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◇この先…?

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 朝。部屋が明るくて目が覚めた。
 と同時に、先輩がまだ腕の中に居るのに気づく。


 ――――……キレイな顔。

 嫌いと思おうとしてすら、キレイだと思ってしまっていた。


 それが、腕の中にある。
 ……ものすごい、奇跡みたいだな。


 ……抱かれて、泣いてる顔は、可愛かった。
 ――――……たまに怒って、困って、むくれる顔も。
 恥ずかしがって、赤くなるのも。言葉が出なくなるのも。

 普段あんなに仕事が出来て、流暢に話して、頼れる、カッコいい人なのに。
 
 ギャップがなあ――――……。
 ……オレの前でだけ、こんななのかなあと思うと。

 可愛くてしょうがない。

 ……この先どうしようか。
 会社での先輩後輩の立場は変えないし、そこの接し方は今までのまま。
 それは、もう、確定。


 あとは。
 ……今まで一切関わってこなかった、プライベート。

 先輩は、これからオレと、絡む気あるのかな。
 ……なんとなくありそうだけど。
 
 昨日オレは、どんな好きか考える、とか言ったけど。
 ――――……最後まで抱いて、もう確信してる。
 
 そういう意味で好きで、そういう意味で、抱きたいし。

 男同士だけど、恋人になれるなら。
 ……めちゃくちゃ、愛したい……。

 ――――……って、思うんだけど……。
 ……きっと、そう簡単には、いかないよなあ。

 オレもだけど、先輩も今までは女の子だけだし。


 もし今のこの状況の始まりが――――……。

 いつもの職場で、仲良くて、お互いをよく知って好きになって、こういうコトをしたなら、すぐ恋人も視野に入るんだろうけど。


 ……なんか今のこれを冷静に考えると。

 旅先で。2人きりで、酒飲んで。先輩が悩み事打ち明けてきたりして。
 更に、非日常な京都や大阪の地で、観光して浮かれて。

 良い雰囲気の旅館で、一緒に、かなり良い雰囲気の部屋風呂に入って。

 しかも今までお互い話したくても話せなかったっていう、盛り上がる要素満載な。……バカ兄貴のせいで。

 何か色々な、普段とは違うイレギュラーな要素が山盛りの状態で、こんな風になってしまった。

 これは――――……日常生活に戻って、はっと我に返った時。
 どんな形になるんだろう。

 なんとなく――――……答えを出すのは、この地じゃなくて、向こうに帰って、日常の中での方が、良い気はしてしまう。

 ……っても、それはあくまで、先輩側の話で。


 ――――……オレはもともと憧れて、こだわってた先輩で。
 こうなって、あのこだわりが全部、心の底では好きだったからだと。そしてそれが叶わないからあんなに、モヤモヤしていたんだって、もう気づいてるし……。

 ……好きじゃなきゃ、男を抱くなんて絶対無理だし。
 もう、言い訳も出来ず、そういう意味で好き。

 でも、先輩からしたら――――……完全にちゃんとした男なのに。

 オレに抱かれてくれたけど。
 ――――……それ、この旅が終わって、日常に帰ったら。もしかしたら今日、東京の自分の家に帰った瞬間。後悔しないとも、限らないし。
 ――――……ていうかその可能性、大いにあると思うし。

 だから本当なら。
 こういうのは……ここに居る間だけで。
 あとは、普通の先輩後輩に戻ってあげた方がいいよな……。

 それでもその後絡む中で、オレを選んでくれたら。
 ――――……オレは絶対恋人になりたいけど。

 そのまま、ずっと先輩の隣に居たいけど。
 ……誰も、先輩に近付かせずに。オレだけのものに、したいけど。


 延々そんなような事を考えていたら。


 
「三上……?」

 オレは、先輩から視線を逸らして延々考えていたみたいで。


 声にふと視線を戻すと、先輩の瞳がいつのまにか開いていた。
 完全に寝てると思ってたので、ドキ、として。

「おはよう、ございます」

 そう言ったら。


「うん。おはよー……」


 ふ、と笑って。
 そろそろ伸びてきた手が、オレの眉間に触れた。


「何……しかめっつらして」

 クスクス笑って、そこをほぐすみたいに、すりすりしてくる。



 ――――……可愛すぎて無理。



 むぎゅ、と抱き締めてしまった。


 



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