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◆番外編◆

「中学?」

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◇ ◇ ◇ ◇


「彰、何か見る?」
「何かって?」
「映画とか?」
「んー……でも二時間見てたら少し時間オーバーだよね」
「じゃあ何する? キスしよっか?」

 悪戯っぽく笑う仁が、可愛くはあるのだけれど。 
 なんか少し本気な気もして思わず。

「……無理」

 仁は笑いながら、持っていたリモコンを置いて、オレの側に来ると、むぎゅーと抱き締めてくる。

「無理無理って、さっきから、無理が多くない?」

 クスクス笑う仁を、見上げる。

「……仁とすんの、強烈なんだから、無理だよ。オレ、普通に授業できる気、しないもん」
「――あー、そういう意味で、無理、なんだ」
「……嫌とかじゃないのは、分かってるでしょ?」
「んー、そっかー……」

 抱き締められたまま、少し考えてるっぽい仁を見上げていたら。
 仁は、ん、と頷いてから、ちょっとムッとした。

 何で、ムッとしてるんだろうと思いながら、仁を見上げる。

「確かに、生徒に変な目で見られたら困るか……」

 それを聞いて、がっくりうなだれてしまった。

「彰?」

 仁がそっと顔に触れて、上げさせようとしてくる。
 逆らわずに仁を見上げると、オレの顔を見て、ぷ、と笑う。

「変な顔して、どしたの?」
「……なんか脱力して」
「何で??」
「……だって、生徒、オレを見て変な目で見る子、居ないよ……」

 そう言うと、仁はフルフルと首を振り、オレの頬に口づけてくる。

「わかんないでしょ、中学生って早い子はもう、早いし」
「……無いよ」

 はー、とため息をつきながら、再びうなだれると。

「……んでも、オレ、中学ん時はもうキスしたいって思ってたよ?」

 思わずパッと顔を上げて仁をマジマジと見てしまう。

「え。本気で言ってる?? え、いつ?」
「え……えー-っと……」

 オレの勢いに、仁は、苦笑いを浮かべて、はっきり答えない。

「え、オレが受験勉強、教えてた時は……??」
「ああ……んー……」

「え、もうそこから??」
「……えーと……」

 仁は、ちょっと、困ったなという顔で苦笑いを浮かべる。

「……まあ、自分の中で、なんとか、否定しようとしてたけど」

 オレのびっくりした顔を見て、仁はますます苦笑いで、言葉を濁している。

「でもオレ、彰の中学の卒業式あたりで、完全に、自覚したから……」
「――」

 仁は、んんー、と唸った後。取り繕うように、笑う。

「……まあさ、とにかく、早い子は早いんだから、刺激しない方がいいよね」
「――」

「彰が変な目で見られたら嫌だから、我慢する」
「だから、見られないってば……」

 苦笑いで言いつつ。

「一番オレを変な目で見るのは、仁じゃん……」

 思わずそう言ってしまう。

 ……だって。
 中学の時、もう、そんな感じで見られてたのかと、思うと。
 ……かなり、恥ずかしい気がするし。全然気づかなかったし。


 むむ、と黙っていると、仁は、クスクス笑い出した。


「……まあでも……変な目で見るの、当たり前じゃん」
「――」


「オレが、どんだけ好きだったか、もう、知ってるでしょ」

 さっきまで苦笑いで濁してたのに。
 なんだかもう開き直ったらしく。

 またなんか。
 ニヤと、不敵な感じで笑いながら、頬にキスしてくる。


「だからー、もう、無理だってば」

 離させると、すごく不満げ。

「いいじゃん、ほっぺにキスくらい」
「だめ、絶対、仁は口に移動してくるから」

「しないって」
「絶対するし」

「しないってば……」

 仁はオレの腕を掴もうとして、オレは、仁に掴まれないように。
 二人で少しバタバタしてから。

 ふ、と視線が絡んだ瞬間、笑ってしまう。


「――」

 ぎゅう、と仁の腕の中に、抱き締められて。
 ――オレも、その背に、腕を回す。


「大好き、彰」
「――うん……オレも」


「――」


 さらに、きつく、抱き締められる。





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