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◇やばすぎる

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 朝は超幸せだったけど、会社に来たら今日はかなり忙しかった。
 担当の営業先から色々問い合わせの電話やメールが続けて入ってきて、午前中から対応に追われた。
 
「三上はそっちの会社行って。オレがこっちの2社行くから。別でいいよな?」

 先輩が片方の資料を手に持って自分の机に置くと、立ち上がって、上着に袖を通した。

「はい」
 いつもは割と2人で行く事が多いんだけど、忙しい時は手分けする。
 今日は一緒には行けそうにない。残念。

「じゃあな。あ。多分オレ昼戻れないから好きに食べて」
「はい」

 ――――……ちょっと前まで、昼を一緒に食べたりもほとんどしなかったから、わざわざこれを言ってくれるという事自体が嬉しいのだけれど。

 特に何の感情も無い感じで、そう手早く言うと、先輩は最後オレの顔をちょっと見て、じゃあな、と言って離れて行った。
 何となく視線で見送るけど、先輩は急ぎ足で歩いて行って、ドアを出て外に行ってしまった。
 会社で仕事をしてて、特に忙しい時。可愛い先輩は、どこにも居ない。

 オレと居ると可愛く見える顔は、多分表情が全然違うからだと思うんだけど、可愛いじゃなくて、ひたすらカッコいいというか、普通に仕事のできるイケメン。て感じ。そりゃあ、モテるだろうなぁと、思う。

 入社して以来、先輩のマンツーマンをいいなー、と言われる事が多々あった。
 まあ。2年間のオレは、納得してなかったけど。仕事はいいけど、人としてどーなんだ、とか、思っていたけど。


 今となっては。――――……ほんと、マンツーマンが先輩で良かった。

 でも会社のあの人しか見てない人達にとってみたら。
 狼狽えたり、赤くなったり、見上げてきたり。
 ――――……そんな事するなんて、きっと誰も思わないだろうな。

 寝る時、寒いとか言って、一緒に寝ようとするとか。
 朝、寝ぐせがあんなに可愛いとか。
 ……いや、誰にも見せたくないし、可愛いのを気づかれたくもないからいいんだけど。

 でもなんかオレだけっていうのが。
 ――――……いい気分なような。なんか見せびらかしたいような。
 はー。複雑。


 そんな事を頭の隅で考えながら、メールでの問い合わせに返信終了。
 よし。行くか、外回り。

 立ち上がって上着を着て、ボードに外回りと表示してから、先輩の名前の所も確認。

 早く行って戻ってこよ。
 午後は一緒に仕事出来るといーけど。

 そんな風に思って、適当に挨拶しながら、部室を後にした。



◇ ◇ ◇ ◇


 無事対応終了して、営業先を出て駅までの道を歩く。
 車だと日中は混む道なので、今日は電車でここまで来た。

 どっかで飯食って帰るか、と、辺りを見回していた時。
 スマホに着信。

 あ。先輩。


「もしもし?」
『あ。三上? もうそっち終わった?』
「はい。先輩の方は?」
『意外と早く片が付いて、両方済んだよ』
「よかった。うだうだ言われませんでした?」

 先輩が引き取ったひとつ、結構めんどくさいオヤジが居る。
 敢えて言わなかったけど、きっとそっち、選んでくれたんだと思うからちょっと気になってた。
 すると、先輩は、クスクス笑って。

『まあ、大丈夫だったよ』

 ――――……まあ、あのおっさんも、先輩の事好きだからな……。
 て思って、ちょっとムカッとして。
 ……いやいや、あんなおっさんにまで妬くとか無い、無いから。

 自分の思考にちょっと焦ってると。

『三上、今どこ?』
「今、渋谷の駅前」
『じゃあ、そっち行く。15分位で着くから。飯食おう?』
「え」
『何?』
「食べれるんですか?」
『だって、オレ終わったし。お前無理なの?』
「無理じゃないです!」

 急いで否定すると、先輩はクスクス笑って。
 
『良さそうな店探しといて、行くから』
「了解」

『いいとこあったら、送っといて』
「分かりました。待ってますね」
『うん』

 電話が、切れた。


 つか。
 ――――……これ、飯食う位で、こんな嬉しいとか。ヤバすぎる。
 





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★お読みいただきありがとうございました♡★楽しんで頂けてましたら、ブクマ&感想、おまちしてます♡(好き♡とか短くても嬉しいです♡)
他にもいろいろ作品ありますのでぜひ♡

【恋なんかじゃない】
【ドS勇者vsオレ】
【Fairytale】
【Staywithme】
【やさしいケダモノ】
【溺愛ビギナー】
【水色の宝石】
【オオカミ王子は エサのうさぎが 可愛くて しょうがないらしい】
【Promise】
【ありふれた恋の音】
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