102 / 128
◆Stay with me◆本編「大学生編」
「5分間」1/2
しおりを挟む「仁……?」
「うん」
「……もう分かってると思うけど……オレも、お前の事、好きなんだけど……でも……」
「――――」
「……男だし、兄弟だし……仁が、オレとでいいって思えなくて」
「――――」
「……オレとずっと居てって……オレ、やっぱりどうしても言えない」
仁の顔が見れなくて。
俯いて、そう言った。
やっぱり、オレには、これ以外、言えない。
無理、なんだと思って。
そう、言った。
少し黙ってた仁が、不意に「彰」と呼ぶから、自然と顔を見つめたら、何だか少し嬉しそうに見えて。
……何でそんな顔してんだろ。
眉が寄ってしまう。
「彰……も一回言って?」
「……え? だから……オレとじゃ――――」
「は? バカなの? そっちじゃねーし」
仁は、呆れたように言って。
立ち上がると、オレの隣に座った。
「オレの事、どう思ってるか、の方」
「……仁の事、好き……だけ」
「だけどは要らない」
「……仁の事、好き、……だけ」
「いらねえーっつの……ちゃんと、最後切って」
何度も遮られて、下を向いて口を閉ざしていると。
俯いた頬に手を伸ばして、ちょんちょんと指で触れてきた。
「言って、ちゃんと」
そう言った。
「仁の事、好き……」
だけど、を付けずに言ったら。
瞬間、抱き締められてしまった。
「――――っ?……」
「初めて、言った」
何なんだ、と、藻掻いて離れようとしていたら。
嬉しそうに笑う仁に、どき、と胸が弾んで、固まってしまう。
「……っもう、知ってた、だろ?……」
「何となく、そうかなって思ってんのと、言われるのとじゃ、全然ちがう」
「っでも……好きでも、オレ……っ……」
「――――」
「お前とずっと、とか……言えないって言ってる……」
「……んー……?……」
仁が眉を寄せながら、仕方なさそうに、オレを離す。
また隣の席に、完全にオレの方を向いて座ると、ものすごく近い真正面からじっと見つめてくる。
「つか、それは、何で?」
「……男同士だし……兄弟だし」
「……じゃあ、やっぱり無理って結論なの?」
「……」
「ほら。……そこでまた黙るし」
仁が、はー、とため息をついて、頭を掻く。
「……ほんとに無理なら、そこで頷けば、いいんだよ?」
「――――」
「……無理って結論をオレに言えないなら、もう、――――諦めたら?」
……諦める?
「……ほんと、何でなのかなあ……」
「……」
「オレにとって良いのかは、オレが決めるから。彰は、考えないでよ」
「……」
……そんな事言ったって。
……考えないでいられるわけ、ないじゃんか。
「……何で彰、そんな不満そうな、顔すんの?」
「……」
「……分かったよ、もう。オレを好きだけど一緒には居られない。それが結論って事でいいの? なら今、そう言って」
「……」
「今、言わないなら、もう諦めて」
仁が少し顔を近づけて、じっと見つめてくる。
視線を逸らそうとしてるのに、無理無理合わせられる。
「……さっきから、諦めるって……何を……」
分からなくて、そう言ったら。
仁が、ふー、とため息をついた。
「オレと離れる事、諦めろよって、言ってんの」
「……」
仁と、離れる事を、諦める?
「意味分かる?」
「――――」
「オレと兄弟に戻るって、今口に出せないなら。諦めてもらうから」
「……」
「……今の彰が、オレとずっと居たいって、言えるとは、思えない」
「……」
「……すげえめんどくさいもん。――――オレが、兄弟でも男でも、良いって言ってんのに。彰が好きだから一緒に居たいって言ってんのにさ。そっちは考えてくれないで、勝手に、オレが彰といちゃダメとか。……だからもう、逆で、考えてよ」
仁は、何かを吹っ切ったみたいに。
ポンポン、告げてくる。
「言えるなら、今言って。オレと兄弟に戻りたいって。オレともう離れたいって。五分だけ、待ってあげるから」
「……」
「五分言えなかったら。 彰は、オレと離れる事を諦めろよ」
「……」
「……五分経ったら……オレ、彰にキスするからね」
その言葉に、俯いた視線を、あげる。
仁は、ちらっと時計を見てから、まっすぐオレを見つめた。
「っ……なんで……そんな、急に――――強気なんだよ」
そう言ったら。
仁は。当たり前じゃん、と、ふ、と笑った。
当たり前って、何。
そう思って、眉を寄せたら。
「彰が、オレを好きって言ったから」
「……」
「オレの期待とか、多分そうかもとかじゃなくて。ちゃんと、好きって言ったから。今決めるしかないと思うから」
「……でも、オレ、好きとは言ったけど……好きだけど……お前と居て良いって思えないって、言ったんだし……」
なんか、よく分からなくなってくる。
好きだから一緒に居たい、とか言った訳じゃない。
オレは、仁と、ずっと居ていいなんて、思えなくて。
好きだけど、居られない、もう結局、どうなって、どう考えたって、そうとしか、思えないって――――もうそれを伝えるしかないと思って、言ったんだし。
「……オレとじゃ、できない事も、いっぱいあるし」
「何、できない事って」
「……関係だって、隠さなきゃだし――――男同士だってだけでもそうなのに、兄弟とか言ったら、バレたら……絶対、大変だし」
「いいよ。人と付き合ってることを公表したいなんてもともと思ってないしさ。まあ、オレは別に隠さなくてもいいけど、彰が嫌なら、ちゃんと隠すし。そんなことはどうでもいい」
「――――結婚とか……出来ないし」
「……オレらですりゃいいじゃん。いつか」
「家庭とか……持てないし」
「……何言ってんの? 家庭ってなに? ……子供って事? そんな事言ったら、彰だってそうじゃん」
「オレは……」
「……なに?」
「オレは……いいけど――――仁が……」
「何で彰は良いのに、オレはダメなの。ていうか、オレ、子供欲しいとか、言ったっけ? 彰を好きになってから、子供欲しいとか思った事もないし、絶対言ってないけど」
「言ってないけど……でも、オレとじゃ仁が……」
「つーか……もう……オレの事ばっか、言うなよ」
仁が少し声のトーンを落として、深く息を付いた。
片手を額に当てて、目を隠してしまう。
「思ってた以上に……彰が考えてる事って、オレの事ばっか。しかも、だめな方ばっか……はー。これじゃ、無理だよな……」
深い深い仁のため息に言葉を奪われて、黙ったオレに、仁は落ち着いた声で、ゆっくり、言った。
「彰がちゃんと結婚したい、子供欲しい、付き合ってることを周りに言いたいし、隠して生きてくなんて嫌だって言うなら、オレは諦める」
「――――」
「……でも、オレのことを勝手に言ってるんだったら、オレは諦めない」
「――――」
「オレのことはオレが決めるから。オレは、彰と居たい」
そこまで言って、ふ、と仁が時計に目をやった。
「あと、一分だよ。……すぐ言える言葉でしょ……兄弟に戻りたい、オレと離れたいって。それを今言うなら、オレは諦めるから」
「……」
変に、ものすごく、ドキドキする。
55
お気に入りに追加
654
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
上司と雨宿りしたら、蕩けるほど溺愛されました
藍沢真啓/庚あき
BL
恋人から仕事の残業があるとドタキャンをされた槻宮柚希は、帰宅途中、残業中である筈の恋人が、自分とは違う男性と一緒にラブホテルに入っていくのを目撃してしまう。
愛ではなかったものの好意があった恋人からの裏切りに、強がって別れのメッセージを送ったら、なぜか現れたのは会社の上司でもある嵯峨零一。
すったもんだの末、降り出した雨が勢いを増し、雨宿りの為に入ったのは、恋人が他の男とくぐったラブホテル!?
上司はノンケの筈だし、大丈夫…だよね?
ヤンデレ執着心強い上司×失恋したばかりの部下
甘イチャラブコメです。
上司と雨宿りしたら恋人になりました、のBLバージョンとなりますが、キャラクターの名前、性格、展開等が違います。
そちらも楽しんでいただければ幸いでございます。
また、Fujossyさんのコンテストの参加作品です。
「誕生日前日に世界が始まる」
悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です)
凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^
ほっこり読んでいただけたら♡
幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡
→書きたくなって番外編に少し続けました。
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
その部屋に残るのは、甘い香りだけ。
ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。
同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。
仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。
一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。
Tally marks
あこ
BL
五回目の浮気を目撃したら別れる。
カイトが巽に宣言をしたその五回目が、とうとうやってきた。
「関心が無くなりました。別れます。さよなら」
✔︎ 攻めは体格良くて男前(コワモテ気味)の自己中浮気野郎。
✔︎ 受けはのんびりした話し方の美人も裸足で逃げる(かもしれない)長身美人。
✔︎ 本編中は『大学生×高校生』です。
✔︎ 受けのお姉ちゃんは超イケメンで強い(物理)、そして姉と婚約している彼氏は爽やか好青年。
✔︎ 『彼者誰時に溺れる』とリンクしています(あちらを読んでいなくても全く問題はありません)
🔺ATTENTION🔺
このお話は『浮気野郎を後悔させまくってボコボコにする予定』で書き始めたにも関わらず『どうしてか元サヤ』になってしまった連載です。
そして浮気野郎は元サヤ後、受け溺愛ヘタレ野郎に進化します。
そこだけ本当、ご留意ください。
また、タグにはない設定もあります。ごめんなさい。(10個しかタグが作れない…せめてあと2個作らせて欲しい)
➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
➡︎ 『番外編:本編完結後』に区分されている小説については、完結後設定の番外編が小説の『更新順』に入っています。『時系列順』になっていません。
➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。
個人サイトでの連載開始は2016年7月です。
これを加筆修正しながら更新していきます。
ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。
この愛のすべて
高嗣水清太
BL
「妊娠しています」
そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。
俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。
※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。
両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる