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◇無意識。
しおりを挟むオレは、ふー、と息をついた。
多分、この人、何も意識してないで言ってる。
どっか連れ込むとかしたら、何で、てなる。
……つか、煽ってるの、まったく意識もしないで、こんな風にする人、居るんだなあ。と逆に感心してしまう。
無意識の煽りというか。
――――……こっちにとったらものすごい迷惑な気はするんだけど。
でもなんか、そんな風な先輩の事も。
……ちょっと可愛いなんて思ってしまうあたり、もう重症。
「先輩」
「……ん?」
「ちょっと座りません?」
参道沿いに見えるカフェを指して言うと、先輩は、ちょっと笑顔になって、頷いた。
カフェに入ると、まだ午前中の早い時間て事もあって、とても静か。
着物姿の女の子に、奥の静かな席を案内された。
「外、すごい人ですけど――――……静かですね、ここ」
「ん」
店内を見回しながら、先輩が微笑む。
「何食べます? はい」
メニューを差し出すと。
一瞬で。
「わらびもちのパフェだって。絶対これ」
即決するのを見て、ぷ、と笑ってしまう。
「んー。先輩、他に食べてみたいのあります?」
「他? んー……抹茶レアチーズケーキかなあ」
「あぁ。これですか?」
「うん。それ」
「緑茶がついてくるから、飲み物はそれで良いです?」
「うん」
テーブルの上の呼び出しボタンを押す。
おきまりですか?とやってきた店員に、メニューを見ながら。
「わらび餅のパフェと、抹茶レアチーズケーキで」
「かしこまりました」
店員が居なくなり、メニューを隅に片付けていると。
「三上は、それで良かったの?」
「オレ別になんでも良かったんで。先輩が食べてみたいならそれで」
「――――……」
「え?何ですか?」
ぼそ、と何か言われて、聞き返すと。
先輩は、少しムッとしてる。
「……モテそう、三上」
「――――……そうですか?」
苦笑い。
「何でそれでそんなにムッとしてるんですか」
「……さあ。なんか、あまりにさらっとするから」
「別に、オレほんとになんでも良かったですし」
なんか、いまだムッとしてる先輩に、苦笑いしか浮かばないけど。
「そんなことより、先輩」
「――――……? 何??」
「さっきの話、なんですけど」
「……触るなって言った、やつ?」
「それなんですけど」
オレは先輩をまっすぐに見つめた。
「オレが今、人もいっぱい居る所で、先輩にどんだけ触っても、何も意図はないですから。――――……あんまり、意識、しないでください」
「――――……」
「でも――――……でも、2人になって、触るのは、意味ありますよ」
「――――……」
「昨日のを思い出すとか。そういうのって……オレにとって、めちゃくちゃ意味があって。誘われてるのかなって、思っちゃいます」
「ち」
「違うのは分かってます。先輩、きっと考えずに言ってるんだろうなって、分かってるけど――――……オレは、そう思います」
囁くような声でもお互い聞こえる位、店内は静か。
「……陽斗さん」
敢えて、名前を呼ぶと。
ふ、と、また違った顔で――――……ちょっと緊張して、こっちを見上げる。二重の綺麗な瞳が、余計大きくなる気がする。
は。
……ほんと、反応、可愛い。
「……無理なら、陽斗さんとは、二度と、呼びませんから。無理しなくて、大丈夫ですよ」
ほんとは。
逆のことを言いたいけれど。
何となく、そうじゃない方が、良い気がして。
そう言った。
何を思ってるんだか、心なしか少し赤くなって。
先輩は、ん、と俯いた。
その俯く、のがさー。
――――……可愛く見えるって、オレがおかしいのか。
それとも、これは誰から見ても可愛くて、先輩がいけないのか。
もう、深くため息をつきたい気分。
――――……近すぎて、ため息も付けないけど。
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