127 / 130
◆番外編◆
「中学?」
しおりを挟む◇ ◇ ◇ ◇
「彰、何か見る?」
「何かって?」
「映画とか?」
「んー……でも二時間見てたら少し時間オーバーだよね」
「じゃあ何する? キスしよっか?」
悪戯っぽく笑う仁が、可愛くはあるのだけれど。
なんか少し本気な気もして思わず。
「……無理」
仁は笑いながら、持っていたリモコンを置いて、オレの側に来ると、むぎゅーと抱き締めてくる。
「無理無理って、さっきから、無理が多くない?」
クスクス笑う仁を、見上げる。
「……仁とすんの、強烈なんだから、無理だよ。オレ、普通に授業できる気、しないもん」
「――あー、そういう意味で、無理、なんだ」
「……嫌とかじゃないのは、分かってるでしょ?」
「んー、そっかー……」
抱き締められたまま、少し考えてるっぽい仁を見上げていたら。
仁は、ん、と頷いてから、ちょっとムッとした。
何で、ムッとしてるんだろうと思いながら、仁を見上げる。
「確かに、生徒に変な目で見られたら困るか……」
それを聞いて、がっくりうなだれてしまった。
「彰?」
仁がそっと顔に触れて、上げさせようとしてくる。
逆らわずに仁を見上げると、オレの顔を見て、ぷ、と笑う。
「変な顔して、どしたの?」
「……なんか脱力して」
「何で??」
「……だって、生徒、オレを見て変な目で見る子、居ないよ……」
そう言うと、仁はフルフルと首を振り、オレの頬に口づけてくる。
「わかんないでしょ、中学生って早い子はもう、早いし」
「……無いよ」
はー、とため息をつきながら、再びうなだれると。
「……んでも、オレ、中学ん時はもうキスしたいって思ってたよ?」
思わずパッと顔を上げて仁をマジマジと見てしまう。
「え。本気で言ってる?? え、いつ?」
「え……えー-っと……」
オレの勢いに、仁は、苦笑いを浮かべて、はっきり答えない。
「え、オレが受験勉強、教えてた時は……??」
「ああ……んー……」
「え、もうそこから??」
「……えーと……」
仁は、ちょっと、困ったなという顔で苦笑いを浮かべる。
「……まあ、自分の中で、なんとか、否定しようとしてたけど」
オレのびっくりした顔を見て、仁はますます苦笑いで、言葉を濁している。
「でもオレ、彰の中学の卒業式あたりで、完全に、自覚したから……」
「――」
仁は、んんー、と唸った後。取り繕うように、笑う。
「……まあさ、とにかく、早い子は早いんだから、刺激しない方がいいよね」
「――」
「彰が変な目で見られたら嫌だから、我慢する」
「だから、見られないってば……」
苦笑いで言いつつ。
「一番オレを変な目で見るのは、仁じゃん……」
思わずそう言ってしまう。
……だって。
中学の時、もう、そんな感じで見られてたのかと、思うと。
……かなり、恥ずかしい気がするし。全然気づかなかったし。
むむ、と黙っていると、仁は、クスクス笑い出した。
「……まあでも……変な目で見るの、当たり前じゃん」
「――」
「オレが、どんだけ好きだったか、もう、知ってるでしょ」
さっきまで苦笑いで濁してたのに。
なんだかもう開き直ったらしく。
またなんか。
ニヤと、不敵な感じで笑いながら、頬にキスしてくる。
「だからー、もう、無理だってば」
離させると、すごく不満げ。
「いいじゃん、ほっぺにキスくらい」
「だめ、絶対、仁は口に移動してくるから」
「しないって」
「絶対するし」
「しないってば……」
仁はオレの腕を掴もうとして、オレは、仁に掴まれないように。
二人で少しバタバタしてから。
ふ、と視線が絡んだ瞬間、笑ってしまう。
「――」
ぎゅう、と仁の腕の中に、抱き締められて。
――オレも、その背に、腕を回す。
「大好き、彰」
「――うん……オレも」
「――」
さらに、きつく、抱き締められる。
189
お気に入りに追加
673
あなたにおすすめの小説
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
その部屋に残るのは、甘い香りだけ。
ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。
同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。
仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。
一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。
「短冊に秘めた願い事」
悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。
落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。
……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。
残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。
なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。
あれ? デート中じゃないの?
高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡
本編は4ページで完結。
その後、おまけの番外編があります♡
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる