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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「恋人?」

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「そろそろ行くね」

 今日の仁は、カフェのランチタイムに入るらしい。
 十時半頃、用意を終えてそう言ってきた。

「彰は友達にどこで会うの?」
「まだ決めてないから、電話して決めるけど……お昼どこかで食べるかも」
「夕飯は? 食べてくる?」

「んー…… あ、仁は何時まで?」
「十八時」

「今日結構長いんだね。頑張って」
「うん」

「昼から会って、夕飯の買い物とかして早めに帰ってくるから」
「じゃあまっすぐ帰ってくる」

 話しながら玄関に向かい、靴を履いた仁が立ちあがって振り返る。

「じゃね、彰。いってきます」
「いってらっしゃい」

 ……なんか、鮮やかだなーと、思う、笑顔。
 オレも笑顔で送り出して、鍵をかけた。

 ――――ふ、と息をつく。

 リビングに戻ると、スマホを持ってソファに腰かけた。
 亮也を呼び出す。

 昨日も家に帰ってから、亮也に電話をかけた。亮也がバイトの休憩中だったので、今日会えるという約束だけしていた。

 ――――とにかく、亮也と話をしないと。

『もしもし……』
「――――あ、亮也、おはよ」
『……ん、おはよー、彰』

「……今起きた?」
『昨日バイトの後飲みにいっちゃってさ。ごめん、すぐには、出れないかも……』

「んー……どうしたい? 合わせるよ」
『じゃあうちおいでよ』
「――――」

 家だと……そういう、事になるかな……と一瞬思ったけれど。
 ――――無理強いする奴ではないか。と思い直す。

「……分かった。いつ行けばいい?」
『もういつでもいいよ。――――あ、なんか昼買ってきてくれる?』
「うんいいよ。何がいい?」

『んー……サンドイッチとか。パンがいいなー』
「分かった。買ってく」
『じゃ後でな』
「うん」

 電話を切ると、準備した荷物を肩に引っ掛けて、家を出た。

 セフレをやめて、友達に――――戻りたい。

 ……ちゃんと、話せるかな。


 ―――― いや、話さないと。



◇ ◇ ◇ ◇


 途中のサンドイッチのお店で昼を買って、亮也のマンションにやって来た。
 中に入って、まだちょっと眠そうな亮也に笑ってしまう。
 
「また寝てたの?」
「うん、悪い……。顔洗ってくる」

「パン、今食べる?」
「んー……彰の昼といっしょに食べよかな」

「じゃコーヒーだけ飲む?」
「ありがと」

 一緒に買ってきていたコーヒーをテーブルに置く。
 椅子に座ってると、顔を洗ってすっきりした顔の亮也が戻ってきた。

 オレの目の前に座り、コーヒーを一口。

「おいしー…… あ、で? 話って何? 彰」
「――――うん」

 オレは、亮也をまっすぐ見つめた。

「――――あのさ、亮也……」
「……セフレやめようって?」

「え……」
「―――……やっぱそういう話?」

 亮也の言葉に少し黙って。それから、うんと頷いた。

「んー。それは、何で?」
「……セフレとか、やっぱり――――良くない、かなと思って」
「本命が出来た?」

 何かが掠めそうになるけれど――――。
 振り切るように、首を横に振った。

「……ずっと、こういうのどうなんだろって、思ってて……」

「……誰かと付き合うとかじゃないの?」
「違う」

「――――女の子のセフレは? どーしてんの?」
「……もうそっちも、やめる事にした」

「――――ふうん?」

 亮也が、じっとオレを見つめてくる。

「……彰の気持はさ、なるべく尊重したいんだけど――――」
「――――」

「……んー、じゃあさ」
「――――?」

 しばらく考えてた亮也が良い事を思い付いたとばかりに、笑顔になる。

「オレも他のセフレ切るからさ」
「……?」

「……オレと、ちゃんと付き合おうよ」
「え」

 びっくりして、固まるしかできない。
 そんな答えが返ってくるとは思わなかった。

「彰はセフレと遊ぶタイプじゃないなとは思ってたから。そういう事言い出すのは、分かる。でもオレ、彰と別れんのやだから……オレと、ちゃんと付き合ってよ」
「――――亮也……」

「オレ、それくらいは、彰の事好きだし」
「――――」

「彰だって、誰かと付き合うとかじゃないならさ。とりあえずお試しでもいいよ」
「――――」

「とりあえずさ、考えて? 今答え出さなくてもいいし」

 にっこり笑う亮也。
 予想外な答えに、なんだか、思考が停止中。
 
「セフレが嫌で、本命が居ないなら、ちゃんと付き合えば良いんでしょ?」

 ……そういう事、なんだっけ……?
 なんか、違うよな……。



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