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◇甘すぎるって。

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「三上、これ美味しい」
「ん。そうですね」

 とりあえず頼んだ食事が来て、食べ終わるまでは出る訳にもいかないし。
 先輩は、隣で普通に食べてるし。

 さっきまで困ってて赤くなってたけど、少し収まったらしい。

 早く家に連れて帰りたいなーとも思うんだけど。
 美味しそうで嬉しそうなのはまた可愛いから、まあ、これはこれでと思っていると。


「そうだ、三上、言い忘れてた」
「はい?」

「新人研修、三上がうちの課の指導者になると思う」
「あ、そうなんですか?」
「覚えてる?」
「あれですよね、新人が色んな部や課に巡って、習うってやつ」
「そう、それ」
「……何日位でしたっけ」

「3日間位かなあ。日に2時間ずつくらい。だから、去年の人から指導の資料引き継いで、必要なら手直ししといてもらわないと」
「去年うちの課、桜葉さんでしたっけ。明日聞いてみますね」
「うん」

 そっか。と頷きながら。


「歓迎会も担当だし、今年の新人はすごく絡みそうですね、オレ」
「そうだね」

「去年の新人とか、ほとんど絡んでないんですけど」
「でも来年は、マンツーマンの指導もやるだろうし。段々世話してく方になるんだよね」
「そうですね……なんとなくオレは、ずっと陽斗さんの下に居たいですけど」

 クスクス笑いながらそう言うと、先輩は、ふ、と笑った。


「そんな訳にはいかないでしょ。お前、その内志樹の方に移るんじゃないの?」
「……そういう意味じゃなくて。ずっと一緒に居たいってだけの話ですよ」

「――――……」

 眉を顰めた先輩に、まじまじと見つめられて、思わず、ぷ、と笑ってしまうと、すごくじっと見つめられる。

「あのさー……三上さ」
「はい?」

「仕事の話してる時に、そういうの挟んでくるの、やめて」
「はあ……」

「一瞬何言われてんのか全然分かんないし」
「…………」

「分かった時、すごく恥ずかしいし。だから、ほんとにやめてほしいんだけど」

 
 すごく恥ずかしい、かー……。
 ――――……それ、言う方が、オレは恥ずかしいと思うんだけど。

 ……何でこんなに、可愛いのかなー。


「とりあえず、分かりました。――――……そういう話はなるべくまとめて、しますね」

「え……なんか、それもちょっとやなんだけど」
「それじゃ話せないじゃないですか」 

 笑いながら言うと。

「三上、そういうの言いすぎなんだよ」

 眉をひそめて、先輩がブツブツ言ってる。
 おかしくなって、クスクス笑ってしまいながら。


「――――……もう食べ終わりましたよね? 行きましょ?」
「――――……」


「たくさん、まとめて、話しましょうね」
「――――……」


 先輩は、少しの間黙って。
 それから。


「やっぱり行かない方がいいかな……」

 と、ため息をついている。



「ダメですよ。行きましょうね、陽斗さん」

 軽く腕を掴んで、立たせる。


「……うん」

 割と素直に頷いて立ち上がった先輩。 

 なんか、このまま抱き締めたいとか。
 思ってしまう。

 無理にはしないって言ったけど。
 大丈夫かな。オレ。



 先輩って――――……なんだかんだオレに甘すぎて。
 調子に乗りそうで。……少し、気を引き締める。



 ――――……あんまり甘すぎんのって、良くないですよ、と。
 上着を着てる先輩を見ながら、思ってしまった。





(2022/2/15)
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