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◇恥ずかしいの基準

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 風情のある神社を一緒に歩き終えて、先輩と外に出る。


「なんか神社とかって、やっぱり神聖な感じするよなあ。外にでると、なんか空気が違う」
「昨日今日ですごい回りましたもんね。 良い事あるんじゃないですか?」
「うん。だな」

 にこにこ笑ってる先輩に、ふ、と微笑んでしまう。


 一昨日、昨日、今日。

 たった3日で、こんなに関係が変わった人って、初めてかも。
 ……しかも、最初は、全然好きじゃないと、思っていた人と。


 まあ今となっては、その時も、大分惹かれてたんだろうなと、思うけど。


「先輩、きな粉の店、行きますか?」
「うん、いこ――――……って、三上はきな粉スイーツでいいの?」

 そう聞いてくる先輩に、可笑しくなってしまう。

「いいですよ。オレは何でも……ていうか、あんなに嬉しそうに決めといて、オレがダメって言ったらどうするんですか?」

「あー……うん、どうしようかなー」
「そうですよね」

 クスクス笑ってしまうと、先輩、んー、と苦笑い。


「いいですよ、オレはスイーツに関してはほんとにどこでも。先輩が幸せそうに食べてくれれば」

「――――……またそういうこと、軽く言う」

 先輩のそんな言葉に、苦笑いしていると。


「ほんと、三上、タラシ」
「ていうか、先輩にしか言ってないですよ」
「だからそれもだって。ほんとタラシ」

 呆れたように笑う先輩に、オレも苦笑い。


 んな事言っても、ほんとに思うんだから、仕方ない。


 先輩の目当ての店は神社を出て5分位の所にあった。
 まだ開店したてらしく、またしても人が居ないスイーツの店に、男2人で。しかも今日はスーツで入る。

 きっと、変に目立つよなー、オレ達。


 また雰囲気の良い、和風な店。
 席に着いて、なんだかすごく落ち着く内装を見回していると。


「こういう店好き?」
「うん。そうですね。すごく感じが良いし」
「オレも好き。京都って、いいなー」

 そうですね、と言いながら、これまたすごくオシャレなメニューを開く。

「和紙みたいな素材でできてますね、このメニュー」

「いいね。……家の近くにあったら通うかも」
「だったらオレも一緒に通いますけど」

 そう言ったら、先輩、ぷぷ、と笑った。

「三上そんなにスイーツ食べないじゃん」
「オレは先輩と一緒に居たいから通うんですよ」

「――――……」


 メニューから完全に顔を上げて、先輩はじっとオレを見て。


「……なんか。三上って」
「はい?」

「……恥ずかしいよな」


 そんな台詞に、苦笑いしか浮かばない。


 オレが恥ずかしい奴なのか、それを言われた先輩が恥ずかしいのか、どっちだ?と一瞬思ったけれど。
 はー、と、ため息を付きながら、メニューで隠れたので、多分先輩が恥ずかしいんだろうなと思って。


「先輩、隠れないでください。ていうか、メニュー見せて」
「いやだ。お前、恥ずかしいから」


 ……つか、オレの今のって、そんな恥ずかしい?

 オレ、今一緒に居たいからって言っただけだけど。
 ――――……そんな恥ずかしいかな。


 先輩がたまにぶち込んでくる、色んなセリフのが、よっぽど恥ずかしいと思うんだけど。

 基準がよく分かんねーな。


 と思いながらも。
 なんか、そんなのも、面白くて。

 この人がすごい好きだなと思ってしまうんだけど。


 ……つか、なんでも好きなんだろうな、オレ。
 なんかもはや、そんな風に、諦めが入ってくる。


「……ていうか、オレもう、食べるの決まってんだよ……」

 ああ、そういえば。パンフレットにのってるの食べようとしてたよな。
 仕方なさそうにやっと、メニューをオレに向けて。

 ちら、とオレを見る。目が合うと、む、と固まってる。


「もうこっち見んな。 メニュー見て、早く決めて」
「何ですか、それ」

 
 可笑しくてしょうがないけど。
 なんか可愛いので。

 言う事を聞いてあげる事にして、メニューに視線を落とした。






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