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◇ずっと居たい
しおりを挟む温泉に浸かって、先輩は、オレから顔を背けたまま、外を眺めてる。
隣から、先輩を呼んでみる。
「あのー……陽斗さん?」
「……知らない」
なんか顔、絶対膨らんでる。
……なんか。顔膨らませるとか。絶対、幼くなってる。
多分、恥ずかしすぎて、対処できてないんだろうなあ。
――――……あの後、キスしまくって。それから、風呂場に連れ込んだ。
洗ってあげる、なんて言って、髪を洗ってあげた所までは良かったけど。
体を洗い始めたら、なんかもう敏感になりすぎてるのか、普通に洗っているだけでもピクピクするもんだから、もう我慢できなくなって。
反応してた先輩に触れてしまった。
キスしてる時から反応してたし、1回すっきりしておきましょうなんて言って、少し嫌がってる先輩に、ちょっと無理無理触れた。
でも、嫌がってると言っても、待って、と少し言った程度で。
恥ずかしいからだろうなと思う程度だったから、石鹸つけてぬるぬるしてるのを良い事に、オレのと合わせて、昨日やったように、一緒に。
お互い、かなりあっという間にイッてしまって。
うわー、ヤバいなこれ。興奮しすぎで、早すぎた……。
とりあえず一回終わらせといて良かった。
なんて思っていたら。
先輩が、離して、と言ってオレから離れて。
無言のまま、シャワーで泡ごと全部流して、そのまま浴槽に沈み込んでしまったのだった。
オレは先輩を洗ってあげてただけで、まだ何も洗ってなかったので、髪も体も洗ってから遅れて浴槽に入ったのだけれど。
ぷい、とそっぽを向いたまま。全然こっちを見てくれない。
「……陽斗さん?」
「…………やだ」
肩どころか首までつかって、動かない。
……笑っちゃうくらい、可愛いんだけど。
怒ってんのかなあ。
まあ確かに、いや、待って、とか言ってたけど。
……可愛くて、聞けなかった。
「怒ってますか?」
「――――……」
無言。動かない。
「陽斗さん、怒ってるんですか?」
「――――……」
先輩は、小さく、首を横に振ってる。
ああ。怒ってる訳じゃないんだな。
てことは。
「じゃあこっち、見て?」
腕を掴んで、引き寄せる。
オレをまっすぐ見上げた先輩は、真っ赤で。
「……恥ずかしかったです?」
「――――……」
また眉を寄せて、む、と口を閉じた。
可愛くて見えて、ちゅ、と口づける。
「――――……っ」
じっと見つめてくる先輩を、見下ろして。
「ごめんね、反応してたし――――…… 一回出しちゃった方が、楽かなーと思って」
「…………っっ」
あ、またもっと赤くなった。
「……気持ちよくなかった?」
「…………っ……分かってるくせに、聞くなよ」
「良かったって事ですか?」
「――――……っオレ、三上、やだ」
あ。今度は怒ったかも。
だめだな、可愛くて。
笑ってしまいながら聞いちゃうから、ムッとさせちまうのかも。
「ごめん、怒んないで?」
笑いを引っ込めて、先輩の頬に触れてみると。
先輩は、少し困った顔をして、俯く。
「……だから、オレ……怒ってる訳じゃ」
「そっか」
その頬にキスすると、先輩は、ふと、笑う。
……ほんと、可愛い。
そっと離して、先輩の隣に座って、月を見上げる。
「――――……今日も綺麗ですよね」
「……ん」
「もう明日は帰らなきゃなんですよね」
「……うん。そうだな」
そのまま少し沈黙。
「オレここに、ずっと、居たいかも……」
この人と一緒に。
「…………ん」
先輩、静かに頷いて。くす、と笑った。
「……そーだなぁ……分かる。ここ、いいよなー?」
そんな風に言ってる。
ちょっと違うんだよなーと、少しモヤモヤして。
オレは、先輩に手を伸ばして、その頬に触れた。
「オレは、陽斗さんと居たいって言ってるんだけど、分かってますか?」
「――――……」
先輩は、触れてる指に、少しくすぐったそうにしながら。
「……あのさ、三上さ」
「ん?」
「……普通に陽斗さんて呼ぶのやめて」
「――――……」
「…………いちいち、心臓が……」
少し俯きながら、そんな風に言う。
質問の答えの方は返って来てないけど、なんかもう。
はー。
……可愛いなあ、もう。
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