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◇キスのメリット
しおりを挟むむく、と起き上がって、先輩がオレを見つめた。
「……いーよ、キスしても」
「――――……いいんですか?」
……ヤバい。
心臓が、めっちゃドキドキしてきた。
「あー。でも……どんなキスすんの?」
どんな?
どんなって?
「……エロいキス?」
ふ、と笑って、先輩がオレを見つめる。
なんか。
――――……転がったまま適当に起き上がったりするから、少し乱れた浴衣から、足が見えるし。胸元も、開けてるし。
酔っぱらってるからか、少し赤いし、目は潤んで見えるし。
「やらしーなー、三上」
クスクス笑う。
絶対、からかってる。
……つか、自覚なくても、もー、やらしいの、あんただけど。
自覚無いから、余計ヤバいのかも。
わざとやられてたら、退くもんな……。
「……どんなキスでも、いーならします」
「――――……え。マジで?」
ちょっとびっくりした顔で、先輩がオレを見てる。
「……んー。まあいいか。 オレ酔ってるし。お前も少しは酔ってる?」
「――――……オレあんま酔ってません」
「……あ、そ。なんか、不思議な? 三上って」
クスクス笑う、先輩。
…………オレが不思議なの??
オレにとったら、あんた、誰よりダントツ、不思議だけど。
「……しますか?」
そう聞くと。
「……あのさあ? オレにはちょっとお試しの意味あるけど、お前にメリットなくない? むしろほんとにいいの??」
……オレにメリットありすぎだけど。
「ていうか、お試しの意味って何ですか?」
なんかちょっと気になって聞いてみると。
「んー。女の子にしたくないから、男とキスしたいかっていうお試し?」
「――――……は?」
「したくないなら、されるキスならいけるのかなーって、ちょっと今思ってて」
「……それ、今オレとしなかったら、いつか他の誰かと試そうかなと思ってます?」
「え? ……思ってないよ、だって、たった今思ったんだし。でもまあ。……三上、仕事の後輩だし、やっぱりやめといた方がいいかなーとは思ってるけど」
「オレとやめて、誰かと試します?」
「だから、考えてないって…… でも三上とするなら、学生ん時の友達とかにしてもらった方がいいかも、とは思いはじめたとこ」
「――――……何でですか」
なんかもう、めちゃくちゃ腹が立って来た。
「だって、今更思ったけど、職場の後輩だし……それに、なんか、志樹に殺される気がしてきたっていうか……」
「え?」
兄貴? ……つかこんな所にまで邪魔しに来るか。と、この件に関しては兄貴は何もしていないが、でもやっぱり、先輩との2年間の恨みが消えていないので、かなり腹が立つな。なんて考えていたら。
先輩がちょっと困った顔をしてる。
「……お前とキスしたとか。可愛い弟に何してくれてんのって……」
「ならないですよ」
逆に、先輩に何してンだって、殺されそうな気が……。
……いや、どうだろ、あの人、そんなにそういうの、熱くねえからな。
あっそ、ふーん。で済むと思うけど。
――――……つか。なんかもう。
……面倒くせえな。
下心隠してすんのも、やんなってきた。
「……先輩」
「ん?」
ちょっと自分の中を整理する。
もう、肝据えて、言いたいこと、言ってみるか。
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