126 / 130
◆番外編◆
「胸のど真ん中」
しおりを挟む「どんだけ長いこと、彰を好きだったと思ってンの」
ぎゅうううう、と、抱き締められる。
すっぽり腕の中にはまると、もう――幸せすぎて、困る。
「――ん?……って、オレも、大丈夫だけど?」
そう言うと。
「でも彰は、男に迫られたら危険だから、心配」
「――仁じゃなかったら、ちゃんと戦うから平気だよ」
「……戦うんだ。そっか」
クスクス笑う仁の揺れが、体に伝わってくる。
ふ、と笑みが漏れて。オレは、仁の背中に手をまわして、抱きつくと、ちゅ、とキスされた。
ふふ、と笑ってキスを受けて、すぐ離れるかなと思っていたら、どんどん深くなっていく。
「――ん、……ぅ……?」
背中を壁につかされて、上向かされる。
どんどん激しくなるキスに、一度顔を引いた。
「――仁……待って」
「……ん?」
「買ってきたもの、しまいたい」
「……んん」
不満げな顔に笑ってしまう。
「あと……どこまで、する、気?」
「――」
「…………なんか、キスが……めちゃくちゃ本気、なんだけど」
そう言って見上げると、仁は少し黙って、それから、ニヤと笑う。
「いけるとこまでいこうかなと」
「……無理。この後、バイトだからね、オレ」
「まだ少し時間あるし」
抱き締めようと手を伸ばしてくる仁に、無理、と胸に手をつく。
「最後までとか、絶対無理」
「――」
むー、と仁が少し膨らんでる。
……可愛いけど絶対、ダメだ。
心の中で、許してしまいそうな自分と戦いながら、オレは仁を見上げた。
「ダメ」
「――」
後頭部に手が回ってきて、ぐい、と引き寄せられた。
「――っ……ん……」
重なった唇の間から、舌が入ってきて。
舌を絡められて、んん、と声が漏れる。
ダメだってば、と思うのに。
薄く開けた瞳に映る、仁の伏せた瞳に、どき、として。
抵抗は、出来ない。
「――ん、……ふっ……」
舌が上あごをなぞる。ゾクゾクして、息が、どんどん、上がっていく。
「……ん、ぅ……っ……」
涙で、視界が滲んで。思わず、仁の首に手をまわして、ぎゅ、と抱きついてしまう。
「――」
ああ、もう。無理だ。
…………仁が好きすぎる……。
めちゃくちゃキスされてから。
ゆっくりゆっくり、唇が、離れた。
でもまた、重なって、今度は触れるだけ。
「……彰……すげー好き」
触れたまま、囁かれる。
胸のど真ん中が。
痛い。
「――うん……」
頷いて、仁を見つめる。オレの涙に気づいた仁が少し笑いながら、指で涙をふき取る。
「もー……可愛いなあ……」
ちゅ、と瞼にキスされて、それから頬にもキスされる。
「ごめんね。今はキスで、我慢するから……」
「――これで?……」
「ん? 何?」
オレの言葉が聞き取れなかったみたいで、聞き返してくる仁を見上げる。
「……何を我慢したの……?」
そう言いなおすと、仁は、クスクス笑った。
「ベッド連れてくのは、我慢した。偉いでしょ?」
「――」
……もう何言ってるんだろう、と思うのだけれど。
――だめだ、そんな風に嬉しそうに笑われると。
どうしても、可愛い。
「……えらい」
よしよし、と手を伸ばして、仁の頭を撫でると。
え、と仁が固まる。
マジマジ見つめられて。
「うわー。……なんかそれ……」
軽く握った右手を口元に持っていって、少し口ごもり。
「……照れるね」
なんて言って、ほんとに照れてるっぽい仁は。
――駄目だ、なんか、本当に、可愛い。
さっきまで、あんな激しいキス、してきてたくせに、何なんだ、もう。
結局「我慢」してくれたらしい仁と、買い物してきたものを片付けた。
211
お気に入りに追加
683
あなたにおすすめの小説
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
「短冊に秘めた願い事」
悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。
落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。
……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。
残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。
なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。
あれ? デート中じゃないの?
高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡
本編は4ページで完結。
その後、おまけの番外編があります♡
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる