【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

悠里

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◇女にモテたい?

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「先輩、そろそろこっち向いてくれません?」
「――――……」

「変ですよ、2人で居るのに、完全に先輩がそっち向いてるの」

 苦笑しながらそう言うと、先輩、ようやく、こっちを向いてくれた。


「……なんかさ」
「ん?」

「……三上って、結構」
「うん?」

 そこまで言って、先輩が固まってる。
 やっと食べ終わったらしい、クレープを包んでた紙を折りたたみながら、続きが出てこない。

「何ですか?」
「――――……結構意地悪い?」
「――――……」


 えーと。 
 ……意地悪い?


「……そうですか?」
「――――……分かんない。でも、なんか、からかって楽しそうに見える」
「んー……」


 まあ確かに、ちょっと、反応が面白いなとは思ってた。
 意地悪いとは言われた事ないけど――――…… ああ。そういえば。

「Sだよねって言われる事がたまにありますけど……」
「あ、そうそう、そんな感じ!」

 食い気味に乗っかっけて来て、うんうん頷いて、なんか楽しそうになってる。 ……面白いなーこの人。

 まあ。Mじゃねーから、どっちかっつったら、Sかも知んねーから別にそれは良いけど。

 じゃあこの人は何なんだろう。


 ……無意識で、突撃してくるのを何て言うんだろう。

 Sな訳じゃない。別にМでもない。

 ……無意識。無自覚。天然。


 ――――……この人って、これで何で仕事、あんなに出来るんだろう。
 謎に思える位、鈍い時あるし。

 ああ。でも昨日の、あのキモイおっさんのとこでの対応見てても。
 そういえば、一番キモイとこは、この人、ほとんど分かってなかった。

 仕事関係は、敏いしすぐ分かるし、ちゃんと話も通じてたけど。
 でも、キモイとこは、見事にスルーか、違う意味で取って、なんか適当にうまく返事になっていたような。ある意味天才……。

 ――――……だから、ほんとにその関連だけにものすごく鈍いって事で。なんでこんなにモテそうなのに、そこら辺発達しないで生きてこれたんだろうなあ?

 ……分かりやすい好き好きアピールしてくる子としか、付き合ってないんだろうなあ。と、勝手に予想しながら。

 謎すぎて、アイスティーをストローで飲んでる先輩を見つめてしまう。


「……あ、先輩、クリーム。ちょっとついてる」

 右の唇の端。こっち、と、オレ自身の唇を指して教えてあげたけど。
 逆側に触れてる。


「こっち」

 紙ナプキンで、そっと拭き取ってあげると。


「――――……」

 先輩、黙ってから。


「……三上って、すげー恥ずかしい」
「――――……」

 本気で恥ずかしそうに言われて、がく、と崩れそうになる。
 
「はいはい……すみませんでした」

 苦笑いしながら、紙ナプキンをくしゃ、と丸めてトレイに置く。


「もう行きます?」
「うん」

「どこか行きたいとこあります?」
「ううん。いいよ、適当に回るんで、十分楽しいし」

 ――――……素直。
 ふ、と笑ってしまいながら、先輩のトレイと重ねて、「ちょっと待ってて」と立ち上がって、トレイを片付けた。

 先輩の元に戻ると、「ありがと」と言われるのだけれど、何か、ちょっと複雑そうな顔してる。


「……どーしました?」
「なんかさー。三上ってさー」
「はい」

 またきた、「三上って」。
 ……次はなんだろ?

 先輩の次の言葉を待っていると。



「なんかあれだよね」
「……あれ?」

「……あれあれ」
「あれ、とは?」


「理想の彼氏、みたいなこと平気でするよな?」
「――――……」


「絶対モテるよな。三上見てると、ああ、こうやれば、いいのかーって、勉強になる」
「――――……」

 またこの人は、ほんとに何言ってんだかよく分かんねえけど。


「……何が勉強になったんですか? たとえば?」
「えーたとえば…………」

 2人で歩き出しながら、先輩のあほ発言の先を促すと。


「スイーツ頼む時は、相手の食べたいもの頼んであげる、とか」
「…あれは、オレがどれでも良かったからですけど」

「乗り物乗る時、自然と先に乗せてくれるとか。ドア開けてくれるとか」
「……それはやってるかもですけど」

「飲み物買ってくるから待ってて、とかさ。水持ってきてくれるとか。さっさと片付けてくれちゃうとか?」

 ――――……なんかそこだけ聞いてると、オレ、めっちゃ尽くしてる気がしてきて、ちょっと笑える。

「そういうのを自然とやれると、絶対女の子にモテるんだろうなーて、感心してるところ」


 ――――……女の子に、モテる。ね。

 何か、そこ、引っかかる。



 女の子に、モテたいの? 
 ――――……オレと夜、とんでもないことしようとしてんのに?


 口をついて、出てしまいそうになって、一呼吸おいてみる。





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