他にもいろいろ作品ありますのでぜひ♡
【恋なんかじゃない】
【ドS勇者vsオレ】
【Fairytale】
【Staywithme】
【やさしいケダモノ】
【溺愛ビギナー】
【水色の宝石】
【オオカミ王子は エサのうさぎが 可愛くて しょうがないらしい】
【Promise】
【ありふれた恋の音】
他にもいろいろ作品ありますのでぜひ♡
【恋なんかじゃない】
【ドS勇者vsオレ】
【Fairytale】
【Staywithme】
【やさしいケダモノ】
【溺愛ビギナー】
【水色の宝石】
【オオカミ王子は エサのうさぎが 可愛くて しょうがないらしい】
【Promise】
【ありふれた恋の音】
お気に入りに追加
1,285
あなたにおすすめの小説


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。




【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる