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◇結婚願望

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 きなこのパフェ。
 ……美味しいのかな。
 白玉とアイスときなこ、かな? 

 先輩がめちゃくちゃ笑顔で食べてるのを見てると、ふ、と笑ってしまう。
 オレは、今日はわらび餅を頼んでみた。先輩も食べたいと言ってたし。


 口に入れた瞬間。
 柔らかくて溶ける感じに、ちょっと驚く。

「先輩、これ、めっちゃうまいですよ」
「え、マジで? 食べたい」

「ん。いいですよ。今食べます?」
「うん」

 先輩の口に、ぱく、と運んで食べさせる。

 ――――……オレの手から、食べてくれるの。
 なんか、可愛い、なあ。

 なんてオレが思ってるのは、先輩には内緒。


 瞬間、嬉しそうにふわ、と笑う。



「……溶ける」
「でしょ。これはうまい」

「生クリームとかアイスより、そういう方が好きなんだね」
「どうだろ。そっちも最初の1口2口は美味いですよ」

「最後まで美味しいけどね。……まあ。いーけど。三上が残したらオレが食べるから」

 ぷぷと笑いながら先輩が言うので、「太りますよ?」と言ったら。

「オレ太った事はないけど…… 太るのかなあ?」
「さあ…… 先輩が太った姿、想像できないですけど」
「しなくていーって」

 苦笑いしながらも、もぐもぐスイーツを食べすすめてる、先輩。


「ていうか、こんなスイーツ普段は食べないからね」
「そうなんですか?」

「1人でこんな店入らないし。仕事帰りに1人で買って家で食べるってのもなんか無いし。たまにコンビニでアイス買う位かなあ」
「そうなんですね……」

 ふーん。……わりと会社とマンションの近くに、色んなカフェとかあるけどな。行かないんだ。


「あれ。……そういえば、先輩の家って、どこなんですか?」

 
 2年も一緒に過ごしてたのに、そんな事も、知らない。
 ちょっと複雑になりながら聞くと。

「オレ三上ん家は知ってるよ」
「ん?」

「志樹が言ってたから。夕飯食べて会社に帰る時、教えてもらった」
「あ、そうなんですか」

「オレのマンションは、そこから駅と反対方向に向かって、5分位かなー」
「え」

「ん?」

 口にアイスを運んで、スプーンを咥えながら、先輩がオレを見上げる。


「そんなに近いんですか?」
「ん。 ていうか、入社2年目に、会社に近くなりたくて引っ越したから。あそこら辺家賃高いから、1Kでほんと狭いけど。寝に帰るだけだし」

「――――……」


 なんか。そんなに先輩と近くに居たんだと思うと。
 ……そんな事で嬉しい。


「お前のマンション、外観すごいよな。高そう」
「あそこ、親父のマンションなので……家賃払ってないです。ていうか、オレ名義になってます」
「……金持ち、ずるいなー」

 言いながら、クスクス笑ってる。

「部屋広いの?」
「んー 3LDKですね」
「使わなくない? そんなに部屋」
「物無い部屋もありますけど。結婚してもそこ住めば?とか言われて貰いましたけど」
「……ふうん」


 あ。
 なんかちょっと、間が空いた。


「――――……あの」
「……んー?」

 ただ間延びしてるだけなら、いいんだけど。
 ……なんか、声のトーンも気になる。

「あの……違いますよ? 親父がそう言ったってだけで」
「……ふーん」

「別にオレ、結婚願望とか無いですし」
「……そう?」

「ほんと全然無いですし。ていうか、今は余計ないですし」
「……ふうん……」


「――――……」


 オレから目は逸らしたまま、スプーンでパフェをすくって口に入れて。
 また、そのままパフェを見つめてるし。


「先輩? ……こっち見てくださいよ」
「――――……」


 黙ったまま、先輩は、やっとゆっくりと、こっちを見上げて。




 ――――……オレが何かを言おうとした瞬間。

 クスクス、笑い出した。




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