【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

悠里

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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「幸せに?」

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「……だって……何を話すんだろう……」

 言ったきり、何も言葉が出てこなくて、黙っていると。
 寛人は、またため息をついた。

「……ここまでの経緯、確認するぞ」
「……うん」

「……やっとの事で、告白しあうかもって日に、お前が男と寝てたのがばれて、仁がキレて、お前に――――キスされたのと? あと、イかされたんだっけ? ……それだけ?」
「……うん」

 ていうか、全然それだけ、じゃないんだけど。
 寛人は、それだけって言うんだよな……。

 ……こないだやっとの事で、この話をした時も、それだけ? て言われて、驚いていたら、別に無理矢理最後までされた訳じゃねえんだろとか言って……。

 オレにとっては、全然「それだけ」じゃないんだけど……。

「……で、仁は、自分がキれたことと、あと彰がそんなことをしてたのがショック、で? もう、弟になるから忘れてとか言ったんだろ?」
「……うん」

「そのまま、もう、結構な日数、顔も合わせてない。……つか、何日?」
「……十日位……?かな」

 寛人は、そこでまた、大きなため息をついた。

「――――は。ほんとお前らって……」

 はー、とため息の寛人に、ごめん、と俯く。

「……オレ、こないだ、仁と少し話したぞ……お前に聞いて、少し経ってから電話してみたんだけど」
「――――なんか兄弟で世話になってごめん……」

 そう言ったら、寛人は、ぷ、と笑った。

「は。今更。――――で、電話したんだけど……」
「……うん」

「……まだ、全然整理できないから、彰とは話せないって言ってた。あいつ、今までで一番何にもしゃべんねえから、よく分かんなかったけど……」

「――――ん」

 寛人は、俯いてるオレを、のぞき込んだ。

「なあ、今朝会っちゃったって、何でだ? とことん顔合わせないように避けてたんだろ?」
「仁が出てってから、部屋を出て玄関に居たら――――スマホ忘れた仁が、帰ってきちゃったんだよ」

 そう言ったら、寛人が、マジマジと、オレを見つめた。

「……何で、仁が出てった後に、玄関なんかに居たんだ?」

 ……やっぱりそこ、突っ込まれるよね……。
 普通、玄関になんて居ないもんね……。

 もう隠せないので正直に言う。

「入学式だったのに、行ってらっしゃいも言えなくて。何となく玄関に出たら……なんかもう、一緒に暮らさない方がいいのかなあとか思えてきて……ぼーと考えてたら帰ってきちゃって……」

 段々俯いていくと、またまた、大きなため息が聞こえる。
 ……なんか、寛人に一生分のため息を、つかせてる気がする。
 
「お前さー」
「……?」

「仁が出てった玄関に見送りに出る位なら、ちゃんと仁が居る時に行けよ」
「……だって顔、見たくないって……」

「あーもう……ほんっと お前……」

 はああああああ。
 がっくりと、うなだれてしまった寛人。

 ……ああ、なんか……ほんとごめん……。
 密かに落ち込んでいると。

「お前の事を好きだからだろ? ……好き過ぎるから、許せないんじゃんか」
「………」

「ほんとに、顔見たくないと思ってんの?」
「――――うん。顔見たくないんだろうなって……」

「純粋に、お前の顔がもう二度と見たくないと思ってると、ほんっとに、思ってんのか?」
「それは……分かんないけど……」

「分かるだろ、顔見たくないって。ほんとは見たいけど、今は、辛いから見たくないだけで……」

 寛人が、やれやれ、と顔をしかめる。

「……何で分かんねえのかな。……お前の顔見たら、もう、避けてんのが我慢できなくなったんだろ」

 そんな風に言われて。
 朝の、仁を想う。

 ……自分が泣いていたから、あまり顔は、見れなかったけど。
 ――――声が。苦しそうだった。

「――――寛人……」
「うん?」

「……仁てさ……オレとで、幸せになれると、思う?」
「――――」

「……オレさ……オレとじゃない方が、仁は、幸せになれるんじゃないかなって、ずっと思ってて。もうずっと、それが消えなくて」

「へえ。そんなとこまで、一応考えてるんだな」
「一応って……」

 そう突っ込むと。
 寛人は、ぷ、と笑った。

 

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