45 / 130
◆Stay with me◆本編「大学生編」
「仁との話」* 寛人side 2/3
しおりを挟む「お前って、何でそんなに彰の事、好きなの?」
「……あんただって、好きだろ?」
「オレのはそういう好きじゃねえから。なんで、兄貴として好き、を飛び越えるんだよ?」
「……それは……分からない。――――でも、これは、もうどうしようもないんだと思う。ただずっと、そう感じるから」
――――どうしようもない、ね。
それが一番、どうにもできねえか……。
「でも――――オレ、もう絶対に彰には、言わない。あの時みたいに、無理矢理迫って、困らせたり、泣かせたりしない。あんな、悲しそうな顔、もう絶対にさせないって、決めてる」
「――――できんの、そんな事。んな近くで過ごしてて、辛くねえの」
「辛くても、そうする。 ……会えなかった時より、ずっとマシ」
「――――そうか」
なんとも言えない言葉に、頷くしか、ない。
「……弟として、彰を大事に過ごして――――一緒に暮らせる間に、彰から、そういう意味で好きになってもらえなかったら、今度こそ諦める。その後はもう、弟としてずっと過ごすって決めてる」
「――――お前、一回断られてるし……で、今回は、昔のことを完全に勘違いだったって宣言、してるんだろ?」
「あ、聞いてるんだ、それも」
「聞き出した。オレが、心配で」
「――――言ったよ。思い違いだった、勘違いだったって謝ったし、やり直したいって言った。……怖がらせるわけにいかないし……」
「……そんな状態で、お前がどんなに頑張っても、彰がお前をそんな意味で好きになるなんて、無いんじゃねえの? 自分をもう好きじゃない、あん時も勘違いだったって言ってる弟に、そんな意味で好きだなんて、彰が言うとは思えない」
「そうだけど――――それくらいの無理、越える位、好きって思ってくんないと……オレ達はどうにもなんない気がするから……。どんなにオレが迫ったって、オレの将来がどうとか、全部そっちに持ってくんだから」
「――――」
「……オレがそんな意味で好きじゃないって状態で、もしもオレを好きになってくれたら……それならきっと、オレの将来がとか……それを理由に逃げられたりは、しないと思うから……それくらいじゃないと、結局、むりだと思う」
「――――」
「だからいいんだ、このまま弟としてでもずっと、彰を一番に過ごす。オレが居ないと嫌だって、思ってくれたらいいけど――――まあ、すげえ厳しいと思うから…… 良い弟で一生過ごす覚悟もしてから、彰のとこに来たし」
「――――なんかオレ……すげえこと、聞いた気がするな……」
「あー……すみません」
仁が苦笑いしながら、オレを見つめてくる。
一度息をついて、それから、まっすぐに仁を見つめ返した。
「――――お前がそこまで考えて、そうするって決めてんなら……オレ、お前のしてること、納得できるわ」
そう言ったら、仁は、固まって、その後、ぽかん、と口を開いた。
「――――え?」
「何?」
「なに、って……だって……」
言葉にならない仁が、少し可愛く見える。
すげえ決意して、兄貴を好きとか言ってんのに、急にこんな、抜けた顔、するんだなと、自然と笑んでしまう。
「……納得、してくれるんですか?」
「――――だって、納得しない理由が見つからない。そこまで覚悟してんなら……お前を止める権利なんか、ねえし」
「……じゃあ、彰には」
「言わねえよ」
「――――」
仁は、ほっとしたような顔で、少しだけ笑った。
38
お気に入りに追加
673
あなたにおすすめの小説
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
その部屋に残るのは、甘い香りだけ。
ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。
同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。
仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。
一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
「短冊に秘めた願い事」
悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。
落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。
……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。
残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。
なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。
あれ? デート中じゃないの?
高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡
本編は4ページで完結。
その後、おまけの番外編があります♡
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる