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side*陽斗 3

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「渡瀬さん?」

 視線を逸らしていたら、中原君に呼ばれて、どうしようかと思っていたら。


「いーから。……つか、何なんだよ、甘々って」

 なんて、三上が言ってる。

「……だって、お前、すげー甘々っぽい感じで渡瀬さんの事見てるし」


 ……確かに三上はずっと、そうだけど。
 「そうだよ、甘々だよ」なんて。三上の友達に言える訳ないじゃんかー。


 三上、お前の友達をどーにかしてくれ。

 三上に全てを任せて、オレは黙っていると。
 中原君が言う事には。


「こいつ、基本、そういう相手への対応冷たい奴なんで、あんな感じのこいつ、初めて見たというか」
「え?」

 オレは、目を逸らしていたのも忘れて、中原君を見返してしまった。


「え?って」
「先輩?」

 2人に、不思議そうな顔をされてしまったけど。


「三上って、基本冷たいの?」

 オレがそう聞くと。目の前で2人がぷ、と笑った。


「まあ確実に、こいつは甘々ではないです」


 中原君は笑いながらそう言う。

 三上はものすごく嫌そうに、中原君を見てから、オレを見る。


「先輩、聞かなくていいですよ」

「こいつね、渡瀬さん」

 三上のセリフは無視して、中原君が話し始める。オレが、うん、と返して、聞く気なのが分かったのか、三上は諦めたような顔をしながら、グラスを傾け始めた。


「こいつ昔からすげーモテたんですけど。大体女の子達がもう良いって諦めて離れて行くパターンで、でもって追わないし」
「――――……」

「そんなの知られてても、私が振り向かせるっていう女子が競って告って、でも結局ちゃんと付き合う前に、終わるみたいな……そんな感じだったんですよね……」

 なんか。なかなかにすごい感じの事、聞いてるような。


「――――……そーなの? 三上」
「……まあ…… そう。かなあ……?」

 苦笑いで、でも否定はしない。


 ……何か、でも、オレの前に居る三上は、全然違うんだけど……。


 ……恥ずかしくなる位、優しくて甘いけど。


「――――……なので、渡瀬さん」
「……あ、うん?」

「今、オレのこのセリフが疑問なら。蒼生は、相当渡瀬さんに本気なんじゃないかと思うんですよね」

「――――……」


「オレ、蒼生との付き合い、結構深~くて長いんですけど、こんな嬉しそうに誰かに構うとこ、見た事ないというか」

「……つか、お前そろそろ黙れ、仕事戻れ」

 三上が突っ込みながら、中原君の酒をトレイにのせながら、帰そうとしている。


「オレはお前の後押しをしてやってるっていうか」
「いーから、もう。仕事戻れ、さぼるな」

「……ち。はいはい」

 中原君はため息を付きながら、立ち上がる。


「じゃあごゆっくり。あ、渡瀬さん、何か聞きたい事あったら、どうぞ何でも」
「ん。ありがと」

 持ってきたトレイに自分のグラスを乗せて早々に戻って行った。
 

「――――…………」

 短い会話だったけど色々思う所があって、しばらくじっと、三上を見つめていると。
 

「えーと……」
「――――……」

 三上が、オレの視線に超苦笑い。



「……オレ、確かに、あんまちゃんと付き合わず遊んでましたけど……それは本気になってなかったってだけで……」

「ん??」

 何の話を始めた?
 オレが三上を見つめて、首を傾げたら。


「……ん?」

 三上はオレの顔を見て、不思議そうに黙る。


「って――――……先輩が気になってるのそっちじゃないですか?」

「うん。そっちじゃない、と思う……」


「……じゃあ何です?」



「――――……三上の甘々モードって、オレにだけなのか??」




 聞きたい事はそれだったので、ずばり、そんな風に聞いてしまった。





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