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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「弟は無理」

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「なあなあ、彰」
「……ん?」

「もし弟に、もう一度告白されたら、どーすんの? 追い出すの?」
「だから、されないって」

「されたらどーすんのって話。全然、可能性ないの?」
「――――だから、無理だって」

 ……どんなに、考えたって。
 ――――無理、という言葉しか出てこない。

「なんかさ。もし、弟が彰の事まだ好きだったらさ」
「……」

「すげえ、かわいそうだよな」
「――――」

 ズキ、と痛くて。
 亮也を見つめ返した。

「だって―――― すげえ好きだったのに、弟だからとかいって逃げられて、二年間一人で耐えて…… で、勘違いだって誤魔化してでも、お前と居たくて、好きなのを隠してるんだって思ったらさ。すげえ可哀想」

 何だか心、抉られるような気がするけど――――。

 違う、その、「好きなら」という前提が、違うんだから、
 だから、可哀想なんて、当てはまらない。

 ――――亮也の言ってるのは、「好きなら」という話だ。

「――――だから……仁は、オレの事、好きなんかじゃ……」
「ほんとに、心からそう思ってるのか?」

「――――」

 うん。思ってる。
 だって、仁は、そういう風に、オレを見たりはしてない。と思う。

 むしろ―――― 昔を思い出してるのは、オレの方で。
 
 二年かけて思い出さないようにして、薄らいできた記憶を簡単に呼び起こされて、なんでだか、毎日苦しいのは、オレだけで。

 ――――仁に、キスされたり、抱き締められてた時の事。
 ふとした拍子に、思い出してしまうけど……。

 だけど。今のオレの前に居る仁は。
 あれを勘違いだったって言って謝って、無かった事にして、兄弟としていようとしてる、仁だから。

 そのくせに、たまに。
 ただの弟ならしないような……何とも言えない顔、したり。
 よく、分からない事で、怒ってたり……。

 オレも、大事にされ過ぎて、勘違いしそうになったりして。

 あんな風なキスしてたのに、
 全然平気な顔で、オレの前に居るなよ。とは、思ってしまうけど……。


「――――彰?」
「え?……あ。なんだっけ?」

「だから――……弟が、彰の事、ほんとに好きじゃないと思ってんの?」
「……うん。少なくとも、あの頃みたいな好きは……無いと思う」

「――――聞いてみたら?」
「え?」

「確認させてって。あの頃みたいな好きは、無いのかって」
「――――って……そんな、蒸し返すような事……」

 眉を寄せてそう、返すと。

「好きじゃないなら、蒸し返したって問題ねえよ。今は違うって言われるだけだろ。――――もし、今も好きなら……ごまかして先延ばししたって、どうせいつか爆発すると思うよ。そんなに好きな奴と一緒に居て、我慢なんかし続けられる訳ねえじゃん」
「――――」

「好きなら好きで、彰も――――今度こそちゃんと考えたら?」
「――――」

「……オレがもし弟ならさあ」
「――――」

「弟だっていう理由なんかで断られても、全然納得いかないと思うけど」
「――――つーか……それ以上に無理な理由ないって位……無理な理由だと思うんだけど……」

 そう言ったら、亮也は、はー、とため息をついて、大げさに首を振った。

「バカだなー彰。嫌いだって言われてんなら、諦めるしかないけど、弟だから無理なんて言われて、諦められるれ訳ないじゃん。自分はとっくに兄弟乗り越えて、好きだって言ってんのに」
「――――」

「男が無理だ、嫌いだ、なら諦めるけど……」
「――――」

「好きだけど弟だから無理なんて断られても、それこそ、無理。しかも血繋がってねえなら、なおさら」
「――――亮也……」
「うん?」

「……ほんとお前の言葉って。 たまに、痛すぎて無理……」

 言ったら、ぷ、と笑われる。

「図星だから痛いの?」
「……図星っていうか。考えた事、無かった事、今言われた」

「いや、だって――――オレなら、そう思うけどって事ね。振られて諦めなきゃって時に、そんな理由で諦めつくのかなーって」

「……でもオレ、そんな事も言ってないよ。 無理って言っただけで。好きだけど弟だから無理なんて、言ってないし」

「――――だって、お前、キスさせてたんだろ。好かれてんのかなって思うと思うんだけど」

 ……また、そこか。

 結局、キスを振りほどけなかった理由に、行きつくのか。
 そこをはっきりせずに、オレが逃げたのが、そもそもいけなかったんだと、またしても突きつけられたみたいだ。





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