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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「仁との電話」* 寛人side

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 バイトの休憩中。スマホをチェックしたら、仁から、電話が入ってた。

 また何か、あったかな――――。
 て、なんか、ここ数日、彰よりも仁との方が喋ってねえか?

 苦笑い。
 仁に向けて、電話を掛ける。

『片桐さん? こんばんわ』
「ああ。 今バイトの休憩中。十五分位なら話、聞ける。どうした?」

『すみません。――――オレ……』
「ん?」

『……――――彰に好きだって……言う……と思うので…… 一応報告です』
「ふうん……? まあいいんじゃね? つか、急にどうしたの。 墓場まで持ってくんじゃなかったのか?」

『……墓場とか言いましたっけ?』

 苦笑いの仁の声。

『オレの気持ちを知った上で、もいっかい考えてもらった方がいいのかなって…… オレが勘違いって言ってごまかしてたら…… 間違っても、好きにはなってもらえないって……そんな気がしてきて』
「――――まあ、オレ、それを最初から言ってるけどな」
『……今日、彰に――――昔のは、勘違いなんだよね?て、聞かれて』
「……へえ?」

『……勘違いで今は何とも思ってないって……もう嘘も、つけなくて……』
「――――」

『……ずっと会わないまま考えて、決めてきた色んな事が―――― 彰の顔見て、過ごしてたら、段々出来なくなってきて……彰に好きになってもらえなかったら、良い弟で一生過ごす覚悟もしてからこっちに来たのに―――― まだこっち来て一カ月も経ってないのに、無理な気がしてきて」

「……まあ、そうだろうな。全部理屈でなんか出来ねえだろ。考えてた二年間は、彰に関わらねえで決めたんだろ? 実際、好きな奴が、目の前にいんのに……平気な振りも限界なんじゃねえの」

『……なんかオレ、甘かったかも……』
「――――つーか。そんだけ、好きなんだろ」

 仁が、黙って。

『……それに、オレ――――二年前も、彰に言ったんだけど』
「ん?」

『……オレの事、好きなんじゃないのって…… 今も……たまに、そう思いそうになる時が、あって――――』
「……ふうん?」

『……でもあの時は、彰、絶対無理って言いだして――――そっから、完全にシャットアウトされたから……」

「――――」

 多分、オレにも何も言わなくなった時だな。
 どうつついても、何も、話さなくなった。考える事、拒否してたし。

『あの時はきっと……オレが、弟だから、無理だったんだと思うんですけど……』
「……ん、それで? 弟だから無理ってとこは、今も変わってないと思うんだけど。どーやって、そこ、超えるつもりだ?」

『――――それはこれから考える。でも……オレの好きを、勘違いにしてたらダメだと、今は思ってて。だからと言って、あの時みたいに無理矢理迫ったりは、しないけど……』

「――――あのさぁ、仁?」
『なんですか?』

「……お前、モテるだろ」
『まあ。モテますね……』

 即答に、笑ってしまう。

「少しは否定しろよ」
『別に嬉しい事でもないし。……それがなんですか?』

「……お前ならさ、他の女の子なら、つーか、他の男でも、もっと簡単だと思うんだけど。なんで、彰なの? この世で一番難しい相手じゃねえ? 本人の性格的にも、弟とってさ……」
『……この世で一番難しい……かー……まあ……そうかもしれないですね……』

 仁は、苦笑しながらそう言って。

『……全部が好きって、思うから……他がどうでもいい位』
「――――」

『……なんかもう自分でも……どうにもできないんで……』
「――――は。 分かったよ」

 オレは、それを、全部見てきた、気がする。

 小学校、中学校、高校―――― で、今も。
 全部。こいつが彰を好きなとこ。……ずっと、見てきてしまった。

「……何でわざわざオレに言った訳?」

『こないだオレが、片桐さんに言った事と……大分変ってきてるし。伝えておこうと思って。――――だって……悔しいけど……彰、すげえ困ったらあんたんとこ、行くだろ。だから、予備情報って感じ』

「はは。何だ、それ」
『……困って弱ってたら、オレのせいだから―――― 助けてあげて』

「――――了解」

 たぶん彰も――――お前の事が好きなんだろうけどな……。
 それを認められるかどうかは――――。

 ―――― んー。 
 分かんねえな。

 どうなりゃあいつは、認めるんだ……?
 認めないで一生行く気なのかもしれないし。 分かんねえな。

「まあ…… 頑張れよ」
『――――』

「……聞こえてるか?」

『――――頑張れって、言ってくれるんですね』

 クスクス笑ってる仁。

「――――お前が、彰をすげえ好きなのは……昔から知ってるから」
『――――』

「頑張れ、としか、いえねーかな……」
『……ありがとうございます』

「ああ。――――あと何かある? そろそろ行かねえと」
『大丈夫です。……片桐さん』
「ん?」

『話せて落ち着きました』
「――――おう。 またな」

 電話を切る。

 とんでもないもん背負ってるから―――― 同じ年の奴よりは、秀でて大人っぽいんだろうけど。 ずいぶんちっちぇ頃から、悩みが大きすぎるし。

 でもやっぱり、心を自分で安定させるには、まだ色々経験足りなそうだな。

 ――――彰が、普段の通りしっかりしてれば、支えてやれるんだろうけど……。仁に関しては、彰の方が情けなくなるしな。すぐ弱るし。

 はー、とため息をついてから。
 スマホの時計を見て立ち上がる。


 近いうち、彰になんか一言、入れとくか――――。 



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