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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「時が経てば」

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 翌朝。
 起きて、とりあえず、コーヒーを淹れた。
 どうしようと思ったけれど、仁の分も、淹れた。

 昨日で春期講習が終わって、少しの間だけ休み。
 四月に入ったら再開する。

 ――――春休みだし、本当なら遊びに行ってもいいんだけど。もしかしたら、出てしまった方が、少しは気も晴れるのかも、しれないけど……。
 かけらもそんな気分じゃない。……本でも読んで過ごそうと思った。

 顔を合わせたくないって言ってたから、部屋に居た方が良いんだよなと思って。シチューをあっためて食べたら、すぐに食器を片付けた。コーヒーを持って、部屋に戻る。

 九時を過ぎたあたりで、仁が部屋を出る音がした。
 しばらく動く音がしてて。

 鍵を掛けて、出て行く音。

「――――」

 ……出かけたのかな……。
 部屋のドアを開けて。静かな家を歩く。

 玄関を見ると、仁の靴がない。
 どこ行ったのかな……。
 バイト……かな。ならこのまま夕方までは帰って来ないのかな。

 飲み終えたマグカップを持って、流しに行くと。
 淹れておいた仁の分のコーヒーは、そのまま、残ってた。
 
 コーヒー、いい匂い。
 彰の淹れるコーヒーが一番好き。

 仁が、優しくいつも言ってくれた言葉が、ふ、とよみがえった。
 胸の奥が、痛い。
 喉の奥が、熱くなって。

 ――――やば……。
 
 涙が、浮かんで、驚いてる内に、あっという間に、頬に流れ落ちて、呆然。

 ……何で、こんなに涙、溢れるかな……
 子供じゃあるまいし……。

 どうするのが、良いんだろう。
 涙って、どうすれば、止まるんだっけ……。

 こんな風に一人で、涙が溢れて止まらないとか。 
 いつ以来だっけ……。

 とりあえず手の甲で拭うけれど。
 ……涙って、尽きないのかな。

「――――」

 仁は今、何を考えてるんだろ。
 どんな気持ちなんだろ。

 ――――嫌だよな。

 オレが……他の奴と平気で寝て。
 平気で仁の前に居たなんて。

 ……そりゃ、オレの顔。見たくないよな……。

 ……はー。
 よかった。春期講習、昨日、ちょうど終わってて。

 オレ、とても、普通に授業なんてできなかった。

 しばらく経つと、涙が止まって。
 ふと息を吐いた。

 仁のために置いておいたコーヒーを捨てて、洗った。

 自分がこんなに泣くって衝撃だけど。

 ……今だけだ、きっと。
 感情が落ち着けば、泣かなくなるはず。

 それまでは…… しょうがないよね。 
 ……だってオレ――――。

 ずっと仁の事――――引きずってきてて。
 一緒に居たらますます、好きに、なって――――。

 ……はー………ほんと……バカ……オレ。 


 ……仁。
 ……ごめん。


 オレ、ほんとに、お前の事――――好きだった、のに。


 結局一度もちゃんと、好きとは言えずに。
 こんな風に、傷つけて……。
 

「あ。……やば……」

 好きだったとか思った瞬間、また涙が浮かんできた。

「……はー……もー……」

 ……息が、ちゃんと出来ない。
 小さく、しゃくりあげるみたいになってて。

 ――――子供か。オレ。

 吐くため息まで、変に震える。

 ダメだこれ。
 も、オレ、しばらくダメだな……。


 仁に会わないでいられる内に、どうにかしよう。
 ――――時が経てば、落ち着くだろうし。


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