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◇照れすぎ

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 もう、いかにもドキドキしてますって顔で。
 オレに近付いてきて。


「――――……」

 手。服にかかった。
 と思ったら。


 ムードもへったくれもなく、すぽっとめくられて頭抜かれて。
 なんかもう。すぽーん、という感じで、服、奪い取られた。

 もう、脱がされたとか、なんかそういう色っぽい感じじゃなくて。

 あっという間に、奪われた。


 ――――……ぷっ、と、吹きだしてしまう。


「ちょ、待って…………」


 ダメだもう、無理。我慢できる奴なんか、居るかっつーの。


「……ほんと、あの――――……やめてもらっていいですか……」


 クックックッ。笑いすぎて、涙まで出てきた。

 もう、無理。



「さっきオレがどう脱がせたか、覚えてます?」
「……っ覚えてるけどっ」

 オレは、キスしながら。
 ゆっくり、触れながら、そっと脱がせたはず。

 普通そうじゃねえの?
 

「……っ無理」
「……ね、女の子脱がす時も、こうやるんですか」

 思わず気になってついつい聞いてしまうと。
 奪われた服を、先輩はオレに押し付けてきた。


「……っ女の子に今みたいにやるわけないし」

 すごい嫌そうに言ってるのを見てたら、ようやく、笑いを収められてきた。
 そろそろほんとに怒りそう。


 いやでもさ。
 これ笑ったって、オレが悪いんじゃない。

 何なんだ、もう……。
 
 
「……ね、陽斗さん」

 オレは、押し付けられた服をカゴに落としてから、先輩に向き直った。


「……下は? 脱がせてくれないんですか?」
「――――……っ」

「ちょっとはムードありで、やってほしいなぁ……?」

 そう言うと。
 ムッとしてた先輩は、一気に真っ赤になって。


 それから、ぐ、と唇をかんだ。
 ……なんか、意地になったみたいな気がする。

「――――……やる」


 今度は、ゆっくりと。
 ズボンのウエスト部分に触れてくる。


「――――……」


 俯いて。下をずっと見たまま固まる。


「……陽斗さん?」


 声をかけたら、びく、と手が揺れる。


「なんでそこで止まってンの?」
「これ……ズボンだけ、ぬがす?」

「――――……っ……」



 かろうじて堪えなかったらオレ、絶対笑ってる。

 ダメだ、もう、可愛くて。



「――――……あのさ。オレ、やってもいい?」
「……」


 なんかちょっとホッとした顔の先輩。
 ああ、ほんと。

 可愛いんだけど。


 ちゅ、と口づけて。
 自然と瞳を伏せた先輩の顔を見つめる。


 かわいーなー……。

 服、脱がせるとか。
 ……女の子とか相手なら、絶対普通にちゃんとやってたんだろうに。

 オレには、できねーんだな。
 男だから?? 本当に、照れすぎ。


 何でそんなに恥ずかしいんだろ……。


 多分、なすが儘にされてんのが悔しくて。オレにも恥ずかしがらせたくて、自分がやるとか、言い出したんだろうと思うけど。


 照れすぎて、あんな風にしかできないとか。
 ほんと、どーいう事……。




「――――……ん……」

 少しキスを深くして、上向かせている間に、先輩のズボンと下着、するりと滑らせた。膝の所まで滑らせてしまえば、すとん、と足首の所まで落ちた。

 全部、脱がされた事を知ってか、先輩が、キスされながら、もぞ、と動いてる。


「……は……んン」

 空気を吸いながらキスに応えて、声が漏れてくる。



「……み、かみも……」
「……ん? 何……?」

 外された舌をぺろ、と舐めながら、聞いたら。


「――――……三上も、脱いでよ……」


 そんな風に言われて。
 1人で裸なの、恥ずかしいんだなーと思うと。


 ああもうなんか。
 究極、可愛い。




「……陽斗さん、ズボンと下着下げて」
「…………」

「早く」

 言って、そのまま口づけていると。
 背中に抱き付いてた手が、する、と滑って来た。

 ゆっくり、中に指が入ってきて。
 そのまま、下に降ろされて行く。うまく脚を動かして、服を下に落とした。



「――――……ありがと、陽斗さん」



 そう言って、少しだけキスを外して見下ろすと。
 何だか恥ずかしそうな顔で。



 でも、何も言わず、引き寄せられるみたいに、オレにキスしてきた。











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