上 下
115 / 274

side*陽斗 1

しおりを挟む
 急に。
 三上が、キス、してきた。



「――――……み、か……っ」


 何で、キスすることに、なったかと言うと……??



◇ ◇ ◇ ◇



 スイーツを食べた後、少し京都の町を歩いてお土産とかを買いながら。
 三上が予約してくれて、入ったのは、個室の料理屋さんだった。
 注文はタッチパネルでしてくださいと言って、店員がドアを閉めて、出て行った。

「こんな個室の料理屋さんもあるんだね」
「夜は居酒屋みたいですよ」
「へー」

 ふと、部屋を見回して。

「ヤバい事しても、バレなそう……」

 と、思った事を、素直に言ってしまった。

 だって個室とかって。
 ……しかも、今の三上とオレで、個室とか。
 なんかもう、そっちの事しか、考えられないというか。

 口にしてしまってから、三上が固まった事に気付いて。
 あれ? なんか固まってる……と、三上に視線を向けると。


「……別にオレ、ヤバい事しようとしたわけじゃないですよ」

 と、三上が言う。


「え。あ、分かってる。けど……」

「――――……さっき、話してる途中で、先輩――――……陽斗さんが、目立つからストップって言ったでしょ?」



 あ。……陽斗さんに、変わった。

 スイッチが、切りかわるみたいに。
 三上の視線が、変わる。


 さっきオレ、咄嗟に、言ってしまった。


 三上がオレを見続けて、それに気づく人が居たら、三上がオレを好きな事に気付く人は居るかも、と言った時。

 オレは、その三上の言葉に対して。

 それを見つめ返すオレを見られたら、「オレのもバレる」なんて。言ってしまった。


 ……もうなんか。
 そりゃ昨日も、テーマパークのトイレで、好きだとは言ったけど。
 どんな意味か考えるとか言ったけど。

 昨夜色んな事、三上として。抱き合って、眠ったりして。
 ……オレが三上を好きなのは、もう完全に、そういう意味な気がする。
 
 出来る訳ないじゃん、ただの後輩と。いくらマンツーマンの可愛い後輩だったとしたって。……今まで可愛がりたくても可愛がることが出来ずに来たけど…… その気持ちがすごく盛り上がったとしたって。あんな事、ただの可愛い後輩と出来るわけがない。

 もう出来た時点で、もう気持ちは決まったも同然だって、もう分かってる。



 だから――――…… 陽斗さん、と呼ぶ、三上のこの視線は。
 物凄く、心の奥に、突き刺さる気が、する。




「これから新幹線だし、東京に帰ってご飯食べるにしても、知り合いがいるかもしれないし――――……昼食べながらゆっくり話したいって思っただけです」

「――――……うん。わか、てる」


「なのに何で、ヤバいこと、とか言うんですか?」

 三上が、はー、とため息をつく。


「そーいうこと言われると……そっちを考えちゃうんですけど」
「…………ごめん、てば」


 うぅ。やらしいことばっかり、考えてるみたいで、
 すごく恥ずかしくなりながら、俯くと。

 三上が、かたん、と椅子を引いて立ち上がった。


「陽斗さん、ちょっとこっち、来て」

 座ってた手を引かれて、三上の手に任せてると、背をドアに押し付けられる。
 向こうからは、一瞬、開かない状態。


 三上の手が、腰と、背に触れる。
 もう、三上を見上げるしか、ない体勢。


「……あのさ、陽斗さん」
「――――……うん」

「……オレ、何度もあんたに好きって言ってるし。陽斗さんも……そんなような事言ってくれて。でも、意味を考えようっても言ってるし――――……それでも、昨日、あんな風にしちゃって……」
「……うん」

「――――……正直、オレは、もう、陽斗さんと、付き合いたい」
「――――……」


「……意味なんか、もう、昨日の時点で分かってたし」
「――――……」


「好きじゃなきゃ、しない」

 なんかもう。
 三上のまっすぐな視線と言葉って――――……。

 
 もう、心の奥の奥の奥の奥の……一番奥まで、入ってきてる気がして。
 胸が締め付けられるみたいに、痛い。



「……陽斗さんも、オレが好き……?」

「――――……うん……好きじゃなきゃ……オレだって、しない……」



 けど、と続けようとした瞬間。





 三上の唇が、重なってきて――――……すぐに深くなった。








しおりを挟む
感想 119

あなたにおすすめの小説

腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います

たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか? そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。 ほのぼのまったり進行です。 他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・不定期

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...