【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

悠里

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◇可愛いし。

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 そこに、頼んだものが運ばれてきて、また空気が変わる。
 目の前に並んだ、上品で美味しそうな和のスイーツに、先輩がすごく嬉しそう。

 昨日も思ってたけど。

「……先輩甘党ですよね」

 クスクス笑ってしまう。

「うん、そう。いただきまーす」

 素直に頷いて、わらび餅を口に入れて、「ん」と顔が綻ぶ。

「溶ける」
 嬉しそうに笑うの、ほんと可愛い。

 ――――……なんか。
 こういう先輩、ずっと見ながら。
 ずっと、こんな風に一緒に居れたら。 すげーいいけど。

 ……この人は、男じゃダメかな。 
 つか、オレを好きな訳ではないだろうし。

 昨日は酔ってて、キスしたら、思ってたより気持ち良くて。
 ……なんか勢いでそのままいっちゃって。で、今日もその時の気持ちよさとか、恥ずかしさとか、そういう感覚をひっぱって、ここまできちゃってる。

 ……てとこな気がするし。


「三上も食べるか?」
「じゃ一口下さい」

 あ、と口を開けると。一瞬、躊躇ったらしい先輩が動きを止める。
 ――――……ちら、と店内見回して。誰も居ないからいっかと、判断したんだろう。ぱく、とオレの口にわらび餅を入れた。


「……あ、ほんとに溶けますね」

 これは素直に、うまい。

「だろ?」

 めちゃくちゃ嬉しそうな先輩。

 ああ、ほんと。
 だめだなー。

 ……可愛い。

「あ、先輩、ケーキどうぞ」
「え。三上食べてからでいーよ」
「いいですよ、好きなだけ食べて」
「……全部食べるよ?」

 言って笑う先輩に、ぷ、と笑って。

「別にそれでも良いですけど」

 と言うと。先輩は苦笑いを浮かべる。

「三上が先に食べて、感想言ってよ」

 そう言うので、とりあえず、一口食べてみる。


「んー……下のクッキー生地がごまの風味がしますね。めっちゃ和風。レアチーズケーキに抹茶、どうだろうと思ったけど。すごく合います。甘すぎなくて、美味しいです」

 そう言ったら、先輩は、あはは、と笑った。

「すっごいよく分かった」
「食べますか?」

 さく、と食べやすい大きさでフォークに挿して、先輩に差し出してみる。
 また、一瞬躊躇ってから。先輩は、口を開けた。
 
「――――……」

 多分、恥ずかしいなと思いながら口を開けたんだろうと思うけど。
 口にケーキが入ったら、すぐに、美味しさが勝ったみたいで。

 めちゃくちゃ笑顔。

「すっごい美味しい。三上の感想、ばっちり」

 めちゃくちゃ嬉しそう。
 可愛すぎるんだけど。


「残り、全部食べてもいいですけど。食べます?」
「こっちもあるからさすがに全部は……」

 クスクス笑う先輩に、じゃあ半分あげます、と言って、少しだけ食べる。

 ――――……なんか、カップルみたいな事、してると思うけど。

 ……全然きっと、何も意識してねえんだろうな。
 ――――……この人、女の子にもこれで来たのかな。
 勘違いする子、多かっただろうなー。

 ……って、合コン行くと、ものすごいモテるって、そう言う事なんじゃねえの。

 見た目がこれってだけでモテるだろうに。
 こんな顔で、何気なく優しくして、こんな風に相手をじっと見つめてたら、そりゃ、勘違いする子も続出しそう。

 この人が、話す相手をまっすぐ見つめるのって、いい所だけど。
 ――――……この瞳は、ちょっと、破壊力がありすぎかも。

 オレ、昨日までむしろ目線、外されてきたから、まだ大丈夫だったけど。

 ――――……じっと見つめられてると、ほんと、惹きこまれてしまう。
 ……なんだかなあ、この人。


 何かそう思うと、昨日キモイと思ってたあのオッサンも、微妙に被害者なのかなと思ったりもする。


「なんか口の中で溶けて、すごい幸せなんだけど、どーしよう」

 とか、もはや、オレではなく、わらび餅としゃべってるし。


「三上、明日もどっか、京都の和風スイーツの美味しいの食べてから帰ろうよ」
「……はいはい。いいですよ」


「さっき買ったパンフレットで、おすすめ探そ」


 ……はー。
 可愛いし。 ほんと。



 昨日の蕩けてエロかった人とは、別人みたいだ。








  
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