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◇改めて 3

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「だから、こっから改めてよろしくな?」

 なんて言って、惜しげもなく。って言うのも変だけど。
 今までまったく笑わなかったくせに、全然普通に笑いかけてくる。


「……つか。先輩、今までと違いすぎて、どう接して良いか分かんないんですけど」
「――――……あー。うん。早く慣れて?」

 先輩は、ちょっと困ったように言いながらも、クスクス笑う。


 そうだよな――――……。
 この人、笑う人なんだよな……。

 オレ以外は褒めてたし。
 
 それを隣で聞きながら、オレがどれだけ、嫉妬――――………あ? 違う違う違う。そうじゃなくて……。どれだけあんたにちょっでも、ほめてほしくて頑張ってたか――――……って、ああ? だから違うっつの。


 ――――……ダメだ。
 脳みそ、今、ちゃんと考えられない。



「あ。そうだ。宿取ろっかな……」
「――――……」


「三上、オレと別が良い? それとも一緒にして、仲良くなる?なんて。……やっぱ別にしとく?」
「――――……」


「こんな話聞いても、急に仲良くなんかできないよな」

 しゃあないよなー、なんて言いながら、スマホで宿を探してる。

「あ、でも泊まる宿は一緒でいいだろ? 別のとこで経理に出すのも変だし」
「――――……部屋も、一緒で」
「え?」

「一緒の部屋で取って下さい」
「――――……」

 んー……? と、先輩がオレを見てる。

 もはや何も中身を悟られないように、窓の景色をひたすら眺めつつ。
 その視線をスルーしていると。


 先輩が、クスクス笑い出した。


「じゃあ、一緒に泊まろっか。 ――――……部屋で酒でも飲も。部長、好きなとこ泊って良いって言ってたから。良さそうなとこ選ぼ」

 笑みを含んだ声でそう言って、先輩がスマホをしばらく眺めて。


「和室と洋室どっちがいい?」
「どっちでも……」

「どっち?」
「……じゃあ和室で」
「うん。いいよなー、布団もたまには」

 クスクス笑いながら、スマホを眺めてる。


「三上、ここは? 部屋に温泉があるって。すごくない? 少し高いけど」

 あはは、と笑いながら、スマホを向けてくる。


「ここでいい?」
「はい」

「じゃあもう取っちゃお……」

 楽しそうに言って、しばらくスマホを操作して。
 取れたよ。と笑う。


「2年分、めっちゃ喋ろーぜ?」

 すげえ楽しそうに笑う先輩。


「なんかずっと我慢してきたから、お前と話すの、必要以上に楽しいかも」

 とか言っちゃうし。


 ――――……何なのこの人。
 ……好意全開の態度。


 もう違いすぎて、全くついていけないんですけど。
 



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