【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

悠里

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◆番外編◆

「浮いてる?」

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 焼きそばの材料と、朝のパンや卵とか諸々を買った。
 二人並んで、ゆっくりと歩いて、家まで帰る。

 ただ一緒に歩いて、顔を見ながら、たわいもない話をするだけ。
 ――なのに、なんでこんなに、幸せなのかなと思うくらい、今幸せで。
 不思議だなあと思いながら、歩いて家に着くと。

「彰」

 玄関で靴を脱いだところで仁が荷物を下に置いた。
 腕を取られて、仁と向き直る。
 
「仁?」
「さっきの、何? 家帰ったらって」

「ああ……あれは……」
「うん」

「……さっき、スーパー入ってたらさ、仁がなんかすごく目立つから、絶対これからもモテるだろうなって思ってね。それで、オレ、そんなにカッコよくなくてもいいんだけどなあとか。別にカッコイイから好きなわけじゃないし、もうちょっと普通でもいいかなあって、ちょっと思ってたの」
「――んん??」

 不思議そうに首を傾げた仁の顔がおかしくて、クスクス笑ってしまう。

「さっきね、オレ、そう思ってたんだよ――そしたら、その時、仁がオレに、ダサいカッコをすすめてきたんだよね」

 オレがクスクス笑うと。仁も、苦笑い。

「……同じようなことを、思ってたってことかな」
「うん……だから、なんか、おかしくなって――でもなんか、ちょっと、恥ずかしいよね……」
「何が?」

 仁の手が、頬に触れて、上向かせられる。

「――お互い……相手がモテそうだから、もうちょっと……とか。なんか。大好きすぎ、みたいでさ」

 苦笑しながらそう言ったオレの頬に、仁は触れてくる。

「でもなぁ……」

 仁は少し首を傾げてから、オレの頬をぷにぷにつまみながら。

「……んなこと言っても、やっぱり、彰はモテると思うから……」
「ていうか、それ言うなら、仁だし」

 二人で言い終えた後。
 どちらからともなく、笑い出してしまった。

「あーなるほど…… 恥ずかしいって、そういうことか」
「……うん」

「バカップルみたいってこと?」
「そういうこと……」

 苦笑いの仁の言葉に、クスクス笑いながら頷く。
 頬の手が、顎に掛かって――ふと仁を見上げると。優しい瞳が近づいてきて、ゆっくりと、唇が触れた。
 柔らかく重なって、幾度かついばむようなキスを、されて。

 頬に触れられたのに誘われるように、閉じていた瞳を開けると。
 クスッと仁が笑う。

「彰、オレがモテるの、やなの?」
「……嬉しくは、ないかな……」

 ちょっと遠慮した言い方で伝えると。


「――まあ、オレは、すごく嫌だけどね」

 べ、と舌を出して言った仁。
 え。そんなに嫌なの?と見つめてしまう。

「なんなら、オレの彰、一秒も、そんな意味で見るな、と思っているかも……」

 おお……? 
 結構、激しいな……??

 ちょっと驚いて、仁を見つめると。


「あ、オレの方は大丈夫だよ? オレが彰以外興味がないの、もう、オレ自身が嫌ってくらい、体感してきてるから」
「――」

「忘れてようとしても、他の人と居ようと思っても全然ダメでさ」
「――仁って……不思議だよね」

「……不思議って言われた」

 クスクス笑う仁に、「オレの何がそんな、て思っちゃうんだけど」と、首を傾げると。

「――オレ、彰に見つめられるだけで、なんかふわふわするから。笑ってくれると、多分、ちょっとは浮いてると思う」

 笑いながらそんな風に言う仁に、何それ、と笑ってしまうと、仁はオレを、むぎゅっと抱きしめた。




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