120 / 130
◆Stay with me◆本編「大学生編」
「いつもいつも」※
しおりを挟むマンションの部屋の鍵を仁が開けて、ドアを開けてくれた。
オレを先に入れて、仁が後から入ってくる。
オレは先に靴を脱いで玄関に上がりながら電気をつけて、仁を振り返った。
「……仁」
「ん? ちょっと待って、靴脱ぐ」
「うん」
素直に頷いて待っていると。
仁は靴を脱いで揃えてから、振り向いて、ふ、と笑った。
「ん、何? 彰」
真正面に向かい合って、少し下にあるオレの顔を見つめてくる。
「……仁」
仁の首に、腕を回す。驚いた顔をした仁を、ぐい、と自分の方に引き寄せる。少しバランスを崩した仁の手が、オレの後ろの壁についた。
首に抱き付いているオレを、仁が壁に囲っているような形。
「……どうしたの?」
仁の瞳に、熱が灯る。
「……誘ってんの?」
至近距離で囁かれて、オレは仁をまっすぐ見つめた。
「仁。……大好きだよ」
「――――」
オレが言った瞬間、仁の唇に、唇を塞がれる。壁に背を押し付けられて、全く動けない状態で、上向かされて、深く重なる。
「……ん……っ」
最初は抑えようとしていたのに、どうしようもなくて声が漏れる位、キスが激しい。
「……っふ……ん、ぁ……」
誘ったのは自分だけど。
……きつすぎて、息が、うまくできない。
オレはどうしてか少し震える指を、仁の頬に触れさせて、撫でた。
「……仁……」
「ん……何……?」
仁が少しだけキスを外すと、は、と熱い息が漏れて、それに惹かれるように近づきながら。
「……仁は? 好き……?」
オレがそう聞くと、仁は、オレの頬に触れて。好きに決まってる、と呟く。
想いが、溢れ出るみたいな、言い方で。
「……彰……」
仁の手に両頬を挟まれて、まっすぐに見つめられて、オレはただ、その瞳を見つめ返す。
仁は、少し眉を寄せて、目を細めた。
「……オレを煽ると……ほんとにヤバいけど……」
「うん……」
「分かってンの?」
「……うん」
分かってる。
心の中でそう思いながら、仁の首にもう一度ちゃんと腕を回して引き寄せて、仁の唇に自分の唇を重ねさせた。
「……あきら……」
唇の間で、熱っぽく呼ばれて。
オレの背中に回った仁の手に、苦しい位抱き寄せられて、唇が深く重なる。
「……っん……」
仁の舌が絡んで、強く擦れる感触に、体の奥が、ゾクッと震える。
「……ン――――ン、ふ……」
息もうまくできないような、熱いキスに、クラクラして。
「……彰……」
あっという間に、「弟」じゃなくなって、「男」になる仁に、飲み込まれるみたい。
熱っぽく名を呼ばれて、頬に触れる手が熱くて。
「すっげぇ好き……」
少しだけ離れた唇の間で、仁が囁く。
心の一番奥に、届くような気がして。
オレは、急に泣きそうになって、目を細めて、仁を見つめ返した。
「――――仁……」
どうして、こんな風に好きになったんだろうって。
冷静な時には、たまに思うことが、まだ、どうしても、あるんだけど。
「……じん……」
オレが、ぎゅ、と仁に抱き付くと。
一気に体温が上がったみたいに、熱くなった仁が、不意にオレを抱き上げた。
仁の部屋のベッドにオレの背を沈めさせて、その上に跨ぐように、押し乗ってくる。
「……あー、もう、無理――――」
服を脱ぐ時間すら惜しいみたいに、少し乱暴にシャツを脱ぎ捨てて。
そのまま、覆いかぶさるみたいに、口づけてくる。
どうして、とかは思うけど。
もう、かけらも否定できない位。
仁が好きで。
本当にいつもいつも、愛しいって、思う。
70
お気に入りに追加
673
あなたにおすすめの小説
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
「短冊に秘めた願い事」
悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。
落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。
……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。
残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。
なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。
あれ? デート中じゃないの?
高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡
本編は4ページで完結。
その後、おまけの番外編があります♡
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる