60 / 130
◆Stay with me◆本編「大学生編」
「今更」
しおりを挟む今更、昔の仁に、心の中、乱されて。
でも今、目の前に居る仁は、友達みたいな弟でしかなくて。
ものすごく大事だっていう視線だけ、向けられる。
オレの心配ばかりして、オレと一緒に、居ようとばかり、して。
オレがどう思うかとか、いつも聞いてきて。
――――そのせいで、自分が仁をどう思うか……。
毎回、自分の気持ちを、確認させられて。
事故みたいな接触で、昔の事を、体で思い出して。
気持ちでも、体でも、仁の事ばかり、考えてる気がする。
――――でも。
目の前に居る、普通の弟の顔した、仁に。
……今、自分が思う事を、向けていい訳がなくて。
全部、宙に浮いたみたいなとこで、想いが冷えていく。
「……あ、そうだ。寛人」
「ん?」
「……亮也にさ」
「――――亮也?」
「……セフレの相手。亮也に、やめようって話しにいったんだ、昨日」
「ああ、そいつか……初耳だな」
苦笑いする寛人に、ごめん、と伝えてから。
「……そしたら ちゃんと、恋人になろう、て言われて」
「ん。で?」
「……待つって言われて、もう分かんなくなって、保留中……」
「――――そうか」
「絶対無理って断れない位は好きだし、すごく良い奴なんだけど……」
そう言いながら、酒を口にする。
寛人は、考え深げにオレを見ていたけれど。
少し間を置いてから、声を小さくして聞いてきた。
「……彰は男を恋人にって、可能性ありなのか?」
「なんか…… オレ、別にありなのかも……よく、分かんないんだけど……」
「……絶対、無理じゃねえの?」
「……そもそも、完全に無理だったら、あいつとそんな関係になってないし……だけど……好きだけど、やっぱり恋とかじゃないから。亮也も違うと思うんだけど……だからよく分かんなくて」
「なあ……こないだも、聞いたけど。仁は、弟だから、ダメだったのか?」
寛人の質問に、ふ、と顔を上げて。
その言葉を、考える。
―――― 酔ってて、いつもより素直な心に、何だか、痛い質問。
「……つか、無理。家族だし、親も弟も居るし……おかしくなっちゃった仁の言う事、本気にして……受け入れるなんて、出来る訳なかったし。今考えたって、無理」
「親も弟もいなかったら? ……仁がおかしくなったんじゃなくて、あいつが本気だったら? ……それは、考えた?」
「……そんな前提、ありえないから、考えてない」
そう答えたら、寛人は、眉を顰めた。
「――――お前って……」
言うと、寛人は、ふーー、と息をついた。
「……オレって、なに?」
「――――一番大事なとこ、考えねーよな……」
「……考えてるけど」
そう言うと、寛人はまたしばらく無言。
「……彰はさー……」
黙っていた寛人が、ゆっくりした口調で、そう言った。
俯いてた顔を上げて、寛人を見つめると。
「……余計な事考えすぎなんだよ。いいとこでもあるんだけどさ」
寛人の言葉に、少し首を傾げると。
「……誰にも嫌な思いさせないようにとか、生きてく上では無理だと思えよ。一番に、自分の気持とか、一番大事な奴を考えたら?」
「――――」
寛人の言ってる事は、分かるんだけど……周り気にしないなんて、できないし。
一番、大事な、奴。
――――……一番、大事な奴……か。
いつも、いつも、ずっと、
頭にあるのは、一人、だけど。
意味もよく分からないし。
……これから分かってしまったとしても。
そんなの……ほんとに、今更、だ。
64
「StayWithMe」を読んでくださって、ありがとうございます。
よろしければ、お気に入り登録&応援感想(好き♡とかでも全然OKです♡)を
よろしくお願いします。
よろしければ、お気に入り登録&応援感想(好き♡とかでも全然OKです♡)を
よろしくお願いします。
お気に入りに追加
695
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
手紙
ドラマチカ
BL
忘れらない思い出。高校で知り合って親友になった益子と郡山。一年、二年と共に過ごし、いつの間にか郡山に恋心を抱いていた益子。カッコよく、優しい郡山と一緒にいればいるほど好きになっていく。きっと郡山も同じ気持ちなのだろうと感じながらも、告白をする勇気もなく日々が過ぎていく。
そうこうしているうちに三年になり、高校生活も終わりが見えてきた。ずっと一緒にいたいと思いながら気持ちを伝えることができない益子。そして、誰よりも益子を大切に想っている郡山。二人の想いは思い出とともに記憶の中に残り続けている……。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話
雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。
諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。
実は翔には諒平に隠している事実があり——。
諒平(20)攻め。大学生。
翔(20) 受け。大学生。
慶介(21)翔と同じサークルの友人。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

付き合って一年マンネリ化してたから振られたと思っていたがどうやら違うようなので猛烈に引き止めた話
雨宮里玖
BL
恋人の神尾が突然連絡を経って二週間。神尾のことが諦められない樋口は神尾との思い出のカフェに行く。そこで神尾と一緒にいた山本から「神尾はお前と別れたって言ってたぞ」と言われ——。
樋口(27)サラリーマン。
神尾裕二(27)サラリーマン。
佐上果穂(26)社長令嬢。会社幹部。
山本(27)樋口と神尾の大学時代の同級生。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる