上 下
125 / 274

◇新幹線で

しおりを挟む



 帰りも結局空いてたので、自由席。

「先輩、こっち座りましょう」
「んー」

 一番端の席。

 行きは向かい合ってる席に座ったけど。

「隣でいいでしょ?」
「ん」

 窓際に先輩、通路側にオレ。上に荷物を乗せて、席に座る。

 新幹線が走り出して、何となく落ち着いた。


「オレ、行きは――――……ほんと、どうしようかと思ってたんですけど」
「うん?」

 窓から外を眺めてた先輩が、ふい、とオレを見上げてくる。

「先輩と、1泊とか。ほんと無理って思ってました」
「あー……うん、だよね」

 先輩は、苦笑いしながら、オレから目を逸らして。
 また窓から外を眺めながら。


「……お前と、こんな感じになるとか――――……」
「――――……」


「……かけらも思わなかった」
「――――……ですよね」

「うん……」


 先輩、こっちを見ないで、黙ってる。


「――――……あのさ、三上」
「はい?」

「……さっきさ」

 言ったまま、先輩は黙る。
 しばらくしてから、ふ、とオレを振り返って、まっすぐ見つめてくる。

 隣だから、超至近距離で。



「……迫る期間、とか言ってたけどさ」
「――――……」


「……よく、考えてからに、しろよな?」


 また言ってる――――……そうも思ったんだけど。
 何だかあまりにまっすぐな視線でオレを見つめるから。


「……はい」

 とだけ、頷いた。
 すると、先輩は、うん、と微笑んで。


「それで、普通にしようって決めるなら、オレ、ちゃんと受けるから大丈夫だからな?」

 何か、まるで仕事の事でも話すみたいに、本当に普通の顔でそんな事、言う。

 でも、気づいてねーのかな……。


 ちゃんと受けるって。
 完全に、受け身。


 先輩からは、そう言ってくることは、ないんだって事、だよな。


 オレがやっぱりやめたいって言ったら、先輩は、受け入れる。
 何だかな。


 自分のセリフの意味。
 きっと、気づいて無いんだろうな。


 ――――……まあいいや。
 オレがやめたいっていう可能性、全くないから。


 言いたい事言い終えたら気が済んだみたいで、ふ、と笑んで、また流れていく景色を見てる先輩。

 ふ、と周りを見回して。
 誰も居ない、というか、前方にいくつか後頭部が見えるだけ。


 確認してすぐ、先輩の腕を掴んで、オレの方に引いた。


「え」

 びっくりした顔をしてる先輩の、唇に、キスして。
 何秒か、そのまま。


「――――……大丈夫、誰も見えてないから」
「……っ」

 唇を握った手で口を押えて。
 赤くなって、何も言わない。


「――――……っあのさ、これ会社でやったら……」
「……やったら?」


「っもう口きかないから」

 うわ。……子供かー……。
 出てきたことばが、可愛くて笑ってしまう。
 

「嫌ですよ――――……口きかないとか。もう二度と嫌ですからね」

 最後、念を押して笑いながら言うと、先輩は、ぐっと黙って。 


「――――……もうあんな事はしないよ」

 それを聞いて、オレが、ふ、と笑うと、先輩はふー、と息を付きながら。


「でも会社で、今のしたら――――…… しばらくは、無視するから」
「ええっ! 今しないって言ったじゃないですか」

「今のしたらだって言ってるだろ、もう! 馬鹿三上!」

 そこで、ぷ、と笑って、見つめ合う。



 なんか、こんなやりとりが楽しくて、笑ってしまう。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前後からの激しめ前立腺責め!

ミクリ21 (新)
BL
前立腺責め。

笑って誤魔化してるうちに溜め込んでしまう人

こじらせた処女
BL
颯(はやて)(27)×榊(さかき)(24) おねしょが治らない榊の余裕が無くなっていく話。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

発禁状態異常と親友と

ミツミチ
BL
どエロい状態異常をかけられた身体を親友におねだりして慰めてもらう話

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

いつの間にか後輩に外堀を埋められていました

BL
2×××年。同性婚が認められて10年が経った現在。 後輩からいきなりプロポーズをされて....? あれ、俺たち付き合ってなかったよね? わんこ(を装った狼)イケメン×お人よし無自覚美人 続編更新中! 結婚して五年後のお話です。 妊娠、出産、育児。たくさん悩んでぶつかって、成長していく様子を見届けていただけたらと思います!

処理中です...