【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

悠里

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◇手を。

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 ふ、と笑むと。先輩は、む、と笑みを引っ込めた。


「ん?……何ですか?」
「――――……だから、その、見つめて笑うのも、会社ではやめろよな」

 そんな言葉に、え、と眉を顰めしまう。

「……なんか、それは無理かも……」

 先輩の瞳、見たら、笑っちゃうと思うんだよな……。


「――――……やっぱ、会社では、目あわすのやめよ……」
「なんでそーなるんすか」


 はー、と背もたれに沈むと。


「……だって、ほんとバレるよ?」
「別にいーですけど」

 見つめ合うと。つい、微笑んでしまって。



「だからそれだよ!」

 ぶに!と頬をいきなり摘ままれて、横に伸ばされる。

「ちょ……」

「もうお前、ほんと、会社でオレの事見ンな。分かった?」
「――――……嘘でしょ?」

「ほんと」
「えー……」

「だめ、むり」

 そのまま、先輩、また窓の下部分に肘ついて、窓の外を眺めてる。

 
 でもなー、見たら絶対笑っちゃうしなー。

 だって、絶対先輩、いつも通りの先輩で、カッコよく仕事しちゃってるんですよね。なんか、オレの前に居る先輩とのギャップに、すげえやられそうだし。
 絶対、瞳ぇ、見ちゃって――――……。
 見つめあったら、笑っちゃうだろうしなあ。



「……三上?」

 窓の方を見てた先輩が、ふ、とこっちを見ていた。

「はい?」
「……何考えてンの?」
「――――……見ちゃいそうだなーって、思ってるだけですよ?」

 覗き込んでくるのが可愛く見えて、ふ、と笑いながら、そう言ったら。


「――――……見てもいーけど……あんま、見つめて笑うなよな?」
「――――……」


 見てもいい、だって。


 かわい。
 ――――……ちゅ、とキスしてしまった。


「み、かみさぁ……」
「――――…一応向こうから人来ないかは見ましたよ。後ろのドアは開いてないし」

「――――……キスしすぎ」
「……もうしないです」

 ほんとかな、みたいな顔でチラ見されて。
 先輩はもう一度、背もたれに頭をついた。


「……お前って、すげー自然にキスするよな……」

 じっとオレを見上げて、苦笑しながらそんな風に言う。


「先輩だからこんなにしてますけどね……」
「どーかなあ……?」

 クスクス笑われて、ますますオレも苦笑い。

 そのまま、2人で背もたれに寄っかかる。



「先輩」
「……ん?」

「……今夜一緒に寝ません?」
「――――……寝ない」


「……別れたらきっと、更に明日会うの大変ですよ?」


 特に先輩が。
 なんか、明日の朝、絶対無視されそうな気がする。

 照れまくってて。

 想像が容易くて、すこし笑ってしまう。


「今日は何もしませんから」
「――――……何も?」

「……はい」

「――――……ん、考える……」
「――――……」


 考えてくれるんだ。
 ふ、と笑んでると。


「――――……すこし、寝て良い?」
「いいですよ」

 あ、やっぱり。
 なんかさっきから、少し眠そうだなって思っていた。


「20分位で起こして?」
「そんな短くていいんですか?」

「ちょっと寝ればすっきりしそう……」

 言いながら、小さく、あくび。


「起きたら、話そうな……?」

 そう言って、瞳を伏せたと思ったら、あっという間に、すう、と寝息。


 ――――……昨日、疲れた、よな……。
 絶対先輩の方が、体の負担、大きいだろうし。


 オレに話しかけながら寝たから、何となくこっち寄りに頭がある。

 ……あ。そーだ。


 さっき脱いだジャケットを、先輩の上からかけて。
 少しだけ、先輩寄りに座って、先輩の手に触れる。

 ジャケットの下で。手だけ、軽く触れさせて。
 オレも、寝たフリ。

 全然人もとおんねーし。
 別にこれ位見られても、問題ないだろ。



 触れてる指が、愛しすぎて。


 ――――……少し下にある、サラサラの髪の毛。

 もっと、触りたい。キスしたい。抱き締めたいけど。


 ――――……我慢だな……。
 

 軽く息を付いて、目をつむってる内に。
 いつの間にか、うとうとしていた。
 




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