【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

悠里

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◇あの頃の写真

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 何聞かれるんだろう、と思って、ちょっと楽しみだった。
 何聞きたくて、そんなにわくわくしてるんだろうと。

 そしたら。


「写真無いの? 見たい」


 と来た。

 うわ、最悪。絶対ぇやだ。
 咄嗟に思った。


「……やですよ、それは。質問なら答えますよ」
「えー、すっごい興味あるのに……」

 それきり黙る。
 …………ダメだ。オレこの人に弱すぎる。

「…………でもオレ携帯替えてるしわざわざ写真移してはないんで……。ちょっと誰かに聞いてみますね」
「うん」

 めっちゃワクワクして、頷いてるのを見ながら、テーブルに置いてたスマホで、族の皆とつながってるグループに、「あの頃の写真すぐ送れる奴いる? もし居たら今すぐ送って」と入れてみた。

「……返事来なかったら諦めて下さいね」

 むしろ、来なくていい。それなら諦めてくれるだろうし。

「うん分かった。なあ、強いって、喧嘩がってこと?」

「……あの居酒屋の祥太郎と2人で、総長と副長だったんです。それまで知らなかったんですけど闘ってみたら、オレらもともと強かったみたいで、負け知らずで、上に可愛がられてる内に、引き継いだって感じです」
「へえー。そうなんだー。いいな、楽しそう」
「……楽しそう?」

「オレ喧嘩なんかした事ないから」
「……あぁ。普通無いですよね。オレだって、族以外の場所で殴り合いなんてした事ないです」

「ふーん……族かあ。総長かー……」

 言ったきり、じー、とオレを見つめる。

「何すか?」
「……なんか分かるかも。静かに肝が据わってる感じ、それかーて……」
「……そうですか?」

「そりゃオレが態度悪くても、メンタル強いから平気って、志樹、言うよなー……族のリーダーかー……」

 クスクス笑う先輩は。なんかふにゃふにゃしてて。
 少し首を傾げて、オレを見つめて、笑う。

「そりゃ動じないよな…… なんか、納得」

「……あのさ、先輩」
「んー?」

「――――……オレ、動じてないように見せてたけど、内心、すげえ嫌でしたからね」

「――――……」

 つい、言ってしまった。
 先輩酔ってるし。言っても平気かなと思って。どんな反応が来るのかなと。

「あんたと話したかったし。オレには、笑わねーし」
「――――……」

「2年間――――……嫌いだって思おうとしてたけど。そうもなりきれなくて、めっちゃ嫌、でしたからね」

 思わず全部言い切ってしまうと。
 先輩は。

 ふわふわ、と笑って。
 
「はは。――――……三上、かーわいい……」

 そんな風に言いながら、酔いを持て余しているのか。
 少しだるそうに、テーブルに肘をついて、頬をのせて。
 オレを見つめて、目を細める。

 少し前かがみになるから、少し着崩してる浴衣が、更に開いて胸元が。
 

 ――――……っ。

 思わず視線を外したその時、スマホがぴこん、と鳴った。

 開くと、あの頃の写真が並ぶ。思わず眉が寄る。


 うわ……これ、見せんのか、先輩に。
 …………厳選してからにしよ。見せてもよさそうなのだけ保存して、そっちで……と思ってるそばから、他の奴からもどんどん送られてくる。

 おいおい、皆自分のスマホにこれ保存してんの?
 もうあれから随分経つし、かなりの奴がスマホ買い替えてると思うのに。

 山ほど並んでく写真に、ありがともう十分、と送った。
 それでも、これだけはとか言いながら、ぴこぴこ送られてくる。皆から、懐かしいだの、総長カッコいい!だのめっちゃ並ぶ。

 最近このグルーフ、動いて無かったから、きっと皆久しぶりで盛り上がってしまったらしい。


 ため息が漏れてしまう。




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