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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「父の来訪」

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 玄関を開けると、本当に父さんで。
 急な訪問に、本当に驚いたけれど、とりあえず中に入ってもらって、リビングに戻った。 

「父さん、とりあえず、紅茶のむ? 仁が淹れてくれたんだけど」
「ん。でもそれは彰のじゃないのか?」
「オレ、お酒飲んでるし、水でいいよ。とりあえず飲んで落ち着いて?」

 紅茶のカップを、テーブルに二つ置いた。

 仁が座って、その目の前に父さん、父さんの隣にオレは座った。

 オレがほんの少しだけ、母親に遠慮があるように、仁も少し、遠慮がある。
 家族として仲は良かったけれど、ほんの少しの遠慮はあって。その遠慮がまったくないのは、一番下の和己だけ。

「父さん、急にどうしたの? オレたち居なかったらどうするつもりだったの?」
「今朝、急にこっちに来る事になって、バタバタでな。他に連絡するところがたくさんあったから、二人に連絡してる暇がなかったんだよ。夜も遅くて来れないかもと思ったし。たまたま早く終わったけど、もし居なかったら今回は諦めるつもりだったし」

 諦めるって何だろ……??
 そう思った瞬間。

「諦めてどうする気だったの?」
 仁が、そう聞いてる。

「このまま駅に戻って、ビジネスホテルに泊まろうと思ってた」
「もー……先に連絡しなよー」

「ほんとに忙しかったんだよ」

 オレの言葉に、苦笑いしてる父さん。

「……じゃあ父さん泊ってくんだよね。布団出してくる。あ。前まで父さんが泊ってたとこに仁がいるから……どこに寝たい?」
「どこでもいいけど」
「仁の部屋はちょっと狭いかも…… オレの部屋か、ここか?」
「じゃあ彰と寝ようかな。久しぶりに」
「ん。分かった。あ。でも明日塾のバイトだから、早いけど大丈夫?」

「何時?」
「七時位に起きる」
「ああ、一緒に出てちょうどいいかも。明日も朝から会議だから」
「そうなんだ」

 父さんとオレの会話を、仁は、紅茶を飲みながら、黙って聞いてる。

 ほんとは―――― さっきの、仁とのやり取りが。
 ――――胸に引っかかりすぎてて。

 父さんと、普通の会話をしてるだけでも、正直辛いんだけど。

「あ。父さん、風呂入る?」

 仁が不意にそう言った。

「あぁ」
「湯舟入るなら、お湯入れてくるけど。オレさっきシャワーで済ませちゃったし」
「彰は? シャワーだけ?」
「うん。オレはシャワーでいいかな」

「じゃあ父さんもシャワーでいいよ」

 立ち上がりかけてた仁は、その言葉でまた座った。

「彰、先にシャワー浴びてきてもいいよ。紅茶飲んでるし」
「んー……じゃあそーする。 着替えてから布団しくね、すぐ出てくるから待ってて」
「ああ」

 言いながら、父さんから視線をずらし、仁を見る。
 ちょっと久しぶりの父だから。二人で平気かななんて、思ったりしつつ。

 ……まあ、平気かな。うん。

 ……ていうか、オレと仁、の方が、平気じゃない。

 そんなことを思いながら部屋に戻って、着替えを手に取る。

 よかった、父さん、来てくれて。
 ――――プリンなんて、食べれる気、しなかった。

 ………さっき……。
 仁、オレに―――― キス、しようとした……?

 ――――違う、かな?……

 なんか。
 キスしそうではあったけど、違うかもしれない。

 触れてないから、確実ではない。


 あの時、チャイムが鳴らなかったら。
 オレ達、どうなってたんだろう……。

 ヤキモチ……って、言ったよな。
 ――――仁……。

 でもそう言って、すごく、痛そうな……苦しそうな顔、してた。

 ……もう、どうしたら、いいんだか。
 なんか父さんも居るし、まともに思考が働かない。


 とりあえず。
 ―――― シャワー浴びて、すっきりしよ……。

 ため息をつきながら、バスルームに向かった。



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