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◇オレの秘密

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 先輩のって、どんな秘密なんだろ。
 聞いてもいいのか?


 ……ってもなあ。
 ……人って、全部の事を、他人に話して生きてる訳じゃない。

 秘密というくくりに入れずに、誰にも言ってない事なんて、山ほどあるはず。 敢えてそれを「秘密」にするのは、やっぱり、言いたくない、知られたくない、と、強く思うから、て事で。

 聞かない方がいいよな……。


 オレが族の総長だったって話は、族の奴らは当然だけど、あの頃の喧嘩相手のチームとかも含め、かなりの奴らが知ってる訳で。
 オレの名前も、あの頃の族関連に関わる奴なら全員知ってるっつー話で。
 ……そう考えると、秘密でもなんでもないのかも。

 ただ、族に関係ない奴に知られて、退かれても面倒だし。
 だから高校も大学も、普通の友達らには言ってない。聞かれたら隠しはしなかったと思うけど、幸い誰にも聞かれもしなかった。

 で、やっぱり、会社関連の人には、さすがに知られない方が良いだろうと思い、そこは、隠そうとは思っているが。かなりの昔話だし、な。聞かれる事も無いだろうし、敢えて言わなければ、誰にも気づかれる可能性すら無い。

 秘密、というか。
 あえて言わないこと、の方に入んのかなー、オレのは。

 別に最悪、言っても良いし。


 先輩のも、そっちだったら、聞けば教えてくれんのかな?


「先輩の秘密って、先輩以外、知らないんですか?」
「……うん、知らない」

 あー。
 ……じゃあだめなやつかな?

「それって、オレが聞いても良いやつですか?」
「んー?……あー……うーん……ダメ、かなあ……」


 ダメ、…………かなあ……??

 うーん。
 良く分かんねえ。

 もうなんか、完全に酔っぱらってるのか、喋りがひたすらゆっくりで。
 相当可愛くなっちまってるし。

 はー。だめだなこれ。


 聞いて欲しいのか、欲しくないかも、良く分からない。


「じゃあ、オレの秘密、先に話します」
「……それは、良いの?」

「だからオレのは、あの店に行ったら、すぐバレるやつなんで」
「……そうなんだ」

「オレの話聞いて、先輩も話そうかなって思ったら、話してください。 だめならいいんで」
「……ん」

 先輩が頷いて、そのままじっとオレの言葉を待ってる。


「オレ、高校ん時」
「うん」

 2人きりの部屋なんだから、声を小さくする必要なんかないのだが、
 何となく、少し小声で話し始めたオレに。

 何でか、先輩まで小声になって、何ならちょっと寄って来ようとしてる。


「……暴走族に入ってたんです」
「――――……」


 先輩、きょとん、とした顔になって、じー、と見つめてくる。


「……総長でした」
「――――……え。総長?」

「はい」

「総長って、あれ? 一番偉い奴?」
「偉い……んー、うちのチームでは、一番、強い奴。だったかも」

「――――……」

 先輩、目がパチパチしてるし。


「引いてますか??」
「いや。……高校ん時だろ? もう、ずいぶん前の話だし――――…… でも、ちょっとびっくり。ていうか、かなりびっくり」


 そう言った後、数秒沈黙してから。

 ふーん、そうなんだー、総長かー。
 ちょっと、質問考えさせて。


 そんな風に言って、なんか、ものすごく楽しそうな顔をしながら、オレを見つめてくる。


 なんでこんな楽しそうかな。
 予想外の反応。


 苦笑いが浮かんでしまう。

 
 




 
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