上 下
92 / 273

side*陽斗 2※

しおりを挟む

 
 布団に、組み敷かれる。
 と言っても、まだ完全に横にはなっていない。

 枕が2つ並んで置いてあって。
 オレは、それを背後に、少し斜めに、倒されて。

 三上が、膝をついた形で、上に居る。

 どっくんどっくん。というのか。
 ばっくんばっくん。というのか。

 し、心臓が、壊れる。
 それか、血管が、爆発する。

 こんなに激しい音がしてて、大丈夫なのかなと、ただ、斜め上の三上を見上げていると。 三上は、布団に来る時に持ってきたものを、オレに見せた。


「……あとでこれ、使いますね」

 ひとつはゴム。それは、見せる訳ではなくて、箱から出されて置かれただけ。もうひとつは、何かピンクの派手な入れ物。

「……何それ?」

 なんか、普通に出してるつもりの、声が上擦っている気がする。

 つか、もうオレ、しっかりしろよっっ!

 こういうシチュエーションなんて、上下が逆なだけで結構経験してきたじゃんか! そうだ、よく考えたら、何もしなくていいんだ、してもらうんだから、楽なんじゃないかな、うん。緊張しないで、なんならただ寝てれば……。

 とか、とんでもないマグロ宣言が自分から出そうになった所で、いや違うだろ、と自分を止める。

 ああでも、一体どうしたら。


「これね、ローション」
「――――……ろー……」

 頭になかった単語に首を傾げて言いかけた瞬間に、意味がはっきり分かって、言うのを止めた。けれど時すでに遅く、ボボッと血が一気に顔に集まった。


「……っ!!」


 っそれもさっき買ったの?
 ……ていうか、そっか、使わないと、ダメか。
 そりゃそうだよな、ていうか、何でオレは考えなかった?

 ていうか、そんな普通の顔して、そんな物見せんなよー!


 1ミリも動けないまま、目の前のローションを凝視したまま、心の中で叫んでいると。

 三上が不意に、手で口元隠しながら、ぷっと笑った。

「……っっ」

 何で笑うんだよ!! もう!!
 んなもん急に出してくるから悪いんじゃん……!! 

 言ってから出してよ、そしたら、少し心構えしてから、目に映せるのに!!
 


「あー……ほんと、可愛い」

 三上はローションの後ろの説明書きを見てから、オレに目を向けた。


「これ、舐めても大丈夫ですって」
「――――……」

 なめ。ても…………。


「先輩、色んなとこ、舐めてもいいですか?」


 ………待って。
 それの意味するのは。

 そのローションを塗ってから、さらにそこを、舐めるという、こと?


 色んなとこって、どこ…………。



「~~~~っ もう、いやだ、三上」
「っと……」

 もう、三上の下に大人しく居る事が嫌になって、逃れようとした所を、何だか軽く押さえつけられてしまった。

「――――……っっっ」


 声にならない叫びとともに、三上を睨むと。


「……陽斗さん」

 クスクス笑った三上に、掴まれた腕をもとの位置に戻されて、布団に軽く押し付けられる。


「ごめん、なんか可愛くてつい」

 そんな事を言いながら、また完全に三上の下に入れられて、さっきより斜めに布団に近付いてしまったオレの、首筋に顔を埋めてくる。

 くすぐったすぎ……。

 きつく瞳を閉じて、もはや逃げるために動こうと思うけど、何だか三上の体と手でうまく押さえつけられてて、全然逃げれない。


「――――……初めてだからさ。 ちょっとこれの助け借りて良いです?」
「……っ……」

「……色んなとこに、これ使っても良い?」
「――――……っ」

 ぷるぷる、首を横に振る事しかできない。
 恥ずかしすぎて、何の言葉も浮かばない。


「使った方が、気持ちいいと思うから」

 なんか、舐めるようにゆっくりと、頬にキスされる。
 ぞく、と腰に震えが走る。


「……っ……今まで、使った事、あんの?」
「無いですけど――――……多分湿り気あった方が、感じやすくなると思うんだよね。でもノーマルぽくないから、さすがに聞いてからにしようかなと思って……」

 喋りながら、ちゅ、と音を立てながら、首筋を辿って、降りていく。

「ごめんね、意地悪しようと思って見せた訳じゃないんだけど」

 三上は、そこまで言ってから、くっ、と笑う。


「あんまり真っ赤になるから可愛すぎて、聞き方意地悪になってたかも」


 言いながら、ぢゅ、と吸ってくる。
 鎖骨当たりに刺激が走って、びく、と体が震える。



 なんか。始める前から。気が遠くなりそう。


 



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

「誕生日前日に世界が始まる」

悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です) 凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^ ほっこり読んでいただけたら♡ 幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡ →書きたくなって番外編に少し続けました。

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

処理中です...