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◇願い事

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 もういいと入れたのに、次々入ってくる写真たちに眉を顰めつつ。

 とりあえずマシなの保存して……。
 と、思った瞬間。

「写真来た?」

 先輩が、めっちゃ近くで、オレのスマホを覗き込んできた。

「――――……っ」

 ……ち、かい、っつーの。
 ドキン、と大きく弾んだ心臓。

 ほんと勘弁して。


「見せて?」

 クスクス笑う先輩の、綺麗な笑みに。
 ――――……もう脱力。

「……はい」

 もうスマホごと、渡してしまう。 
 離れてほしくて。

 オレがこのままスマホ持ってたら、絶対このまま覗き込まれそうで。

「うわー。特攻服ー?」
「……そーです」

 少し離れさせることに成功してホッとしていると、楽しそうに笑いながら見せてくる写真に、脱力しながら適当に答え続ける。

「集合写真すごいなー強烈」
「……ああ、それは、オレと祥太郎の代が卒業する時に撮った写真で」

「へー」

 クスクス笑いながら、先輩が写真を見てる。

「お前の周り、女の子ばっかだな」
「……男の方が多くないですか?」

「男としゃべってるけど、その周り取り巻いてるのは女の子達だなーって思って」
「まあ。……総長っていうだけでモテる世界なんで」
「ふーん……」

 なんて言いながら、先輩は写真をめくりながら。

「まあ、カッコいいしな、お前」
「……そうですか?」

 良かった、もうマシなの選んでる余裕も無く、全部そのまま見せてしまったけど、その反応で。


「三上」
「はい?」

「――――……さっきさ」
「はい」

「……平気に見せてたけど、嫌だったって言ったろ?」
「……まあ」

「――――……ごめんな?」
「でもそれ、兄貴のせいだし。先輩はもう良いですよ」
「……でもなー。やっぱり嫌だったったって聞くと……んー……そりゃそうだよなーって……」

「すみません。でも、仕事はすごい丁寧に教えてくれてたし。なんか……そうじゃなくて――――…… 違くて」
「……違くて?」

 何て言ったらいいんだろう。
 嫌われているのかと思いながらも、そうも思えなくて。なんか、全然意味が分からなくてモヤモヤして嫌だっただけで。あとは――――…… オレ以外への嫉妬と言うか。

 これ、なんて言ったら、分かってもらえるんだ?

 意味が分からなくて嫌だったけど、意味が分かった今となってはもう、納得したというか。何て言ったらいいんだろう。
 
「だから――――……オレが、先輩と仲良くしたかった、ていう恨み言をちょっと言っておきたくなっただけで……」

 あ。何かオレ、ちょっと。いや、大分、間違ってねえか?
 なんか。ほんと、何言ってんだか分かんなくなる。


 案の定、先輩が、ん?と言う顔で、ちょっと、きょとんとしている。
 それから、ふ、と笑う。


「――――……だから。何その可愛いの。さっきも可愛かったけど」


 いつまでも、クスクス笑う、先輩。

 可愛いてなんだ。

 

 ていうか、オレじゃなくて、先輩が可愛いし。
 綺麗なのに、そんな風にふわふわ笑ってると、すげえ、可愛いとか。



 ……絶対、ズルい。



「2年もほんと長かったよな。まあオレにとっても長かったけど……オレは全部分かってて自分がやってた事だから――――……」

「だからオレ、もう先輩には何も思ってないですって。すみません、平気だったわけじゃないですから、この先はしないでくださいねって言うか……」
「しないよ」
「ならいいです」

 言うと先輩は、くす、と笑う。


「じゃあさ、なんか願いごとある? お詫びにいっこ聞くよ」
「――――……」

「あ。すっごい高い物とかダメな? オレにかなえられる位の適度な奴で」



 ……うん。
 ――――……ヤバい方の願い事しか、浮かばねえな。


「だから、もういいですって。良いですよ、お詫びなんて」


 自分のヤバい思考を振り切るためにも、即、そう言って遠慮しといた。






 
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