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◇女の子みたい?

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 少しの間手を握られてたけど。その内明るくなって、手を離した。


 男でも、この人の事が可愛いって思ってるから、
 今更オレは気にしないけど。――――……先輩が嫌だろうし。

 やっぱり、これが女の子だったら、手を離さなくてもいいのにとは思ってしまう。ずっと手、繫いでいたかったなあ。


 京都に戻って、雰囲気の良い居酒屋に入った。
 個室に入って、乾杯。


「先輩、お酒、少しにしてくれますか?」
「ん?」

「全部、ちゃんと覚えてて、ほしいので」

 言うと、うん、と頷く先輩。
 ……意味分かってるかな。

「――――……ていうか、昨日のも、全部、覚えてるよ」

 あ。分かってるかな。
 昨日の事を思い出しているのか、少し恥ずかしそうに、顔を逸らす先輩に、くす、と笑ってしまう。


「記憶なくなった事、無いから大丈夫」

 言いながら、ぱく、と食事を口にしてる。



「……三上ってさ」
「はい」


「昨日、酔ってた、よね?」


 何が聞きたいんだろ。
 ――――……オレが酔ってたからあんな事したってこと?


「あのね、先輩」
「うん」

「オレ、めちゃくちゃ、酒に強いんですよ」
「え、そうなの?」


「昨日オレ、酔ってるように見えました?」
「……見えないけど、結構普通に飲んでたし、少しは酔ってるかなって」

「オレ、強くて。あれくらいじゃ全然酔わないんですよ。――――……昨日の事は、全部覚えてますよ」

「――――……あ、そう。なんだ」


 それきり黙る先輩。

 オレが酔ってて、昨日の事は酔ったせいとか思ってるのかな?
 ――――……うーん。

 いまいち、真意がつかめない。



「……今のそれ、何で聞いたんですか?」

 先輩の答えが聞きたくて、そう問うたら。
 先輩はじっとオレを見つめて、ん、と苦笑い。


「なんか――――……」
「はい」

「…………ちょっと、女の子みたいな事言ってもいい?」
「……どうぞ」


 ……女の子みたいなこと?
 なにそれ。可愛いこと言うっていう宣言?

 つか、そんな宣言しなくても、今日1日、可愛い発言めっちゃくちゃ繰り返してるんだけど、分かってねーのかな。

 ていうか、宣言するって事は、先輩が気づく程に、よっぽど可愛いこと言うってこと??

 ――――……うわ、なんかオレ、撃ち抜かれそうで嫌なんだけど。

 心構えを持つために、一瞬で色々予想してみる。


 オレが酔ってた方が良かった? 恥ずかしいから、とか?
 よく覚えてないって、言った方が良かった? やっぱり恥ずかしいから?とか?

 それとも、酔ったせいにしたかった? とか。あ、でもそれは女の子っぽくはないか。 ……なんだ??


 ポーカーフェイスのまま。
 でも心ん中はめちゃくちゃ色々予想しながら、先輩の答えを待っていると。



「……酔ってなくて、良かった」
「――――……」

「結構飲んでた気がするし、酔ってたかなあって思ってて」


 ……ああ。酔ってなくて、良かったんだ。
 ……じゃあ酔ったせいにしたいとかじゃないか。


 ……それは何で?
 先輩の次の言葉を待って、先輩を見ていると。

 
「だって、初めてした時の事、オレしか覚えてないとか、なんか悲しいなーと思ったから。 良かった。酔ってなくて」


 初めてした時のこと。

 先輩にとって。
 昨日の事って。 オレと2人で、覚えていたい事、なんだ。


「……それって、女の子みたいですか?」
「え。あ、だってさ、なんか、忘れちゃやだって言ってるみたいで。別にそんなこと、なかった?」


 ……言ってるけどな。
 完全に。

 みたい、じゃなくて。




 ――――……頼んだ食べ物もまだ少ししか来てないし、まだ一杯めに口付けたとこだけど。



 もう何もいらないから、連れて帰りたい。
 

 ほくほく美味しそうに食べてる先輩に、まさかそんな事は、
 言えないけど。




 すっげーもどかしい。






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