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◇お悩み相談
しおりを挟む「あ、じゃあ先輩の秘密――――……」
「え?」
「先輩の秘密、教えてくださいって言ったら?」
「えー……それはちょっと」
先輩がちょっと困った顔で、眉を寄せた。
「あ、無理にとは言いませんけど」
すぐ退くあたり、オレ、ほんとに弱いな。
自分に苦笑いしてしまいつつ。
なんかちょっと可愛いけど……。
なんて、頭おかしいような事を思いながら、先輩の、ちょっと困った顔を眺めてると。
「……オレの秘密って、悩み相談みたいになっちゃうし」
そんな事を言い出した。
悩んでるってこと?
……その秘密で?
何だろう。
ますます、気になる。
「――――……オレ、すっげえ気になるんですけど」
「……そうだよね。ここまで言って話さないのもなあ……でもなあ……」
「やっぱり嫌ですか?」
「嫌っつーか。……聞いた三上が困るかもって思って」
……さっぱりわかんねえ。
こういうのかなっていう予想もつかない。
でも、何にしても。
「別に先輩が悩んでる事聞いても、オレは困らないと思うんですけど……」
「……返答に困るんじゃないかなーって」
「……もう言っちゃいませんか? イイですよ、相談、乗りますよ」
「えー……うーん……」
どうしようかなー、なんて言いながら、先輩は苦笑い。
「オレ総長ん時、結構色んな相談乗ってましたし。今も後輩たち、愚痴ってくるし。大概のこと、驚かないと思うんですけど」
話しやすくなるかな、と思って、そう言うと。
まあ事実だから、多分、恋愛相談から始まり、家の事やら進路まで、かなり色々話しは聞いてきたし。
「ふーん……そっかー。まあいっか……じゃあ相談、乗って」
「はい」
「――――……オレさ」
言い出した先輩に、邪魔しないように、声は出さずに頷いた。
「あ。誰にも秘密だぞ?」
「……言わないですよ」
がく。
もうくると 思ったのに、再度そこ確認か。 どんだけだ。
「そんなに言いたくなかったら、聞かなくてもいいですよ?」
「ここまで来たら言うって。ごめん」
先輩、苦笑いしてる。
ほんとに聞いていいのかなと思ったら。
「なんかさー、オレさ、最近合コンとか行くと、すっげえ、モテるんだけどさ」
「――――……はぁ……」
モテるのが、悩み??
……まあ、モテるだろうけど。
「どうモテるんですか?」
「さっきも言ったけどさ。合コンとかいくとさ、連絡先渡されたり、聞かれたり――――……何日かしてから、全然知らない女の子から、知り合い経由でいきなり連絡が来たりしてさー……一回いくと、後々まで、すごいんだよね……」
とっても嫌そうなので、自慢ではないらしい。
それが悩み??
「……まあ、モテるのは分かりますけど。あ、でも」
「ん?」
「誰か特定の1人、持ち帰ったりとかしないんですか? それがあれば、複数から来る事は無いんじゃないですか?」
オレは大体そうだな。
……まあ。ほとんど一夜限りのお楽しみ、て感じだけど。
「――――……こっからが悩みなんだけどさ」
「あ、はい」
ここからなのか。
「……なんか、迫られ過ぎたせいなのか、なんなのかよく分かんないんだけどさ」
「はい」
「なんか、最近、ほんっとにそーいう気分にならなくてさ」
「――――……」
「……困ってるんだよな」
「――――……えーーっと……?」
「ん?」
「……たたないっつー事ですか?」
「いや? たつよ?」
あんまりな質問かと思ったけど、けろっとして、普通に答える先輩。
「――――……」
たつのか。
……まあ当たり前か。綺麗でも男たもんな。
ていうか。
この人、女と、どういう顔してするんだろ。
「気分だよ、気分。 全然その気になんねーの」
「――――……疲れてるんじゃないですか??」
それ位しか、浮かばない。
「まあ、そうならいいんだけど」
先輩、頬杖をついて、ため息。
「でももう3年近くだよ? やばくない?オレ」
んー。ヤバい。かな。3年って結構長い。
「別にできるんだけどさあ。そうなってからも、何回かはしてるけど。全然盛り上がらないし。終わってからも、疲れたななーてだけでさー」
「――――……」
こてん、とテーブルに突っ伏してしまった。
してるのか。まあ。そりゃそうか。
でもなんか。
先輩と、そういう行為が、なんかあんまり結びつかない。
あんまりというか、全然。
さっきから変にドキドキしてたけど。
それはただオレがやましいだけで。
――――……潔癖な、綺麗なイメジで。
「あれ。先輩、寝てます?」
「起きてるよ……」
むにゃむにゃしてる。
……何でこんなに無駄に可愛いのか、
可愛く見えるオレが頭おかしいのか。
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