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◇マジですか?

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 オレだって、覚えててほしいから、あんまり飲まないで、とか言ったんだけど。

 …………なんで先輩が言うと、そんなに可愛いのかな……。

 
 言い方、だよな。

 初めてした時の事、オレしか覚えてないとか、なんか悲しい
 ……って。

 初めてしたって。
 ……初めてしたって。何それ。

 ……またなんか、ものすごい濁した言い方で。

 何もはっきり言わないのに、最大限な感じで煽ってくるのは。
 ……もはや才能なんじゃねえかな。


 個室で、2人席。目の前近い。
 思わず、手を伸ばして、先輩の頬に触れてしまった。


「え」

 キレイな顔が。きょとん、とした後。
 かあっと赤くなった。

 ……思うまま。というか。
 そうなるかなと思って、触ったけど。


 ――――……は。
 ダメだな。もう可愛くてしょーがないレベルに来てしまった。
 ってもう昨日からずっとか……。


 そのまま手を引っ込めると、先輩は、む、とした。

「何で、今触った?」
「――――……何でって、聞かれると……」


 何でって……? 


「触りたかったから、ですね」
「…………っ」

 さらにちょっとムッとした顔してる。

「……嫌でした?」
「触るのは嫌じゃない、けど……」

「けど?」


「……ほんと、自然とそういうことする、手慣れてる感が、ムカつく」

「――――……」


 手慣れてる感、だって。
 思わず、くす、と笑ってしまう。


「何で笑うんだよ、人がムカつくって……」

「失礼します」

 先輩が言いかけた時、個室の引き戸が開いて、料理が運ばれてきた。先輩は、黙ってしまった。


「ごゆっくりどうぞ」

 そんな声と共に戸が閉まり、少し沈黙。


「――――……オレが手慣れてるとむかつくんだと思ったら、可愛いなと思っちゃっただけですよ」
「……っだから、そういうのも――――…… もう、いいや」

 途中で言うのをやめて、先輩は、箸を持ち直した。
 小皿にサラダを取って、「ん」と渡してくる。

「ありがとうございます」
「うん」

 頷いて、自分の分を皿に取り分けてる先輩。


 ――――……なんか。
 ほんとに。

 不思議。



 オレ、今日この人に、ほんとに触っていいのかな。

 絶対、ゲイじゃないし。
 ――――……男にされるとか。いいのかな。

 良いって、言ってたけど。
 先輩、される方だし。 多分、する方よりダメージが大きそう。
 
 あとになって後悔するとしたら、するオレより、される先輩、だよな。


「あのさぁ、三上」
「はい?」

「……さっき、最終決定って……言ったんだけど、さ」
「――――……」

 あ、やっぱり、嫌、かな?
 少し覚悟しながら、はい、と返事をしたら。


「……男にするのって、ハードル、すげえ高いだろ?」
「…………え?」

 ん? こっちのこと?


「だって、男に興味なかった三上が、男に触るって、すげえきつくない?」
「――――……」


 やっぱり、オレの事か。

 ……え、オレがきついの? 
 先輩は、される方より、する方がきついと思ってるってことか?

 え、どう考えたって、逆じゃねえ?

 する方は、したくなきゃできねえし。
 したいからするんだし。

 しかも、男の立場でやるわけだから、男としての立場みたいなものは、ある程度守れてしまうけど。

 …………される方は、そうじゃない。のに。


 
「だからさ、オレの方は最終でいいけど、三上は、まだ考えていいよ、やっぱり無理ってなっても良いから」


「――――……マジですか……」


 はー、と、がっくり、うなだれたオレ。


「え。……三上??」

 なんか不思議そうな声がして、なんかきっと、下を向いてるオレの顔を見ようとしているような気が、してるけど。


 だって。

 ……オレ、何回、したいって、伝えたの。
 好きだっても、言ったし。

 触りたいっても、言ったし。

 何回伝えてんの。




 顔をあげて、じっと先輩を見つめてみる。



「……な、に??」


 狼狽えるのが。
 ――――……可愛い……し。



 はー。もう。



 何回言えば、分かってくれるのかなあ。



 ……可愛いけどさ。



 







 
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