【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

悠里

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◇手順を

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 少しほっとしたみたいな笑顔。
 可愛いなあと思いながら。


「――――……ね、陽斗さん。蒼生って呼びません?」
「え」

「蒼生って呼んでほしいですけど」
「――――……」

 先輩は、みるみる赤くなって。
 ぱ、と手で口元隠して、顔を背けてしまう。


「……まだ無理。ごめん」
「……抱いてる時は、呼んでくれたのになー」

「――――……だから余計、無理」

「兄貴のことは呼び捨てなのに?」
「……なんか、それとは、全然違う」

 まあ。一緒だったら困るけど。

 これは、呼んで貰えそうにないかなあと。
 むー、と黙っていると。


「……今度頑張ってみる」

 って。
 ――――……すげえ、可愛い答えが返って来た。

 思わず、そっと、頬に触れてしまう。

 ほんと、可愛い。
 そこで、はっと気づいた。


「三上?」

 そーと、手を離すと、先輩が不思議そうにオレを見上げた。


「あのね、陽斗さん、先に聞いておきたいんですけど」
「……うん?」

「触るのとか。キスとか。その他諸々。どうしたらいいですか?」
「――――……その他諸々って……」

 先輩は、クスクス笑って、オレを見つめる。

「……どうしよっか? 三上、どうしたい?」
「陽斗さんがどうしたいかに合わせますよ?」

 そう言ったら、んー、と先輩が唸りだした。

「1カ月はプラトニックな恋人同士って事でもいいですよ?」
「――――……」

 先輩は、うん、と頷いたのだけれど。そのまま、少し考えて。
 すぐに、ふと、顔を上げた。


「でもオレ達って、もう――――……いろんなこと、しちゃってる、よな?」
「――――……そう、ですね」

「……んー…… じゃあさ」
「はい」


「それも、ちょっとずつ、してく、ていうのは?」
「――――……」

「あの日、一気に、だったし」

 そんな言葉に、オレはふ、と笑ってしまった。


「――――……じゃあ、ちょっとずつ進んで、お互いOKならありって事で、良いんですか?」

 先輩は、少し恥ずかしそうにオレを見るけれど。


「恋人って言ってるのに、そこだめっていうの、変じゃない? 三上、やだろ?」
「――――……陽斗さんがいいなら、そうします」


 そう言うと、また少し、考えてから。


「良いよ。普通に込みで。1ケ月」

 ふ、と笑む先輩。


 ――――……なんだかなあ。
 思い切りが、良いのか悪いのか。

 1カ月、てなると、割り切れるし思い切れるのかな。



 ………ていうか、「三上、やだろ?」って。
 結局、オレに、甘いのかな、この人。



 オレは、目の前の先輩の頬に触れて、そして、そのまま、抱き寄せた。


「――――……手順、踏んでる? これ」

 クスクス、先輩の笑う声。


「うん。これが、手順1ですね」
「――――……手つなぐとか。じゃないの?」

 そうは言うけど、先輩は、抱き締められるまま笑ってるし。


「――――……」

 ちゅ、と頬にキスすると。


「………今日はここまでにします。手順、踏むので」

 オレも笑いながらそう言うと。
 ん、と先輩も笑って、手を背中に回して、ポンポン、と叩いてくる。



「……三上」
「はい?」


「――――……ありがと」
「え」


「なんかオレが――――……はっきりしないだけなのに」
「――――……」

「色々考えてくれて」


 ぎゅ、と抱き付かれて。


 ――――……うわ。やば。

「ありがと」


 腕の中でそんな風に言われて。
 可愛すぎ、なんて思った瞬間。

 かあっと、熱くなって。


「――――……」

 何いまさら、こんな事でオレ、赤くなってンの――――……。
 ぐったりして、先輩を、むぎゅ、と抱き締める。

「――――……陽斗さん、すげー好き」
「え」

 顔見られないように、抱き締めたまましばらく離さないでいると。


「三上?」

 クスクス笑われて、名を呼ばれる。


 あーもう。
 ――――……なんか、ほんと好き。 
 



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