168 / 274
◇1カ月。
しおりを挟む「……それでも、今は、いいよって言えませんか?」
「――――……三上、この先ほんとにそれでいいのかなって……今は良いって言うんだろうけど。なんか…… 覚悟決めて付き合って――――…… やっぱり無理って言われるの、キツイし」
おお? なんか。
――――……少し、今までと違う事も言ったな。
………なるほど。
オレを、完全に信じられてないってことか。
先輩にとっては、4日間で超盛り上がったみたいな関係だからかなー……。
――――……ああ、そっか。期間が短すぎるから、多分いけないんだから。
てことは。
「あのさ、陽斗さん」
「……ん?」
オレは、抱き締めていた腕を解いて、先輩を少し離して、真正面から見つめた。
「ちょっと提案、なんですけど」
「うん」
「オレ達、こうなってからまだ4日しか経ってないので、ちょっと急ぎすぎな気もするんですよね。陽斗さんが迷うのも分かるので」
「ん……?」
「なので、とりあえず1か月、付き合ってみませんか?」
「――――……1カ月??」
「オレはめいっぱい先輩の恋人で居るので。ある意味、試用期間、みたいな。本採用するかは、先輩が決めてください」
「――――……何それ?」
ものすごーく、戸惑っている。
「今、無理に、いいよって言ってもらうのも、なんか違う気がするんですよね」
「――――……」
「とりあえず、1か月、オレと恋人になったら、こんなに楽しいですよプレゼンをしていくので。――――……そうしながら、考えてくれませんか?」
「――――……今の状態と何が違うの?」
「今は保留中でしょ? そうじゃなくて、関係は、恋人。かっこ試用期間、て感じで」
「――――……」
「陽斗さんは、ほんとにいいのかなあとか言ってるけど、それってこのまま、ずっと付き合うっていう覚悟が出来ないんでしょ?」
「――――……ん……」
「だから、陽斗さんが今オッケイしてくれるのは、1カ月に限って、て事で。1カ月恋人として過ごして……そしたら4日間じゃ見えないことも見えるでしょうし」
「――――……」
「1カ月のOKなら、そんなに考えずに、出せませんか?」
「……そんなんで良いの?」
「提案してんのオレですからね。良いに決まってます」
「……でも、なんかそれだと、オレが決めるとかって、三上ばっかり、試されてるみたいで嫌なんだけど」
先輩がそんな風に言って、少し考えてから。
「……じゃあ、お互い、試用期間にしよう?」
「お互いですか?」
「うん」
「んー……」
――――…………オレには、要らないんだけどなあ、先輩の試用期間。
無くても分かってるのに。
「あと、違うってなったら。ただの仕事の関係に戻るってこと?」
「……いや。そうじゃ、なくて……んー……」
そんな事にするつもりは、一切ないけど。
オレは、ただ、先輩に時間をあげたいだけだし。
好きって思ってくれてるけど、いいのかなって迷う気持ちは分かるから。
恋人として過ごしてる間に、
オレと恋人になっても良いって、思ってもらうつもりだし。
一緒に、時間過ごすのに、いちいち理由をつけなくてもよくなるし。
とりあえず1カ月、でも。
保留の状態で悩ませるよりは、「恋人だから」で過ごせた方が、絶対良いと思うから、言ってるだけだし。
「お互い好きって思ってるのに、遠い先の事考えて一緒に居れないなら、期間区切って考えてみましょう、って話です。1カ月後どうするかはまた、考えましょう?」
「――――……」
先輩はしばらく、黙ってオレを見上げていたけれど。
「……分かった」
と、頷いた。
「じゃあ、陽斗さん」
「――――……」
「今から『恋人』ですよ? いいですか?」
「――――……」
じーっとオレを見て。
「うん。いいよ。とりあえず、1カ月、な?」
「ん。楽しく過ごしましょうね」
そう言うと。先輩はオレを見て。ん、と顔を綻ばせた。
67
お気に入りに追加
1,278
あなたにおすすめの小説
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる