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番外編。【クリスマス🎄ミニ小説】3/3

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 先輩の反応を見ようと目を開いたら。
 涙目で、オレをうっすらと見てて。目が合った瞬間、少し細まったせいで、涙が、つ、と零れた。


 可愛い――――……。

 顎に触れてた手を頬に滑らせて、親指で涙をぬぐいながら、キスを続ける。

 
「……ぅ、ンン…………っ」


 不意に、先輩の足が、がくん、と抜けて。
 あんまり急だったので、びっくりして、咄嗟になんとか、抱き締めた。

「――――……っ」

「……だ、いじょうぶですか?」
「…………じゃない」
「え?」
「バカ三上…! だい、じょぶじゃないっつの……!」

 小声で怒鳴られる。


「……良いよって言ったけど……っ限度があるっつーの……! 足、力抜けたし……っ!」


 怒ってるけど。真っ赤で、本当に、可愛いので――――……。
 くす、と笑ってしまうと、キッと睨まれるけれど。

 そのまま、ぎゅ、と抱き締めた。


「――――……先輩、サンタ、可愛すぎて」
「は?」

「……誰にも見せたくなかったって思って、ちょっと怒ってました」
「――――……っ」

「皆が、先輩可愛いって思うとか、全然許せなくて」
「――――……思ってないよ」

「皆言ってたじゃないですか、可愛いって」

「そりゃコスプレしてきたら、言う奴も居るだろうけど。別に……本気じゃないだろうし」
「絶対本気で可愛いって思ってる奴いますよ」
「……誰だよ」

「分かんないけど居ますって」

 抱き締めたまま、むむ、と言い続けてると。
 先輩は、ため息。

「――――……お前は、オレが可愛いって思うの?」
「……ていうか、世界一可愛いサンタだと思ってますけど」

 腕の中の先輩が一瞬黙った後、ププっと笑い出す。


「オレ冗談で言ってる訳じゃ――――……」
「余計おかしいって……」

 クスクス笑う先輩が、ふと、オレを見上げてきて。



「……バカだなー、お前」

 下から、ふ、と緩んだ瞳が見つめてくると思ったら。
 ちゅ、と軽くキスされた。



「……そんな風に可愛いとか言うのは、お前だけだと思うけどね」

 そのキスと、その後のセリフを言ってる、恥ずかしそうな先輩が可愛すぎて。
 

「……うち連れ帰って良いですか?」
「……だめ」

「もう今日、OKして、付き合って下さい。で、サンタ着て、オレに抱かれてくだ……」

 先輩の手が、オレの唇を塞いだ。

「それは、ダメ」
「――――……」

「まだお前、全然ちゃんと考えてないし。オレもまだ。覚悟、決まらないし」
「キスだけは良いの?」

 そう言うと、先輩は少し困ったみたいに、ふ、と息をついた。


「……クリスマスプレゼントな。特別。今日が終わったら忘れろよ」
「――――……」

「つか、あんなキスしていいなんて、言ったつもりなかったし」

 ふー、と息を付きながら。

 オレの腕の中から、体を起こす。


「――――……なんかまだ足、力抜けそう……。お前のキスって、なんか……」
「――――……?」



「なんかほんと強烈……」


 ぐい、と手の甲で唇を拭ってる。


「つか、拭かれるとか、ちょっと嫌なんですけど」
「拭いたんじゃないし」

「……じゃあ何ですか?」
「――――……感覚が……痺れてるみたいな。なんか変だから、こすった」

 ――――……。

 ――――……つか。もう。ほんとに、この人……。


「……あのさあ。もっとしてッて言ってんですか?」

 オレのセリフに、は?と先輩がオレを見上げる。


「言ってないっつの! 立てなくなるだろ、もう無理。それにオレ、このまま、終わりの会、司会なんだから、そろそろ戻っとかないと」

「またその格好で人の間に立つ気ですか?」
「立つ気だよっもう! 変な格好してるみたいな言い方すんなよ、クリスマスにはどこにでもいるサンタじゃん!」

「こんな可愛いの、どこにもいませんよ!!!」
「……っ……!」

 先輩は、真っ赤になって。
 もう、お前、嫌だ、と顔を背ける。


「あーもう、ほんと嫌。ずっとここに居てください」

 ぎゅう、と抱き締めると。
 ぐい、と胸に手を突かれて、離された。


「これ、仕事だから。 だめ」
「仕事って……」

「仕事の一環だろ。社内パーティの司会なんて」
「――――……はぁ。そうですね……」


「はい、行くよ、三上」

 がちゃ、と鍵を開けて。
 先輩は、個室を出てしまった。

 渋々ついて出ると、先輩は鏡の前で、サンタの帽子を直してる。


 はー。
 ……ここまでか。クリスマスの。プレゼント。

 髪を整えてる先輩を見つつ、もう、可愛くしなくていいのにと思いながら、言ったらまたため息をつかれそうなので黙っていると。


「なー三上?」

 先輩が、鏡越しにオレを見ていた。

「はい?」
「……終わったら飲みに行く?」
「え?」
「あんまり飲めなかったから。付き合ってくれる?」
「絶対行きます」

 オレの勢いに、先輩は笑う。

「2人でですよね?」
「……別にどっちでもいいけど」

「2人でお願いします」

 オレがきっぱりそう言うと、先輩は、ぷ、と笑って。


「うん。分かった」


 また、綺麗に笑いながらオレを見上げて。


「戻ろう」

 そう言って、トイレのドアを開ける。


「――――……」



 もうほんと。
 ――――……どんだけ綺麗に笑うかな。
 でもって、その笑顔に、どーしてオレはこんなに弱いのかな。


 ふ、と苦笑いを浮かべながら。
 廊下に出て、オレを待って振り返ってる先輩の隣に、並んだ。




「青木のトナカイは? 可愛かった?」
「……可愛い? あれは、笑わす気でいってるんじゃないんですか?」

「いや、青木は本気で可愛いだろって聞いてたけど」
「……先輩だったら可愛いですけど」

「……まあ。トナカイのが可愛いとオレも思ったけど」
「それは、可愛いの意味が違いますけどね。ちょっと間抜けで可愛いって事でしょ? 先輩にはあっち着てほしかったです」
「何で? トナカイの方が似合いそう?」

「トナカイみたいに間抜けな可愛いじゃなくて、もう、サンタは可愛いしかなかったから。皆に見せたくなかったです」

「――――……お前、ほんと恥ずかしいな……まあいいや。終わったら、またな?」
「はい」


 階段を上がって、皆の居る階に戻り、パーティ会場の食堂のドアを開けた。
 先輩はすぐ青木さんに呼ばれて離れて行った。



 ――――……やっぱり大好きで。
 離したくないな、と思いながら。

 あとで2人になってくれる先輩が嬉しくて。

 色んな奴と話しながらも。
 この会が終わってからのデートの方が楽しみで、幸せで。



 来年のクリスマスは、2人で恋人として過ごせたらいいなあと、願ってしまった。








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