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side*陽斗 4

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 その頃、段々酔いが回ってきてて、なんか少し眠いなーなんて思ってて。

「オレが態度悪くても、メンタル強いから平気って、志樹、言うよなー……族のリーダーかー……」

 みたいな事を言ったら。

「嫌いだって思おうとしてたけど。そうもなりきれなくて、めっちゃ嫌、でしたからね」

 と。言われてしまった。
 メンタル強くても、嫌だった、と。

 それはそうだよね、失言、オレ。ごめん、なんか酔ってきたな、あんまり余計な事言わないようにしないと。と思って、一瞬、反省したんだけど。

 でもそっちより、なんか。
 ふと、気づいた。

 嫌いだと思おうとしたけど、なりきれなくて。

 と言ってくれた方が、心に残ってしまった。

 嫌いだと思おうとしたってのは、勿論、気になるけど。
 ――――……嫌いになりきって、なかったんだ、オレの事。


 そうなんだ……。ふーん……そーなんだ。


「はは。――――……三上、かーわいい……」


 つい、そんな風に漏らしてしまった。


 あ。可愛いとか。
 24の、男に言う事じゃないか。

 でももう言っちゃったし、良いか。
 酔ってるオレは、かなり適当になってて。特にフォローもしなかった。

 そうこう話してる内に、三上のスマホがピコピコ連続で鳴り始めた。
 三上がそれを見て、うわー、という顔をしてるのが面白くて。

 でも、内心、角材とか持ってたり、すごいリーゼントとか、金髪とか、もう本当に怖かったらどうしよう、とドキドキしながら、写真を見たら。


 あ、なんか。 
 三上のまんまだなと、思った。

 特攻服は着てたけど三上は割とそのまんまの感じ。セットしてない黒髪。今よりは少し前髪長い、かな。
 ……まあ三上の周りにはすごい髪形と色の奴らもいっぱい居たけど。でも、皆すごい笑顔で。どの写真見ても、三上の周りに人が群がってるように見えるし。

 なんかすごく楽しそうで。 写真見てる間にもどんどん送られてくるメッセージが通知欄で目に入ると、総長カッコいい、とか、大好きとか、そんな風なメッセージばかりだし。

 まあ暴走族は暴走族だし、喧嘩とかはちょっとなあと、やった事ないオレとしては思ってしまうけど。
 好かれてたんだろうなあというのはすごく分かる写真だった。
 とりあえず、そんなに怖くなくて良かった、と、写真を見てちょっとホッとしたりもした。

 こういう経験が、肝座ってるとか、器でかいとかに繋がってんのかなと思えば、なんか、こういうのもありなのかも、と思ったりしてしまった。


 なんか――――……結構酔って、フワフワしたまま、色々話してる内に。
 オレの悩みを知りたい、とか。色んな相談乗ってきたから聞きますよ、とか。色々言われて。


 ……ついに話す事にしてしまった。
 今まで誰にも言わずにきた、ちょっと何て返していいかわからないだろう、とんでもない相談を、よりによって、後輩に。




 なんか三上は誰にも言わないでくれる気がして。

 ――――……オレ、誰かに聞いてほしかったのかも。







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